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ろころころ
2025-02-05 17:14:24
13742文字
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Code:000 小話まとめ
1
2
3
4
5
6
7
*会議は踊る されど進まず*
「
…
で、
このイレギュラー
デストロイヤー
をどうするかですよ。お陰で朝っぱらから呼び出されて
…
はー
…
何時だと思ってるんですか。ユニオンよりブラックですよ。労働省に訴えてやる」
自称エリートスパイの男の嘆きと文句は、薄暗い朝方の闇を照らす、無機質で機械的な光の灯る会議室に響いた。
救助隊は基本的に夜間も警戒態勢を解くことは無い。が、彼らEM0-2に所属する隊員は昼間に戦闘員として派遣されることも多い為、夜間は一般職と同じく休息を取っている。勿論、緊急事態となればどんな時間帯であろうが集合出来るよう訓練されてはいるのだが。
とはいえ今回は緊急を知らずサイレンが響いた訳でもない。ただ、
彼らがよく知っている危険な気配
に勝手に目を覚まし、それを解明すべく出動したのだ。
アルバートもその一人であったが、彼がレオンと現場に駆けつけた時には寝起きは低血圧でくたばっているはずのウェンが珍しく寝起きの彼とは思えない挙動で迅速に
それ
に斬りかかっていた為、彼らの任務は何故かその野蛮人を止めるところから始まった。そのバーサーカーが声を掛けたところで止まるはずもなく、何度か格闘した後、レオンが麻酔薬をお得意の狙い撃ちで撃ち込んだところでどうにか第一ミッションはクリアしたというわけだ。何故味方に手を焼かされなければならないのかは不明だが、それはともかく次に考えることは
…
その男
の対処であった。
二人はその男と仕留めた蛮族を引き摺り、こうして深夜四時に会議室の灯りを灯す羽目になったのだ。以外にも対象の男はと言うと、無言で逆らうこと無く二人に着いてきた。こうして会議室の一番壁際の椅子に、三人に囲まれるようにして控えめに腰を掛けている。
「
…
お伝えしたはずですが。私を殺しても構いませんが──────其の様にすれば、私の"破壊の力"が
彼女
の物となりましょう。そうすれば
エデンの園
大陸
が滅びるのも時間の問題、と言えるでしょう」
「
…
彼女?」
「ええ。最近
貴方方の元
救助隊
に姿が見えない少女がいらっしゃるでしょう。例えば
…
アムリタ。貴方、心当たりがお有りなのでは?」
「黙れ、呼ぶな。耳が腐る」
「おや、死体の割によくほざく」
ビュンっと風を切る音が鳴り、不気味は笑みを浮かべるその男─────デストロイヤーの耳を掠めるか否かの壁に投斧が突き刺さる。これはまた副隊長に怒られるな、などとアルバートはまるで他人事のような感想を抱いた。
「おやおや、血気盛んなことで。若い子は朝から元気がお有りで羨ましいですよ」
「喚くな。次にその薄汚い口を開いたら貴様の首を切り落としプリズムタワーの頂上に吊るすぞ」
どんなサスペンスだよ、とアルバートは内心で突っ込んだ。そんなアルバートの心内も知らず、レオンは隣の蛮族を着席させる。
「この馬鹿を煽るの辞めていただけます?話が進まないので。私は早く帰って寝たいんですよ。貴女方の茶番に付き合ってられるほど、ユニオン警察は暇じゃないので」
「
…
ふふ、そうですね。貴方も相変わらず
偽善者の真似事
で忙しい様で。特に何も成長されていない様で安心しましたよ。私の
宿り主
破壊者
?」
「貴方って逐一煽りを入れないと話せないんですか?」
はーっと深い溜息を吐いたレオンはとにかく早く帰りたいらしい、男の挑発には乗らずに話を進めた。
「で?ウェン、貴方に心当たりのある女性というのは
…
」
「
…
ルニ・ブバスティス」
ルニ。彼らの所属するEM0-2の後続に位置するチーム、EM0-3に最近配属された新人の能力者少女である。ふんわりとした独特な雰囲気と偶に放つ本気だが的外れの発言からは、彼女がいわゆる"天然"と呼ばれる部類だと言える。
そんな少女が、この大陸を危険に晒す存在になったなど、簡単に信じられる話では無い。
しかし、アルバートには彼女が救助隊から姿を消している理由として思い当たるものがあった。
「えっと
…
ルニは確か、実家に帰省するって言ってたけど
…
」
アルバートの言葉に、ああそう言えば、といった様子でレオンも頷いた。ルニは父親を亡くしており、母親がエターナルシティから離れた郊外に住んでいるという話は割と近しい関係性の彼らは承知の事実である。
しかし、その言葉はすぐに打ち消された。
「それは十中八九、嘘だ」
「何故そう言い切れるんですか?」
「彼女の母親は、12年前に俺が殺した」
さて、冗談混じりであんなことを思っていたが本当にサスペンスになってしまった。どうやらこの中に殺人犯がいるらしい。
とはいえ、この蛮族はあまりにも率直すぎるが故に話が飛躍していることで有名である。具体的に言えば起承転結の結だけを口にし、主語と述語の述語しか知らないと言われている。実際、そうである。
「
…
何故殺したんですか?」
「それは今重要か?」
「私、警察なんですよね」
知っているが、とウェンは言った。
向かいに座るデストロイヤーは俯いて肩を震わせていた。恐らくあれは笑いを堪えている。ふざけるな。
「貴方が直接手を下したので?」
「彼女に物理的な危害を加えたのは俺では無い。しかし、彼女の死の原因を生み出したのは俺だ。ゆえに殺めたとも言える」
「あっわかりました。その手の流れは長い上に大体無関係なので無かったことにして先に進めましょう」
レオンは警察とは思えない発言を飛ばしたが、これはもはやお約束であるため誰も突っ込まなかった。向かいの男は相変わらず震えていた。
「で?デストロイヤー。貴方の指す女性はルニさんで正しい
…
ちょっと何笑ってやがるんですか?こっちは睡眠時間削ってやってんですよ。ふざけるのも大概にしていただけます?」
「
…
ふふっ
…
すみませんね、余りにも無駄な上に価値の無い内容の会話でしたので」
そろそろレオンもイライラして来たらしい。彼の場合、早くこの無駄な話し合いを終えて帰りたいだけであろうが。
そんな様子を察してか、デストロイヤーは一息つくと、切り替えたというようにこちらを見た。
「ええ、正解です。かく言う私も直接目にした訳ではありませんが
…
"ルーイン"と。彼女は確か、此の様に名乗っておりました」
「それは
…
誰かに乗っ取られたってことか?もしかしてルニが帰省するっていうのも、乗っ取られてたから
…
それでなにか仕出かす気じゃ
…
」
「甚だしい妄想を有難う御座います、アルバート」
微笑みかける男の様子からして、どうやらアルバートの考察は間違っているらしい。ちょっとイラッとしたが、突っ込むのは負けなのだ。
「じゃ、じゃあなんだよ?」
アルバートは黙って男の話を聞くことにした。
「貴方の仰った出来事とは関係性が反対です。ルニさんが私とは異なる"新たなデストロイヤー"に干渉し、その魂を自ら望んで体内に取り込んだのです」
「えっ」
「自ら?正気とは思えませんね。そこまでして何を
…
あ、先程話をかっ飛ばしましたが、もしかして母親の仇をウェンに?」
「甚だしい妄想お疲れ様です」
「殺していいですか?」
遂に警察がライフルを構えたので、アルバートは止めた。既に斧が突き刺さっているのだから、これ以上会議室を壊すわけには行かない。副隊長による2時間のお説教だけでは事が済まなくなってしまう。
「貴方のもまた反対と言いましょうか。アムリタを殺すのでは無く、彼女は欲しています」
「
……
ん?」
「あーあ、話聞いてないですよこの人。
…
で?この馬鹿が欲しいならいくらだってあげますけど、何故わざわざ"もう一人のデストロイヤー"の魂と融合するなど危険な選択をされたんでしょうね?力で脅した方が早いとでも思ったんでしょうか?」
「私はルニさんの人間性を知らないのでその辺の判断は出来かねます。が、私は決定的瞬間瞬間を目にしています」
デストロイヤーはウェンに視線を向ける。
「アムリタ。貴方、ルニさんが姿を消してから一度会っていますよね?」
「
………
」
「貴方はルニさんに"一緒になって欲しい"と頼まれた筈です。では、貴方は何と答えましたか?」
「知らん」
「すっとぼけ無いでいただけます?どうせろくな答えしてないんでしょう」
「発言の内容なぞ覚えているわけないだろう」
無責任な発言というのはこの様なものであると、アルバートは心の中で思った。
そんな中。デストロイヤーは、正解は
…
と言葉を続けた。
「"死んでもお断りなんだぞ。あ、今のは不死者ジョークだ。笑うところだな"」
「ば、馬鹿!」
「はぁー
…
ほんっとにこの動くだけが取り柄の死体は。一生その無駄にでかい棺から出てこないでください」
「な、何なんだいきなり
…
」
怒涛の責めに流石の不死者もたじろいだ。常に言葉を選ぶアルバートによる、率直な罵りのダメージが大半だろうが。
憐れに思ったのか、デストロイヤーによりフォローが飛ばされた。
「これが決定打になったか否かと言われれば、そもそも彼女も本当は理解していた様に思えますがね。行動のトリガーにはなったかもしれませんが、彼女の中に魂との融合という選択肢は既に存在していた様です。彼女は貴方と接触した時には既に魂を体内に取り込んでいました。完全に侵食させる
…
とまでは行っていなかった様ですが」
「だ、だとしたらやっぱりルニは自らそのデストロイヤーの魂に干渉したってこと
…
だよな?何処で存在を知ったんだろ
…
俺たちみたいに、世界に関わる役割を持っていたわけでは
…
」
「ええ。其れが一番不可解な点でして。其れ達に関しても私は現在に至る迄の彼女を知らないので。一番知っているのは貴方では?」
「
…
不可解な点と言えば。12年前、ルニと別れる際、ルニは母親の死に対する怒りの矛先を俺に向けていた。しかし───」
「今は、そうじゃない
…
」
「ああ」
ルニのウェンに対する異常な程の好意は、救助隊では十八番となっていたが
…
確かにこの事実を聞いた後では不自然さを感じる。理由がどうあれ母親の死に関与し、かつて恨んでいた相手をそこまで愛することが出来るだろうか?それには余程の過程が、もしくは何かしらの目的があるのでは無いか?
「貴方がルニさんと別れた12年前以降、彼女が救助隊に入隊するまでには会っていないんですよね?」
「そうだな」
「
…
そのようであれば、其の間に彼女に何かしらの出来事があったと過程するのが一般的でしょうか?」
こればかりは考えても仕方ない。彼女に何があったのか証拠を探すか、彼女が素直に吐くというのならば彼女を探し出すのも手だろう。好意を抱いている相手であるウェンが聞き出せばスムーズに事が進む様に一瞬思えたが、普段の彼女の様子からして更に暴走して終わりな気がするのでこれを提案するのはやめておいた。
「
…
で、ルニさんが何故自ら"もう一人のデストロイヤー"の魂と融合したのかについては後々調査するとして。先程からしれっと仲間面してますけど、貴方の処遇についてまだ決めていませんよ」
「おや、漸く振り出しに戻りましたね。では私も話を戻しましょう。
…
つまり、私を殺しても構いませんが、私を殺せば現在私が所持している"破壊"の能力がもれなくルニさんに奪われるという訳です」
破壊の力。彼の持つその力は、EM能力とは部類は異なるものの存在としては似ており、詳細としては「触れたものを壊す」という極めて単純なものである。曰く、自分の肉体が耐え切れるレベルのもので無ければ壊せない
…
というか、何かしらを壊すとその分自分の肉体にも負担が掛かるため、自分の肉体より強度の高いものを壊す場合は死も覚悟というシステムらしい。
「ルニさんが私の力を持つ場合、無論破壊にも限度がありますが、魂との融合により肉体は人の子より遥かに強度が増しています。人の子相手であれば易々と壊せるでしょう」
「そうなれば次々と殺人が起きる、と。ですけど、ルニさんの目的はウェンを手に入れることですよね?
…
さようなら、ウェン。どうか達者で」
「おい」
早く帰って寝たいレオンは、ヒラヒラと無慈悲に手を振った。
「残念ながらそう簡単には行きませんよ。現在はルニさんに行動の主導権がありますが、"もう一人のデストロイヤー"の魂が融合している事実をお忘れ無く。あくまで現在はルニさんに主導権を渡そうが問題の無いため魂は干渉を行っておりませんが、アムリタ。貴方が彼女の手元に堕ちた際には魂は干渉を開始し、最終的には貴方の肉体に乗り移るでしょう。其れが最も最悪な展開です。"アムリタ"という不死のバケモノの肉体に、破壊を望む魂が融合するのですから」
「肉体も心もバケモノ
……
ん?今とそこまで大差ない気が
…
」
「黙れ似非警察。
……
簡単な話だろう。融合させねば良いだけだ」
「貴方が足掻けばルニさんが人質にされるでしょう」
「ん?」
ウェンは首を傾げた。アルバートは知っている。あれは選ぶ余地などあるか?という顔である。彼はおそらく
…
否、確実にルニを切り捨てる選択を容赦も悪気も無く下す人間である。
「
私達
デストロイヤー
ですら想定外の、其の情けの無さには全く感服ですよ
…
私が勝て無いのも当たり前と言いますか。仕方ないでしょう、こんなバケモノが人の子に存在すると誰が予想出来ますでしょうか?」
「黙れ。発端が喚くな」
「ユニオンの正義が通じず、馬鹿のゴリ押し戦法に救われる世界ってどう思います?私は愚かだと思いますね!」
「ええと。でもさ?その、仮にだけどウェンがルニに勝てなかったら
…
」
「ええ。そうなればアムリタとの融合は確実ですね。そして恐らく此の方法が彼女達が目論んでいる物でしょう。何せ私を殺して仕舞えば、彼女は"破壊"の力を手に入れます。貴方の強度は"不死者"の能力とEM能力による"自己再生"で補っている様ですが、強度其の物が強力な訳では無い。とどのつまり、"破壊"の力であれば一発で殺せる、という事です」
"不死者"であるウェンは、死んでも身体の一部を代償として差し出すことで復活を遂げる事が可能である。そしてそれにより欠けた身体の一部は、EM能力の「自己再生」を運良く彼が授かっていた為に再生され、実質無限機関と化している
…
これが現在の
ウェン
アムリタ
という人間であった。
デストロイヤーは話を続ける。
「無論、貴方は復活するでしょうが
…
其れこそ貴方の"自己再生"のスピードより早く貴方を死へ追いやる事が出来、────理論的に貴方の身体に犠牲に出来る部位が無くなるまで壊し続ければ、貴方は"不死者"であれど
死ぬ
のですよ」
「
……
」
「ああ、そういえば。ルニさんのEM能力って"テレポート"でしたよね?」
レオンがふと思い出したかのように口を開く。テレポート。その名の通り、自由自在に何かしらを移動させることが可能な能力である。非常に便利だが、操作や肉体負担も大きいらしく、彼女は滅多に使用を試みないのだが。
「うん、確かにそうだけど
…
えっと?」
「もっと簡単にウェンを殺す方法があります。ウェンの"自己再生"はEM能力です。EM能力はクリスタルエネルギーを使用して発動しますから、クリスタルが存在する場所でしか使用出来ません。つまり
…
」
「成程、"テレポート"でその様な空間に移動させると。其の様にすれば確かに、アムリタの"自己再生"が発動する事を防ぎ、実質彼が壊れるまで破壊し続ければ良い
…
という訳ですか。流石は正義の味方。考える事が外道の其れですね」
「嫉妬は見苦しいですよ、デストロイヤー」
つまりだ。どちらにせよ言えるのは、そもそも"破壊"の力を彼女に手渡してしまえば起こり得るということである。
「だから
…
デストロイヤーを殺したらエデン大陸が危険に晒されるって言ったのか
…
」
「ええ。其れで、アムリタ。私を殺しますか?もれなく共倒れという結末に成るかと」
「
……………
チッ」
ウェンは斧の手持ち部分の先に繋がれたチェーンを力任せに引っ張る。斧はデストロイヤーの真横の壁から抜け、器用にもウェンの手元に収まった。
「
……
少しでも怪しい行動を取れば貴様は首から上と別れを告げる事になると思え」
「ええ。肝に銘じて起きますね」
「で?とりあえずデストロイヤーは監視対象として、救助隊総出で見張る
…
という結論でよろしいですか?決まったのなら私は早く帰りたいんですけど」
「良いんじゃないか
…
?
…
隊長達にも事情を話して協力してもらわないと
…
その、壁の事も
…
」
控えめに発言するアルバートなぞ他所に、デストロイヤーはニコニコと笑みを浮かべていた。
「──────其れでは、再びエデンに平和が訪れるまで
…
どうかよろしくお願いいたしますね?救助隊の皆さん?」
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