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豆炭々炬燵
16057文字
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モアナと伝説の海シリーズ
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【現パロ含む】同じ轍を踏む【マウモア】
モア海2の世界観で分かっていた筈なのに張り切り過ぎて空回る半神半人の英雄・マウイを見返そうとしたら失敗してしまったモアナ・こっそり付き合っている二人・現パロモア海2で幼馴染モアナモニロトの学校生活とタマトアのルーティン話詰め合わせセット話。
ノリと勢いでどうぞ。独自解釈捏造要素有。
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繋いだ手
人間の尺度で考えれば悠久の時を生きてきた身だというのに、我ながらたった三年の間に随分特別な感情が育ってしまったなんて薄く自嘲したマウイが首飾り下に隠れている自慢の弟子のタトゥーを摩る。
根無し草まではいかないが、マウイがモトゥヌイに腰を据え数ヶ月経った。そんな彼の隣を三年の空白を埋めるように嬉々とした顔で話題が尽きることのないモアナが暇を見つけては寄り添い歩く。
代々モトゥヌイを収める村長の家の生まれだからではなくモアナ自身の人柄や人望、テ・フィティの心を返しただけじゃなく再び海を繋げた偉大なる功績も相俟って彼女は島民達に慕われ謂わば大人気な存在だ。
すれ違う村人達がモアナに声を掛け、モアナもまたすれ違う村人達に声を掛けた。困りごとを助け合い、共に笑い合う穏やかで争いごとから程遠い平和な土地。
誰も彼も親しい間柄で島全体が大きな家族だと言っても過言ではない雰囲気の中、マウイは笑顔の花を咲かせて笑うモアナ越しに到底自分に向けられているとは思えない視線の出所を盗み見る。
モアナとマウイが連れ立って島内を歩けば誰一人目で追わない方が無茶な話だ。人気者と人気者が一緒にいる、それだけで注目を集めるのは致し方ないこと。幸か不幸か二人揃って周囲の目を浴びる状況には慣れっこなため、照れ恥かしがることは一切ない一切ないがモアナよりか視線の種類を理解しているマウイの薄く瞼に隠れた目が椰子の木の影に隠れてモアナを見つめる熱視線たちを難なく捉えた。
「(あそこまで、あからさまな目線に気付かないものなのか
…
?)」
つと寄せては引く波打ち際で海と戯れはしゃぐモアナを横目で見遣ったマウイは村の男達に憐れみを抱いた。本気で彼らが向ける色目を気にしていないのか、そもそも気付いていないのか。
「巻き毛ならあり得る」
「なにか言った~?」
「いや」
思わず出てしまったひとり言を拾われたもののモアナに話の続きを促せば、とかく懐疑心を抱かずに海との戯れを再開する姿に釣り針を砂浜に置きマウイも腰を下ろした。
無邪気に笑う姿を見てマウイは確信した。彼女は男達が自分に注いでいる熱い視線の意味を毛ほどにも分かっていない事を。
「(相手が悪かったな)」
マウイが砂浜に座っているのを視界端で捉えたモアナが軽やかな足取りで彼の隣に膝を抱え座り込んだ。
殆ど触れ合う距離の近さに椰子の木の影から次々に悲壮感漂う溜息合掌を背中で聞き、唇を摘ままない限り喋り続けるモアナの隣を独り占め出来る優越感に浸った。
殊更溢れ返る感情を言の葉に乗せ語るモアナの太陽の光を受け輝く目を見つめ、三年の間記憶の中でしか聞けなかったモアナの声に耳を澄ませた。
どんなに小さな出来事だって聞き知りたい感情を視線に乗せ相槌するマウイの脳裏に過る、たまの喧嘩をしてもキスして抱きしめれば忽ち顔を赤らめ俯き口を噤んでしまう彼女の愛おしい姿に自然と口元に弧を描いた。
「(ここでやったら流石に怒られるか)」
マウイとしては要らぬ期待を抱かせない優しさも兼ね、とっくに恋仲である事を公表すべきとモアナにそれとなく訴えているが彼女は恥ずかしいらしく親しい友人にはおろか誰にも話していない。
「(
……
察しがいい奴らにはとっくにバレてるってのにな)」
可愛い恋人の幼気な願い事。それだけで周囲に公表したい欲を抑えるには十分過ぎるくらいマウイの心を満たしていた。
「ちょっと聞いてる?」
「ああ、聞いてる聞いてる」
「うそっ、ちょっと上の空だったわよ。何か別のこと考えてたの?」
「別
…
、別っちゃ別だが、別でもないな」
なぞかけのようなマウイの返答に心なしかムスっとしたモアナが彼の正面に回り込み腰に手を当て胸を張った。どうやら遺憾の意らしい。わざと顎を引き上目遣いで睨んでいるとは到底言い難い目付きで見上げるモアナに謝罪をすべく下ろしていた手を挙げたマウイと険しかった表情をモアナが緩めたのはほぼ同時だった。
「いいわ。でも、次やったら“コレ”だからねぇ」
不敵に笑ったかと思えば徐に両手で自身の胸を挟みきゅっと中心に寄せる仕草にマウイの丸い目が瞬いた。
「は?」
モアナの動作に宿る夜の気配。だが、やってる本人は深く考えていないようで無邪気にやっているのがまたマウイの肺から空気が抜けていく。彼女からしてみれば、ほんの悪戯程度のものだからこそ性質が悪い。
目頭を数度揉み終えたマウイは地の底から這い上がるような声でモアナの名を呼ぶ。
「なに? 今さら謝っても遅いんだから」
ふふんと鼻を鳴らして腕を組むモアナにマウイが低く唸るも、まだ自分が置かれた状況を珍しく理解できていない彼女は逆に心配そうに彼の顔を覗き込んだ。
「──今夜は眠れないと思え」
そう言われたモアナは漸く陽が落ちた二人しかいない寝所でこれから起きるであろう出来事を悟ったのだった。
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