【現パロ含む】同じ轍を踏む【マウモア】

モア海2の世界観で分かっていた筈なのに張り切り過ぎて空回る半神半人の英雄・マウイを見返そうとしたら失敗してしまったモアナ・こっそり付き合っている二人・現パロモア海2で幼馴染モアナモニロトの学校生活とタマトアのルーティン話詰め合わせセット話。
ノリと勢いでどうぞ。独自解釈捏造要素有。

同じ轍を踏む




 屈強な男達数人がかりでやっと仕留められそうな立派な牙が生えた獣。生まれ故郷や今まで航海した島でも見たことない芳醇な香りを放つ果物。何処かの魔物が大層気に入るであろう金銀財宝。
 が、毎朝家の前に積み上がっている光景に犯人捜しするまでもなく素知らぬふりで朝食の豚肉を食べている相手をモアナが腕を組み見下ろす。
 「今日のはまた一段と大物ね」
 「次は島をつり上げてこようか」
 冗談交じりに笑い豚肉を頬張っているがマウイならばやりかねない、彼にはそれをやってのける力を持っている時点でモアナは新鮮ぴちぴちな巨大魚を一瞥後、困ったように眉を下げ出掛った乾いた笑い声を飲み込み。
 「今は、んー間に合ってるかな」
 と、マウイの隣に腰を下ろして自分もまた豚肉を摘まむ。
 横から刺さる「遠慮しなくていいぞ」の気配を獲れたて巨大魚どうするか思考で霞ませる。
 ただどうするもなにも腐敗する前に小分けにして食べられる分だけ残し他は村人たち配るのがお約束になりつつある。
 さながら神に捧げる貢物のように、もといマウイ自身貢がれてきたであろう物の数々を日ごと贈られるモアナは心中複雑な思いが渦巻いていた。
 贈り物に込められた彼の気持ちは嬉しい。
 到底一人では食べきれない量を他の人たちにも分けていいかと聞けば快く了承してくれる懐の広さにも感謝している。
 実際食料関連の面でとても助かっている、助かり過ぎるほどに、飽和状態になっているほどに、この贈り物が続けば村民全員丸々太った豚なみになってしまうくらいに。
 チラっと盗み見すれば、ありありと「明日は何を取ってきて驚かせようか」なんて顔にでかでか書かれ楽しげに豚肉を咀嚼するマウイにモアナの良心がずきり痛む。
 すべては喜んでもらうためが根底にあるゆえ心苦しさで躊躇ってしまうが、此処でなあなあにしては彼のためにもならない。
 モアナは祖母からもらったペンダントを握り締め目を瞑って深呼吸をして気分を落ち着かせる。口だけ動かして何度も言葉を反芻したのち、バッと目を開けた勢いのままマウイの顔を真剣に見つめ肺に溜め込んでいた空気を言の葉に変えた。
 「ねえ、マウイ。毎日あなたからの贈り物とっても嬉しいわ」
 「そいつは良かった」
 素っ気ない口ぶりに合わないご満悦な面持ちで豚肉を摘まんでいた手を止めマウイが浅く頷き。
 「でも、明日から無理して持ってこなくて大丈夫」
 モアナの続けざまの言葉に摘まんでいた豚肉を落とした。
 緩く半分閉じていた瞼を開けまん丸になった目に宿る疑問の色。所なさげに空を掻き始めた常人より遥かに大きな両手にモアナの眉が申し訳なさげに下がってしまうというもの。
 「何でだ」
 なんとか言葉にすべく数回開閉をくり返し、やっと喉奥から振り絞った声に上目遣いで尋ねた。
 「質問を質問で返してごめんなさい。でもどうして、あなたは私に沢山の贈り物をくれるの?」
 「お前に喜んでほしくて
 「ええ、嬉しかったわ」
 「ならっ」
 「大きな獣や見たことのない果実、キラキラのピカピカ?に巨大魚に込められたあなたの気持ちが嬉しかった。でも、私はマウイが隣にいて一緒に暮らしてくれる、それだけで充分くらい幸せなの。──わがまま言っていいなら、贈り物じゃなくてあなたの言葉が欲しいかなって」
 モアナの言葉を聞き腑に落ちた。もしくは的を得たと云わんばかりに不安に満ちていたマウイの顔が晴れ渡る。
 数千年前人間達に崇め奉られていたときに捧げられた数々の貢物。腹を満たす肉や魚、果実と酒の美味さに舌鼓を打つのもさることながら、マウイを喜ばせたのは貢物に込められた思いだった。
 それを今の今まで失念していた不甲斐なさ、昔の悪癖が無意識に顔を覗かせ彼女に押し付けていた事実に居た堪れなくて顔を覆うもすぐに手を取っ払ったマウイが隣に座っているモアナに目をやった。
 「つまり、巻き毛ちゃんは直々に愛の言葉を聞きたいんだな?」
 片眉と口端を上げ不敵に笑うマウイにワンテンポ遅れにっこり口元に弧を描いていたモアナの首元から顔に至るまで見る見る朱に染まっただけに終わらず目が泳ぎ始めた。
 「だ、誰かに呼ばれている気がするっ」
 居た堪れない気持ちが今度はモアナに伝染した。顔をサッと背け恥ずかしくて適当な理由をつけ腰を上げ逃げ出す彼女の手をマウイの手がひっしと掴む。
 「俺の耳には何も聞こえないな」
 「き、きのせいじゃない?」
 「何かあれば向こうから来るだろ。慌てんなお姫様」
 「だから私はお姫様じゃないって……!!」
 折角目を合わせていなかったのにまんまと乗せられてしまった。
 訂正の言葉と共に振り返れば今まで見たこともない澄み切った眼差しを直向きに注ぐマウイにモアナの胸がひと際大きく高鳴り、曖昧に誤魔化す隙すら与えてくれない空気に為す術無く彼女は再び腰を下ろすのだった。