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豆炭々炬燵
16057文字
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モアナと伝説の海シリーズ
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【現パロ含む】同じ轍を踏む【マウモア】
モア海2の世界観で分かっていた筈なのに張り切り過ぎて空回る半神半人の英雄・マウイを見返そうとしたら失敗してしまったモアナ・こっそり付き合っている二人・現パロモア海2で幼馴染モアナモニロトの学校生活とタマトアのルーティン話詰め合わせセット話。
ノリと勢いでどうぞ。独自解釈捏造要素有。
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【現パロ】厄日
現地人であれば明確に分かる境界線も土地勘のない不慣れな輩にとって素晴らしき観光地の一部となんら変わらんらしい。其処彼処に散りばめられた愛と平和を喰らう平和ボケを嘲笑う非日常のグラデーション。
察しがいい奴だったら即座に引き返す治安がウリのスラム街──、ラロタイに漂う鼻腔をツンと刺す澱んだ匂いを肺に溜め込んでいた紫煙で塗り替える。
この地に根付き語り継がれているおとぎ話に登場する伝説の魔物。それが背中に金糸で刺繍された紫苑のジャケットを素肌に直接羽織り、象牙色のスラックを履いている足はモデル顔負けの長さを誇っていた。
「命があるだけ儲けモンだぜ兄ちゃん」
呻き声を上げ薄汚い路地裏に丸めた背中を預け意識混濁真っ最中な本日の臨時収入を磨かれ艶めいている革靴の爪先で適当に突っつけば、ハッと顔を上げ逆光を従える面貌を見るなり酷く情けない悲鳴を上げ走っていった。
何度か足を縺れさせずっこけながら如何にか境界線の外側へ逃げるバカンスではしゃいでいた背中を軽薄な目で見送ることなく切り取られた空を仰いだ。
成熟した男の喉仏を無防備に晒しブレイズヘアの尾に嵌められた金輪がかち合う音を奏でた。
「久方振りにからかいに行くか」
咥えている煙草を一気に吸う。
熱帯地方では珍しい月夜に映える色味の薄い肌。そんな肌よりか仄かに濃い唇ぎりぎりまで赤い火が駆け上ったあとに残る灰が落ちる前に親指と人差し指で掴み煙草を捨てたタマトアは靴裏で丹念に踏み消した。
賑わう街中でゆうに頭ふたつ以上背が高いタマトアが歩くだけで人の海が割れ道が出来た。
一目見て関わりたくないおっかない風貌。太陽光を受け潤い帯びた光を放つ革靴を鳴らす足音、異様に大きく筋張ったゴツい手からすらり伸びる長い指には様々な金色に輝く指輪が嵌められ歩くのに合わせ渇き擦れた音がカチリカチリ響き、隙を見せれば忽ち食われてしまうじっとりした目付きに皆々顔を逸らした。
お利口さん。臆病さん。腑抜けさん。頑なに目線を交わさない背の低い波が引いていく様子を横目で興味薄に眺め──、ちょいとした暇つぶしを見つけたタマトアがヤニ塗れの黄ばんだ歯を剥き出して笑う。
「だから言ってんだろ? 写真一枚に付き料金が発生するって」
「そんなの聞いてませんっ」
「折角キレイに撮れたんだ。ここいらでぱあーっと現地に金落とすのが観光客ってやつじゃないのか」
「あんたらが勝手にスマホを取って写真撮り始め、」
「あ゛あ゛ん!?」
ハネムーンはたまた記念旅行。身を寄せ合う若いカップルに凄み絡むガラの悪い男二人組のやり取りを遠目に右往左往するざわついたドーナツを食らったタマトアが体躯のいい男二人を背を丸め上から覗き込む。
「取り込み中だ!! あとに
……
!!?」
影が差し男の一人が唾を吐きがなり振り返れば、視界に映り込む鍛え抜かれた硬そうな腹筋と悪趣味なギンギラ煌めくベルトのバックル。警鐘がガンガン鳴り響ているのに見えない巨大な何かが目線を強制的に上げさせる。
刹那、太陽光を遮って見下ろす愉快に歪む三日月にカップルを脅し続けている相方の袖をクイクイっと引っ張った。
「んだよ。とっとと追い払えって、ひゃああああっっ」
最後の方は殆ど絹を裂くような悲鳴だった。
威圧感を醸し出すため掛けたサングラスがズレ落ち驚愕に満ちた目玉に大層愉快に嗤うタマトアが映り込む。
「なら俺様もシャイニーに撮ってくれや」
遥か頭上から降り注ぐ明るい調子の声が男達の顔に冷や汗を浮かべさせ血の気を引かせた。
そして、聞こえないスターターピストルが男達の鼓膜を劈く。
野次馬をかき分け逃げかけた背中は呆気なく誰かが通報したお陰で、街の平和を守る正義のミカタたちにあえなく御用になったのを冷めた目でみやった。
「つまんな。俺との追いかけっこ前に捕まってんじゃねえ」
「あのっ!!」
大概理不尽過ぎるタマトアのぼやきに彼の本当の怖さを知らない勇気ある声が掛けられた。
ギロリ睥睨する不揃いな瞳孔に息を飲むも、彼女の手前なけなしの根性をかき集めた彼氏の健気な姿にタマトアは軽く肩を竦めた。
「ありがとうございました!!」
「お陰で助かりました!!」
彼氏が深々お辞儀するのに合わせ彼女もまた頭を下げる光景にタマトアの表情が渋さを増す。
「Ah~。いらんいらん。礼を押し付けられたところで腹の足しにもなりやしない」
適当に雑魚を揶揄ったついで暢気な観光客から巻き上げた金を含め臨時収入を得るつもりだったのにとんだご破算だ。周囲を盗み見すれば面倒な警察がこちらの動向を窺い続け怪しい挙動確認次第応援を呼ぶのも辞さない態勢に鼻で溜息を吐いてしまうというもの。
「
……
お腹、空いているんですか?」
挙句比喩表現をドストレートに受け取った挙句問い掛ける彼女が口を付けていないホットドッグを恐る恐る差し出し、彼もまた一口も飲んでいない汗を掻いているプラカップに並々注がれたアイスコーヒーを差し出してくる始末。
──間違っちゃいねぇか
ホットドッグを二口で食べ、アイスコーヒーを啜るタマトアが胸中独り言ちる。
だがしかし、あの場は若いカップルの好意をさっさと受け取って退散しなければ今日一日シケた警察署で時間が潰れていたのは火を見るよりも明らか。
カップの蓋を開け残った氷をガリボリ砕き冷たい喉越しを味わっているうちに目的地付近に辿り着き、ポイ捨て禁止の看板を尻目にゴミひとつない道路の植え込みにゴミを捨てた。
「あーっ!!」
閑静な住宅街に響き渡る元気いっぱいな子供の声。
それを背中で受け止めたタマトアが気だるげに振り向くと、大層おカンムリな少女がつい今しがたタマトアが捨てたゴミをむんっと小さな指で指差していた。
「ごみのポイすて、ダメなんだよっ」
自分よりも遥かに大きな成人男性に怯む事無く注意する小さなお姫様の出現にタマトアはわざとらしく片目を限界まで瞠り、もう片方の目を細め凄んだ。大抵の輩は怖気づき踵を返すが、小さな巨人は愛らしい足を踏み鳴らしてタマトアの傍まで近付き胸を張り見上げてくるじゃないか。
「(このおチビちゃんどっかで
…
)」
喉まで出かかった記憶がボイコット運動を起こしているため、タマトアはよくよく少女の顔を見るべく可愛らしいおべべの首根っこを掴み上げる寸前、タマトアよりも早く少女の手が引かれてしまい目当ての者を掴めなかった手が空を掻く。
「今日はイベントが多くて退屈しないな」
丸くなりつつある背を伸ばす枯れ老いた爺が強い眼差しでタマトアを射抜き足元に少女を隠した。
「何しに来た」
虚勢を張っているとは思えない皺がれた声。
弱いのを承知で立ち向かう老い先短い手合いにタマトアがヤニ塗れの歯を見せつけ口端をつり上げ──、長い足に物を言わせあっさり距離を詰めた。
咄嗟に少女を覆い被さり庇う老人の鼓膜を震わす「まだまだ楽しめそうだ」愉悦たっぷりな声色に背筋がゾクっと冷え同時に自分の意思に関係なく身体がタマトア側にくんっと引っ張られた。
間髪置かずに耳を劈く発砲音に老人ケレは未だ思考が追いついていない少女シメアを強く抱きしめる。
「報復か面白いっ」
無様な恰好を公衆の面前で晒してしまった腹いせに警察を振り切っただけじゃなく銃であれば勝てるなんて驕り勘違い甚だしく愚かしい男二人を上機嫌に相手すべく指の骨を鳴らしたというのにタマトアが手を下すよりも早く男二人分の情けない悲鳴がアスファルトを舐めた。
真夏に溶けたアイスよろしく突っ伏す遊び道具。ケレとシメアは気付いていないが、素早い動きでその場を立ち去る小さな影に横取りされたタマトアの豪快な舌打ちが響き渡る。
「
……
助けてくれたのか?」
「またこれかよ。違う違う。俺の進行方向、つまり視界にお前らが入ってちゃ邪、」
「ありがとっ」
「人の話を最後まで聞こうかおチビちゃん」
肝が据わっているのか、怖いもの知らずか、怖いという事自体を理解していないのか。
ジト目で見下ろすタマトアに物ともせずスラックスを引っ張るシメア。そのうち椅子代わりにピカピカに磨かれた革靴に座りそうな気配にケレが彼女を慣れた手付きで抱き上げた。
シメアの顔がそこそこ高い位置まで上昇したお陰か、タマトアの喉元に突っかかっていた違和感が口からまろび出る。
「やーっと思い出したぜ。嬢ちゃんとこの妹ちゃんか。あー、すっきりすっきり」
「何を今更」
「あのねえ、足元ちょろちょろするガキの顔一人一人覚えるほど暇じゃないの。お分かり?」
「じゃあ、何で今思い出せたんだ」
「
……
俺相手にビビらず立ち向かってきた
…
?」
首を傾げ顎下を擦り目線をシメアに注ぐタマトアにケレもつられシメアを見下ろした。
眼窩奥に甦るタラが館長を務める歴史博物館にて館長直々子供らに伝承を語る際、十人中十人が彼女の迫真の演技で泣き喚くのが常というのに、その伝承を怖がらずに熱心に聞き笑った子を──、ケレは二人ほど知っている。
一人は今年19歳を迎えた期待の新人女優。もう一人は
…
。
「そいつは大いに分かる」
しかめっ面を解かぬまま浅く頷いた。
「おねえちゃん待ってるの?」
あえて蚊帳の外にやっていたシメアにタマトアが茶目っ気たっぷりにウィンクをかます。
「そうだぜぇ? お前の姉ちゃん何時帰ってくるか教えてくれよ」
「たぶんそろそろ帰ってくるよ! モニと一緒に!!」
邪悪な顔で笑っていたタマトアだけの時間が凍り付き、緩慢な動きで溶けるや否や何事もなかったかのように踵を返した。
「帰るわ」
「ちょっと待たんか」
心なしかうんざりしている背中にケレが声を掛け、植え込みに捨てられているゴミを指差す。
手塩に掛け愛情たっぷり注ぎ管理しているプルメリアの低木。華やかに咲いている花の間に挟まっている無粋極まりないゴミを指差し続けるケレの険しい表情にタマトアはイーっと黄ばんだ歯を覗かせ口角が地面を貫く勢いで下げた。
軽く突っついただけで壊れる子供とご老体を甚振って晴れる気分なぞ多寡だか知れている。
不承不承。自分で捨てたゴミを拾い上げれば後方から放たれる柔らかい空気。全くもって反吐が出て仕方ない。
それもこれも鬱陶しいあのモニって男がモアナを送り迎えしている所為で体のいい暇つぶしが出来ないのが原因だ。
来た道を戻る途中、ゴミ箱にシュートを決め馴染みの暗い路地裏に一歩踏み入れかけたタマトアは首だけ捻っていい遊び道具を掻っ攫った小柄な少年をねめつける。
「ったく過保護にも程があんぜマウイちゃん」
牽制だけして立ち去る影を見送って、ようやく塒に戻っていったのだった。
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