大人になってからの松花馴れ初め

pixiv再掲
独身だけど家族皆仲良しの花巻と、既婚者だけど威厳ある家庭で育てられた松川という設定で書きました。極も最終回も出る前に書いたので抜けてる公式設定多々あります
家族への憧れの話です



「エマ、たかひろ君起こしてきてくれる?」
「はーい」
 すっかり寒くなった冬の暖房は、心がほっとほぐれる気がする。松川は新しく越した3LDKの我が家を温めるべく張り切る暖房を、もう一度だけ設定温度をあげた。寒がりの花巻の為だ。
「おはよー‥ごめん、すっかり寝てたわ」
 エマに手を引かれて寝室から出てきた花巻は、寝癖がひどくて隈もできている。仕事の持ち帰りが珍しくあったようで、昨日は遅くまで書類と格闘していた。寝るまえに用意した飲み物を飲んだカップを律儀にお礼を言って松川に返却する。
「エマ、皿出してもらえる?」
「パパ、今日はエマがよそいたい」
「いいよ、こっちおいで」
 フライパンから一生懸命よそっているのは、どうやら花巻の分らしかった。健気に家事を頑張るエマの姿に、花巻は嬉そうにしている。
「じゃあ、いただきまーす」
 三人で手を合わせて用意された朝食を取り始める。ふと花巻が窓を見ていた。根雪になりそうな雪が舞っていた。
「東京でこれは珍しいな、今日電車止まんなきゃいいけど」
 今日休みだけど、午前中だけ書類出しに会社行くからさー、と花巻は説明するように二人に告げる。
 そうして振り返って食卓に戻ると、なぜかエマが神妙な顔つきで箸を置いている。松川は気まずそうに花巻から顔を逸らしてお茶を飲み、少女はオロオロと花巻を見つめた。
 この三ヶ月ほどで花巻は早くも少女の性格を学習している。松川はしまった、と思った。エマのあの顔は、どうか怒らないであげて、の顔だ。
 そして今日の朝飯当番は松川で、目の前にあるこれは美味しそうな色ツヤをした恐らく残り物でできているチャーハン。朝からチャーハンなんて、と思うが、わりと松川家では普通のことだった。
 意を決して花巻がスプーンを入れる。ほぐれた卵も米も絶妙なバランスで、刻んだネギも歯ごたえをやや残して花巻の好きなチャーハンの
「また塩入れすぎたな一静イイィィ!!!!」

 エマはぎゃーぎゃーとやかましい二人の様子を見て笑顔になる。
 東京に珍しく降り積もる雪が、まるでこれまでの辛かった日々を忘れさせるように幸せを恵んでくれて、舞っているようだった。