鬼火と唄

本編



ハリー「駄目だ。しばらくあそこに立ち入ることは許可できん」

フレドリカ「お兄さま
ハリー「そんな目で見てやるな俺だって好き好んで言っているわけじゃない」
フレドリカ「ええ、分かっていますわ。お兄さま」
ファフ「なにかあったの?」

ファフの心配だけではなさそうだった。

ハリー「近頃巨大な結界がこの辺りの地域全体を囲んで制限を掛けられたんだ。その結界は並大抵では破壊出来ん上に触れると魔力の耐性が無い奴は逆に吸収されてしまう」
フレドリカ「結界が解除されるまでの間住民の皆さま方にも注意するようエコーさまやアルトレーデさまが援護を集め呼びかけている最中なのです」
ファフ「森に入っちゃだめって
ハリー「ルニーシャ森の近くにも結界が張られている」
ファフ「そんな

ファフ(シャフはその結界、分かる?)
シャフ(少なくとも一晩で出来る代物じゃねえな。術式も混合型で今も組み合わさり続けてる)
ファフ(じゃあ、やっぱりその結界が消えるまでは
シャフ(俺はともかく耐性のないお前の体が保たねえ。無茶すれば身体もろともバラバラになって養分行きだろうさ)

ゾッとする。

ハリー「それに奴らも近くでうろついてるらしいしな
ファフ「え?」
ハリー「とにかく!結界が破壊出来るまでの間は迂闊に動かないようにしてくれ」
ファフ「……はい

シャフ『あの大掛かりな兜を被った奴じゃねえのか』
ファフ(!ティミのこと?)
シャフ『因縁の仲っつってただろ。それに通り道とはいえルニーシャ森に向かった奴らが無関係とは限らねえ』
ファフ(たたまたまだったんじゃ
シャフ『偶然ハリーの野郎の近くにいたってのか?』
ファフ(まだ、分からないよ。本当に敵ならあの時ボクを人質にしてもいいはずだったから
シャフ『………ふん。聞く限り本気で潰しに掛かってるようでもないしな。何がしたいんだ?こいつら』

ファフ(ライバルってハリーさんは言ってたから、多分因縁の仲と言っても意味が違うのかもしれないね
シャフ『何故そう言い切れる?』
ファフ(ティミの話をする時、なんとなくだけどハリーさん目が生き生きとしてるように見えるから)
シャフ『訳分かんね』

呆れるシャフ。

ハリー「ところでルニーシャ森に何の用があったんだ?まさかまた村人の連中が
ファフ「あその、違います実はーーーー」

ユン「あ〜〜!おったおった、ファフちゃん聞いてやー!」

バサアッ

ハリー「な!?」
ファフ「ひゃ」
フレドリカ「あら?」

ばったりと会う。

ユン「あ」

ユン「あー。ぷちりょーしゅかの隊長さんやないか!どうもお世話になってます〜〜お花ちゃん今日もかわええなあ」
フレドリカ「ふふ。ごきげんようユン様。今日は窓からのご訪問ですわね。ファフ様とお知り合いだったのですか?」
ユン「せやねん、ファフちゃんとはこの間時計台近くの商店街で出くわして仲良うなったんやで」
ハリー「………………!」
フレドリカ「まあ、ファフ様の初任務の日でしょうか?お友達が増えて良かったですね、ファフ様」
ファフ「…………えっと……此処に来て大丈夫なの?」
ユン「何やもう忘れてしもうたん?こう見えて足の速さには自信あるって話したやろ」

ウインクして見せるユン。

ハリー「貴様ーーー!この期に及んでまだ懲りんのか!俺が何度も不法侵入を見逃すと思うなよ!?」
ユン「いや〜お取り込み中かんにんやで、次からはもっと静かに入るさかいそんなに怒らんといてや」
ハリー「いや侵入するなと言ってるんだ!窓から降りろ!!」
フレドリカ「乱暴は良くありませんわ、お兄さま」
ユン「お花ちゃん今日天気ええしこの後お茶でもどや?」
フレドリカ「あらお茶、ですか?私外のお店には疎いのですが
ユン「ええって、このユン様が案内したる!なんならファフちゃんも
ハリー「こんの盗賊小僧がぁぁぁ!ドリーを誑かすその根性ぶった斬ってやるからそこに直れ!」
ユン「はは!ほなまた後でな〜!」


シャフ『あいつ何しに来たんだ』
ファフ(さあ





ユン「はーなんとか巻いた。カムちゃんに頼んで時間稼いでくれて助かったわ」
シャフ「おい何で部屋を知ってんだ」

シャフ「で?ルニーシャ森に向かうのは保留になったと朝話したはずだが」
ユン「そうそれや!いや後回しになるのは構わへんのやけど一つ問題があってな」
シャフ「問題?」

ユン「――――俺も遠出出来へんのやけど!?」

ファフ(あそっか、ユン普段は船で移動してるんだっけ


ユン「話に聞いた結界のおかげでルニーシャ森どころかこの街から移動出来る範囲まで制限されるってどういうことやねん〜!」

シャフ「結界が無くなるまでの話だ。別に死にやしねえだろ」
ユン「無慈悲やな!?船の管理も金掛かるんやで、子分達の生活費もろとも稼がんと
シャフ「ハッ。いっそぷちりょーしゅかで労働したらいいじゃねーか。毎日ハリーの野郎に追いかけ回されるがな」

対話魔術で用件を話し終えていた

ユン「他人事みたいに言うけどシャフにも大打撃やからな」
シャフ「?」
ユン「情報も報酬あってこそなんや。そんな冷たい子にはあげへん」
シャフ「てめ、協力するっつったじゃねえか」
ユン「いくら協力関係でも情報が枯渇したら意味あらへんで。まあシャフは俺がいなくても問題無いみたいやし?ええんやないの」
シャフ「ぐ……

少し拗ねてるユン。

シャフ「…………別に問題無いって言ったのは、てめえがいなくても良いって意味で言ったんじゃねえ」
ファフ(!)

ユン「いや気い使わんでええって。力になれない俺の事は構わずシャフはぷちりょーしゅかの人達と仲良うしとき」
シャフ「〜〜〜〜〜っ!」

げしっ

ユン「いてっ!」
ファフ(意外に、二人共素直じゃないのかな

ユンの背中を蹴り上げそっぽを向くシャフだがその場を離席する様子はなかった。背中をさするユンをジト目で見ながら話を続ける。

ファフ(シャフの記憶の手掛かりが掴めそうなのにこれからどうしよう)

シャフ「おら、とっとと依頼内容教えろ」
ファフ『え?』
シャフ「こいつのことだ。依頼の一つや二つ持ってきてんだろ」
ユン「お、手伝ってくれるん?」
シャフ「そのつもりで此処に来たんじゃねえのかったく」

はにかむユンの様子で疑惑から確信に変わり小さくため息をつく。

シャフ「何にせよ結界が無くならない限りルニーシャ森には近寄れない。俺らも軍人である以上不審な行動は控える必要がある分原因と解除法を探りながら他の依頼をこなすのが無難か」
ユン「せやな。他にも方法あるかもしれへんしルニーシャ森はしばらくおあずけや」
シャフ「新しい情報が入り次第俺に伝えろ。報酬は

ユン「ほな、お言葉に甘えて手伝ってもらうで」







――――――――――

シャフ「……で。何で俺が猫探しなんざしなきゃなんねえんだ」

ユン「舐めたらあかんで?このトラ猫ちゃんは何度も脱走経験のあるベテラン猫や」
シャフ「聞いてんのはそうじゃねえよ!!」
ファフ(トラ猫

シャフ「くそこんな事ならバカム野郎が持ってきた依頼でも押し付けるんだった
ユン「バカムってまさかカムちゃんの事か?お口が悪い子はお仕置きされるで〜」
シャフ「はん、知るかよ」
ユン「子どもの頃に会った時はまだ態度もマシな方だったんやけどなあ今じゃこんなにも不良に育ってあかん涙出て来た」
シャフ「また蹴られたいのか?」
ファフ(乱暴は駄目だよシャフ

シャフ「けほ」
ユン「!」

ファフ『シャフ、大丈夫?』
ユン「お前また
シャフ「……少し目眩がしただけだ。しばらくしたら治まる」

ユン「なあ。前から思うてたんやけど、もしもシャフが誰かの血を吸ったらその人は吸血鬼になってしまうん?」

シャフ「そんなの操作出来るに決まってんだろ。ゾンビじゃねえんだぞ」
ファフ『えそうなんだ
ユン「はー。都市伝説も何が正しいか判断できへんなあ」
シャフ「人間が書いた書物が一切の狂いも無いなんてそれこそありえねえな。……いや、俺の場合は確かにイレギュラーかもしれねえが」
ユン「なんで?」

シャフ「……俺は純血じゃねえから。元人間なんだ」

ユン「え、それほんまに?」
シャフ「吸血鬼になったのは何百年も前になるがな。歳は16で止まってる。最古の血とはいえ混合型が本来の力を発揮することはまれなんだろうよ」
ユン「おじいちゃんやん!」
シャフ「気にする所はそこじゃねえよ!!」

ファフ(元、人間

ファフは口元を抑え驚愕し、ユンは目を見開く。
日光が幾分か平気なのもハーフだから

ユン「ハーフに関してはよう分からんけど、少なくとも吸血鬼になって暴走する心配は無いって事やんな?」
シャフ「?何が言いたい」

ユン「俺の血飲まへん?」
シャフ「は?」
ファフ『!』

ユン「血液で貧血が良くなるなら試す価値あるやろ?血の質とか条件も無いみたいやし」
シャフ「本気で言ってんのか?確かにそう話したが人間が言う貧血とはわけが違うんだぞ」
ユン「大丈夫やって!多分俺タフな方やし。あ、吸血鬼にならんよう調整はしてや!まあ吸血鬼になった時はなった時でええけどーーー」
シャフ「いいわけねえだろ」

シャフ「こんなもの、こんな姿があったって何も残らない。取り残されるだけだ。長生きするもんじゃ、ねえんだよ」
ファフ『シャフ?』

ファフ(また、あの寂しそうな表情……そこまでシャフを追い詰めている事って一体何を抱えているの?)

ユン「あー。すまん、そんな顔をさせるつもりはなかった」
シャフ「……わかってる」

一呼吸

シャフ「正直、喉の渇きを抑えるのも限界があるから提案自体は助かる。だが、」
ユン「血が嫌い?」
シャフ「嫌い、というより怖いんだ。それこそ戻れなくなる気がして」
ファフ(それは元人間なら余計に怖いと思う

ユン「無理強いはせん。けどお前さっきからフラフラで見てられんさかい、頼ってくれてええんやで」
シャフ「………考えておく」
ユン「ああ、それくらい素直な方がええな」
シャフ「子ども扱いすんな。言っておくがてめえより遥かに年上だからな」
ユン「ふーん。おじいちゃんのお世話も任せとき!」
シャフ「おい」

照れくさくてふいとそっぽを向くシャフ。

ユン(しかし元人間、か。どうりであの時から人が想像するものとは違った印象があるわけやな)


▶此処で未完。
次ページから大まかな流れと書きたかった内容について&あとがき