留守田
2025-04-18 23:14:09
11355文字
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詩のはなし

自Tav(ヴァリス)君は本編中に恋人に詩を書いて贈ってたんだよ、という小話です。ちらのーとに投稿していた物のまとめ+加筆版になります。
※独自解釈・脳内設定マシマシな上にヴァンパイアの花嫁化、オリジンキャラクターのコラボ先での非公式な設定を含みます。


Act3


「アスタリオン」
 バルダーズ・ゲートに着いてから間もなく、我らがパーティーリーダー兼愛しの恋人は《エルフの歌》亭に部屋を借りた。
 影の地は抜け、火の番も不要とはなったが……その代わりとして、アスタリオンは瞑想から目覚めた後の暇な時間の間、恋人と触れ合うようになった。
「ダーリン! 俺のためにまた詩を書いてくれたのか?」
 動かないはずの心臓が僅かにときめいて、アスタリオンの声も自然と弾む。
「ああ。気に入ったら取っておいてもいいが……旅が終わったら、燃やしておいてくれ」
 正式に恋人同士になってから、アスタリオンの恋人は詩を書き上げるペースが多少は早くなった。質は相変わらずだが、そこに込められる想いは日に日に愛おしさを増して行く。
 クシャクシャにされなくなった紙切れを顔の赤い恋人から受け取って、アスタリオンは中身を読む。
“君が口遊む歌を作り、語る物語を書こう。いつか私がアルヴァンドールへ旅立つ日が来ても、君が歌い語るその心に私が居続けられるように……
 いくつか書かれた詩の中で、この一つが特に目を引いた。
 献身を詠む詩はこれが初めてではなかったが、旅が終わった後について言及している物は今までにはない。
「ダーリン、これは……
「ハニー……儀式がどうなろうが、私はお前を守り、ずっと側に居る。だが死んだ後の事は考えた事がなくてな」
 私なりに出した答えだ、とそのハイエルフは笑う。
 そして、アスタリオンは思い出す。彼は定命のエルフで、いずれは死ぬと。エルフの創造主たるコアロン・ラレシアンの元へ……かの神が持つ領域、アルヴァンドールへと召され、その御前で一芸を披露するのだろうか。
 そうであるなら、彼が苦痛だったと語る父親に褒められなかった五十年間の稽古を帳消しにするほど賞賛を浴びるべきだとアスタリオンは思った。
 だが……それは、彼がいずれ神の手によって掠め取られるのだとも言える。俺をこんなにも救っておきながら、俺の手の届かない場所へ逝ってしまう。
「私は吟遊詩人バードだ。だから、カザドールを倒して儀式を止め、この幼生の件も解決したら……苦手だが詩を山ほど書いて、それ以上の物語も書いて、お前の前で演劇を披露して、気儘に調べを奏で、お前が退屈にならないようにしたい」
 まるでそうするのが正しいかのように、恋人は笑った。
 ああ、眩しい……
 アスタリオンは目を細める。この笑顔を失いたくない。側に居てほしい。
 だが、これが彼にとって最大の献身である事は分かる。彼がこれまで尊んできた大勢の観客達のためではなく、たった一人のためにその芸の腕を振おうというのだから。
「ダーリン……
「まあ、それもまずは儀式をなんとかしてからだ。アスタリオン、絶対に止めよう。バルダーズ・ゲートのためにも、他でもないお前のためにも」