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平和を壊す械たち
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7話✧情械
✧スチル協力
めんま様
✧
鈍痛様
✧
ふかひれ。様
✧
北瓜様
✧
米2ろう様
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7
ルフレは早足で館へと向かっていた。
その背中を、バートリーが息を切らしながら懸命に追いかける。
館にたどり着くと、ルフレはまっすぐ2階へ上がり、例のコンクリートの部屋の扉を開いた。
冷気と共に、鼻をつく鉄臭い血の匂い。
何度来ても、慣れることのない異様な空間。
以前この真っ暗な部屋でシアノを探したとき、ほとんどの壁を手探りで調べた。だが、何も見つからなかった。
しかし今は違う。
「
……
外観と見比べたら、この部屋の奥にもう一室ないとおかしい
……
」
冴え切った思考が告げる。
ここに何かある。
「はぁ
……
はぁ
……
真っ暗な部屋ですね
……
」
そのとき、バートリーがようやくルフレに追いついた。
「何か、照らせるもの
……
」
「
…
!それなら
…
!」
小さく呟いたルフレに、バートリーは懐中電灯を差し出す。
「
……
」
ルフレは黙ってそれを受け取り、灯りを点けた。
闇に光が呑まれそうになりながらも、わずかな範囲だけが照らし出される。
床には乾いた血の痕跡がむらなく残っている。
物らしい物はない。扉も、窓も、何も。
「
……
何も無い
……
?」
だが、それはおかしい。
図面上では、この奥にはもう一室あるはずなのだ。
ルフレは部屋の最奥、扉があるはずの壁に近づいた。
手を当てて、触れてみる。
(
……
何も無い? そんなはず
……
)
不意に、また誰かの声が脳内に響いた。
『っはは! 壁を壊せばわかることだろう!!!』
軽快な笑い声と共に無茶苦茶なアドバイスをされる。
「
……
っはぁ
…
」
ため息を吐きながら、ルフレは振り向いた。
「
……
部屋の外に出ておいてください」
「えっ
……
わ、わかりました」
バートリーを部屋の外に出すと、ルフレは一歩後ろに下がり、剣を握り直す。
「
……
こういうのは、あなたの役目でしょう、まったく
……
」
そう呟き、息を吐く。
そして、力強く剣を振りかぶった。
ゴッ
――
!
鋭い音と共に、コンクリートの壁に亀裂が走る。
ギィィ
……
バタンッ!!
次の瞬間、両断された“扉だったもの”が重い音を立てて倒れた。
「
……
あった」
その奥に、隠されたもうひとつの部屋が姿を現す。
ルフレは剣を下げ、慎重に中へと足を踏み入れた。
そして、壁際を手探りでなぞると、すぐに照明のスイッチに指が触れた。
カチッ
チカチカと瞬いて照明がつく。
「
……
なんですか、これ
……
」
ルフレの目に飛び込んできたのは、常軌を逸した光景だった。
壁一面に、無造作に貼られた紙。
何百
……
いや、何千。
隙間なく、びっしりと埋め尽くされている。
家具と呼べるものは、錆びたベッド、机、椅子のみ。
殺風景で、どこか病室を思わせるような配置。
紙に目を凝らせば、そこに描かれているのは聞き覚えのある“かつての”地名たち。
みなが消えた場所の地図が貼られている。
別の壁には人の顔写真。
さらには、無惨な死体の写真までもが貼りつけられている。
その空間は、“記録”というにはあまりにも異常だった。
一言で言えば狂気。
けれど、こんなものに怖気づいている暇はない。
当初の目的
……
あの本を思い出し、ルフレは周囲を見渡した。
「
……
! あれか」
それは机の上に、ぽつんと置かれていた。
あまりにも簡単に見つかってしまったことに、どこか嫌な予感がした。
けれど今は、そんな違和感よりも急ぐことの方が大事だった。
ルフレは机に歩み寄り、迷わず本を開く。
「
……
やっぱり。僕らについて書かれている
……
」
それはまるで日記のような本だった。
茶色く変色した紙。虫に食われ欠けたページ。
どれだけの年月を過ごしていたのか。
そこには、錬成された順や、過去に戻った日時と場所、その過程で消えた者たちについても記されていた。
早くなる鼓動を抑えながらこれからのことが書いてあるであろうページをめくる。
だが
「
……
ドイツから戻ってきたその先が
……
破られてる
……
」
最後の部分だけがざつに引きちぎられていた。
あたかも、続きを読まれては困るかのように。
大きな手がかりを失いルフレは顔を顰めた。
けれど、この本に自分たちの存在が記録されている。
それだけで、希望だった。
「
……
けど、誰がこの本を
……
?」
初めは自分自身かと思った。
だがどうにも、筆跡が違う。
1文字1文字が不自然に孤立しており、まるで文章を書き慣れていない者が綴ったような字。
ふと顔を上げ、壁一面に貼られた無数の紙を見やる。
そこに踊っているのは鋭い筆記体
……
きっとこれは、ナーデルが記したものだ。
なら、この本の文字は誰のものだ?
その時、不意に背後から声がした。
「ルフレさん、見つかりましたか
……
?」
バートリーだった。首を傾げながら、こちらを見上げている。
ルフレはひとつ思い当たったことがあり、手にしていた本をそっと差し出した。
「この筆跡、見覚えは?」
突然見せられたそれに、バートリーは目を丸くして息を呑む。
「ぼ、僕の
……
に、そっくりです
……
。けど
……
そんな本、書いた覚えなんて、全く
……
」
その反応で、全てが繋がった気がした。
あの日、ナーデルが言った「またね」という言葉。
もし、彼がラートの記憶を元にこの本を書き残し、それを持ったナーデルが過去へ渡ったのだとしたら。
……
自分たちは、その本の記述どおりに“錬成”されたのだとしたら。
「
……
やっぱり、やり直せるかもしれない
……
」
誰も欠けることなく、今日を迎える世界が訪れるかもしれない。
ルフレは先程のバートリーの言葉を思い出す。
「
……
あなたに、協力すればいいんですね?」
「!っ
……
はい、」
バートリーは驚きながらも、すぐに頷き返した。
そして、ルフレはバートリーの目を見つめて、もう一度はっきりと頷く。
ルフレの瞳に、強い意志が宿っていた。
二人の間に、確かな「覚悟」が結ばれた瞬間だった。
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