kurotera
2025-01-02 09:59:32
73559文字
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たとかとはなし 下

2023年12月に発行した温泉スカウトパロディ本の再掲です。
書き手本人が見た幻覚で諸々をねつ造しています。
高濃度の幻覚話。




 とにかく人間は失せ物をする。
「『婆さんが作ってくれた手編みのマフラーをどこにやったか忘れた。首が寒くてかなわん』『犬が悪戯でぬいぐるみを隠しました。犬を叱ったものの隠した本人もどこにやったのか忘れてしまい、困っています。白くまのぬいぐるみで――』」
 不死鳥が届いた紙片を読み上げていく。その傍ら、くぁ、と欠伸をしながら弟狐が散歩で拾ったらしい白くまのぬいぐるみを抱きしめ、耳を傾けている。
……なあ、それじゃないか」
「とってもふかふかです。人間に返すには惜しいですが、洗ってから返してあげましょう」
 少しばかり泥のついたそれを撫でながら笑う弟狐を尻目に、届いた紙片を袂に入れる。懐から硝子瓶を出して眺めるも、その中が満たされるにはほど遠い。
「〝仙狸〟の道も一歩から、だよ」
「むう……
 兄狐の言葉に不死鳥が眉を下げる。大寒もようやく過ぎたがまだ春の気配は感じられない。
 ――と。
 ガタガタガタッ、とけたたましい音と共に突風が稲荷社の扉を鳴らした。その音に驚いた弟狐が尾を膨らませれば窓の隙間からすう、と紙片が滑り込んできたのである。
「おや」
 床に落ちたそれを兄狐が拾い上げる。
 いつものような質素な和紙ではなく、牡丹の花の透かしが入った上等な和紙で、広げれば達筆な字でこう書かれていた。
 ――酒を持ってこい。
 
 ざく、ざくと雪を踏む音を聞き、奥の院の主――三千院は外に出た。
――久しぶりだな」
 そこには、二人の鬼が立っていた。
 一人は朱色の長い髪を持つ二つ角の鬼。もう一人は一つ角、茜色の髪を帯で着飾っている。そして彼らの周りには、いくつかの霊魂が漂っていた。
「おう、邪魔するぜ」
 二つ角の鬼が身についた雪を払い、遠慮も無く小屋に上がり込もうとする。
「待て」
 三千院がそれを手で制止すれば、一つ角の鬼が怪訝な顔をさせた。
「それをどうにかしろ。一応は神域だぞ」
 三千院の指が、彼らに纏わり付いている霊魂を指す。二つ角の鬼は鬱陶しそうな表情で、口を開いた。
「こいつらが勝手についてきたんだよ。しつけえやつらだぜ」
「元はといえば己が原因だろう?」
 三千院に続いて出てきた雪女が苦々しく言えば、二つ角の鬼は舌打ちをし、すり寄ってきた霊魂を乱暴に掴んだ。
 手の中で悶えるそれを一息に呑み込み、舌舐めずりをする。
「酒がねえと美味くねぇな」
 さて今しがた、奥の院でこの冬最後の雪見をしていた三千院と雪女を訪ねてきたのは酒呑童子という鬼と、茨木童子という鬼である。彼らはかつての都、京の近く大江山を根城にする大鬼で、元は美男子と名高い人間であり多くの女に情を向けられていたのであるが、全てソデにした為に彼女たちの怨念を受け、鬼に化生したのだった。同じく茨木童子も女の情念に呪われ鬼となった元人間で、今は酒呑童子の舎弟として共に旅をしている。数百年経った今でも情念の執着心は凄まじく、二人につきまとっているのだがとうの本人にとっては最早、酒の肴程度のものでしかない。
 彼らが三千院と知り合ったのは遙か昔、各地を渡り歩いていた二人に意気投合し、一晩の宿として社に招き入れたのが、縁の始まりである。
 以来、節分という鬼にとっては厄介な季節である如月の頃、酒呑童子と茨木童子はこの山に訪れるのであった。
「相変わらず好かれているねえ」
 久しぶりに顔を合わせた雪女が皮肉を口にしつつ、酒瓶を持ち出す。
「かつて帝をも恐れさせた大江山の大鬼も、節分の豆には流石に裸足で逃げ出すか」
「はっ、たかが大豆にやられはしねえよ」 
 くつくつと笑いながらからかう三千院に、茨木童子が憮然とした顔で反論する。
 それに同意しながら酒呑童子が小屋に上がり込み、どかりとあぐらをかいた。
「こいつらも人間どももやかましくなるからな、鬱陶しいったらありゃしねえぜ」
 うんざりした表情をさせる酒呑童子の前に、雪女が皿を置いた。
「まあまあ、久しぶりなんだ。呑もうじゃないか」

 かたや山奥に隠居の身、かたや流浪の身だ。たった一年、されど一年。積もる話もある。それを肴にすれば酒が枯れるのもあっという間であった。
「なんだ、もう無いのか? 用意が悪いんじゃねえか」
「そう思うなら先に来ると知らせてこい」
 酒呑童子の小言を鼻で笑い、三千院が言い返す。ち、と酒呑童子が舌打ちをすれば、盃を持つ手が止まった。
「? どうしたんだい?」
 雪女の問いに答えず、ちらりと視線を動かす。
 ――刹那。
 酒呑童子の周囲を漂っていた霊魂が、小屋を飛び出し茂みへを襲いかかる。
「うわっ」
 小さく驚いた声と共にがさがさと茂みが揺れる。
「抹香臭え」
 酒呑童子が吐き捨てれば茨木童子が立ち上がり、外に出る。雪を踏み声がした茂みに向かえば、白い燐火が飛んできた。
「いきなり攻撃してくるだなんて……野蛮だね」
 茂みから顔を出してきたのは不死鳥と狐の兄弟だった。臆せず不満をぶつけてくる兄狐と、ええそうです、これだから鬼はと頷く弟狐、その隣で焦り顔の不死鳥に茨木童子は片眉を上げた。少なくとも去年は見かけなかった顔である。
「お前らが言うかそれ……
 呆れ顔で三千院も小屋から出てくる。半年前にここの山神を問答無用で襲ったのはどこのどいつだったか、とぼやけば三人は隠れていた茂みから出てきた。
「なんだこいつら」
 茨木童子が怪訝な顔で三千院に問う。
 さてどこから話したものかと煙管に火をつければ、ふらりと立ち上がり縁側へと出た酒呑童子がじっと、彼らを睨みつけた。その鋭い視線に弟狐が尾を膨らませる。不死鳥は酒呑童子を見返した後、口を開いた。
「もしかして、お前が大江山の鬼か?」
「そういうテメエはこの世じゃ見ねえツラをしてやがるな……姑獲鳥でも陰摩羅鬼でもねえ……イライラするツラだぜ」
「そう言われても困る……俺は不死鳥だ。由縁あって、この山のあるじに世話になっている」
「不死鳥だと?」
 さしもの酒呑童子も軽い驚きをもって声を上げる。見たことあるか、と三千院が問えば髪をがしりと掻いて唸った。
「いや、ねえな。随分前に不死鳥を捕まえたと領主に持っていった馬鹿は見たが」
「ああ、ありゃ傑作だった。先にお前が血を飲んで刀で斬られてみろって言われて、素直にその通りにしたんだったか」
 くつくつと笑い合う鬼たちに、兄狐が顔を顰める。
「それで、お前を食えば不老不死になれるって?」
 茨木童子が形の良い指で不死鳥を指せば、咄嗟に兄狐が不死鳥を庇うように前に出た。ふうん、と鬼は鼻を鳴らし、せせら笑う。
「俺を食うのか?」
「食うかよ。生憎、既に人じゃあなくなってるんでね」
 手をひらりとさせ、茨木童子が縁側に上がりどかりと胡座をかく。それで、雪女が口を挟んだ。
「お前たち、どうしてここに来たんだい? 最近は何やら忙しそうだけど」
「ああ、俺が酒を持ってこいと言ったんだ。こいつらがそろそろ来る頃合いだと思ったんでな」
 用意がいいだろ、と三千院が零せば三人は背負っていた酒瓶を縁側に置き始める。
「こんなに飲むのかい?」
「足りねえぐらいだ」
「御剣に話したら、何本か持たせてくれた。それから話を聞いてくるといい、と。今その意味が分かった」 
…………俺達に何を語れって?」
 置かれた酒瓶の銘を眺めながら、茨木童子が聞き返せば、不死鳥が二人の鬼に向き直り居住まいを正した。
「貴方たちが雨と共に現れる琵琶弾きの事を知っていると、大猫又殿に聞いたんだ」
「あん? 大猫又だァ?」
 久しく聞いていなかった旧知の名に、今度は酒呑童子が眉を寄せる番だった。
「雨の琵琶弾き……それって、お前が落ちてきた原因の?」
 雪女が首を傾げれば、不死鳥は事の次第――己がここに落ちてきた経緯を語る。なるほどな、と酒呑童子は思い当たったかのように目を細めた。
「あれか」
「覚えておられるか」
――さあ、どうだかな」
 ニヤリ、と意地悪く笑う酒呑童子に、呆れた様子で雪女がため息を吐く。落胆の色を見せた不死鳥と物怖じせずに冷ややかな目線を向ける狐たちを見かねて、それすら気にとめない酒呑童子を軽く睨んだ。
「意地悪はおよしよ、大人げない」
「話してやる義理もねえしな」
「全くだ。親切の安売りなんざ、鬼がすることじゃあないぜ」
 口を揃える鬼二人に、そうか……と不死鳥が項垂れる。鬼たちを睨みつけていた兄狐がやれやれと首を振り、不死鳥の肩に手を置いた。
「残念だね。でもこれ以上しつこく聞けば、宴も興ざめ、彼らの怒りに触れるかもしれない。ここは大人しく帰ろう。弟、すまないね……せっかく持ってきたものを持って帰らないといけないようだ」
「残念です。素敵なお話を聞けると思って、カラスの巣からとっておきのお酒をくすね……貰ってきたのに……
 狐の兄弟たちがわざとらしくため息を吐けば、鬼たちの手がぴたりと止まった。
「ところで稲荷たちよ、何を……貰ってきたんだ?」
「このあたりで一番の酒らしいよ。本殿の奥で見つけたのさ」
「きっと美味しいに違いありません、帰ったらオレ達で飲んでみましょう!」
…………それ、御剣が持っていっていいと言ったのか?」 
「あいつが許さなくてもオレが許すよ」
「ゆくゆくは兄者が山のあるじになるんですからね、山のものは兄者のものです」
「おい」
 好き勝手を言いながら帰ろうとする三匹を、低い声が呼び止める。なんですか、と弟狐が片眉を上げて立ち止まれば、苦い顔をさせた酒呑童子が三人を手招きした。

「それで? 琵琶だったか」
 酒を盃に満たし、縁側に広げられた絵巻を眺めながら酒呑童子が切り出す。ああ、と不死鳥が頷けばさてどういった奴だったかと遙か遠い記憶を辿っていく。
……あれは確か、帝への献上品になる筈だったモノだろ」
「はず、だった?」
「それを献上する筈だった一族が権力争いに巻き込まれたんだと。ある夜誅殺だと郎党が屋敷に押し入り、皆殺し……ご立派な琵琶もその屋敷から姿を消した」
「誰かが持っていったのでしょうか」
 弟狐の言葉に茨木童子が肩を竦める。
「屋敷を襲わせた奴は強盗に仕立て上げたかったんだろうな。琵琶の行方は誰も知らずってわけだ」
「なるほど。でも今の話だけだと、その琵琶と不死鳥をこちらに引きずり込んだ琵琶弾きが同じとは限らないだろ?」
 兄狐が問えば、まあ待てと酒呑童子が盃を呷る。
「夜襲があってから暫くして、都で怪異騒ぎが起こった。雨の日、琵琶の音と共に都の通りを彷徨う影……そいつに出会ったら取り込まれて二度と帰られない……人間も、妖怪もな」
「都の人間はその怪異を殺された一族の祟りだと噂した。実際、首謀者と見られていた一族が次々に出処の分からねえ急な病や事故で死んだり行方知れずになったんだから、あながち間違いじゃねえだろう」
「その怪異が、今も祟りを?」
「そういうことだ。それがこの巻物の言うとおり……百鬼夜行と化していてもおかしくはねえ。雨と共に人や妖怪の怨みつらみに引き寄せられ、それを取り込もうとする……只のそれよりずっとタチが悪いぜ」 
 酒呑童子の言葉に、不死鳥がごくりと喉を鳴らす。
「お、俺は誰も怨んだことはない」
「だろうな」
 焦ったような声色に三千院がくつくつと笑う。それで、どう見ると酒呑童子を促せば、知るか、と彼はひとつ欠伸をした。
「たまたまじゃねえの。上を見れば太陽みてーな鳥が天界からこちらを覗いてたんだ。てめえの身の上を嘆いた〝どれか〟がお前にちょっかいを出したとかよ。……ま、不運だと思って流すんだな」
 酒呑童子の言葉に不運、と不死鳥が呟きちらりと外を見る。今日は晴れていて、木の枝に縋った雪がきらきらと輝いていた。
「大鬼どの」
「ンだよ」
「その……彼らを救ってはやれるのだろうか?」
 救う? と茨木童子がぱちりと瞬きをする。酒呑童子はすっと目を細め、彼を見据えれば、不死鳥はびくりと肩を揺らした。
…………何を?」
「琵琶弾きを、だ。もし本当にそうならば、この絵巻の通りならば……そいつは、苦しいんじゃないか」
 発せられた言葉にしん、と空気が静まりかえった。不死鳥の言葉は簡潔であって、それが静寂の中に落とされた一滴の余韻のようである。さしもの狐の兄弟も、友人の言葉に呆れたか、奇妙なものを見るかのように不死鳥を見つめていた。
「ク……ハハハ……!」
 静寂を呵々大笑が破る。大鬼が笑うのは、何も酒に酔って愉快になったのでというわけではないのは明白だったが、しかし不死鳥は何か可笑しな事を言ったかと首を傾げるばかりである。茨木童子も肩を揺らし、盃から溢れた酒で手元を揺らしながら口を開いた。
「救う、だと! さすが天界の不死鳥サマは言うことが違うぜ!」
「お、おかしいのか」
「救ったってどうにもならねえよ。やめとけ、次は天から落ちて尻餅つくじゃあ済まねえだろうな!」 
…………
 笑い飛ばされ、眉を下げる不死鳥を雪女がじっと見つめる。そしてひとつ酒を飲み、静かに問いかけた。
「どうして、そうしたいんだい?」
 何故、と問われ不死鳥が顔を上げる。雪女の涼やかな眼差しが、真っ直ぐにこちらを見つめていた。
「どうして、って……苦しんでいるのだろう? それなら、助けが必要だ」
 酒呑童子がハ、と鼻で笑う。それ以上は何も言わなかったが、酒呑童子と茨木童子には不死鳥の考え方が相容れないと、表情が物語っていた。
「そう……
 しかし雪女は不死鳥の返答に納得したように頷き、それから微かに笑みを浮かべた。三千院はというと黙りこくったまま、酒をちびちびと飲んでは我関せずと遠くを眺めている。
 さて、と雪女がひとつ手を叩けば、妙な空気になりかけていた雰囲気が霧散した。
「もう暗くなる。……お前たち、そろそろお帰り。あの子が心配するよ」
 雪女の言葉通り、暗くなりかけている頃合いだった。
「あ、ああ、分かった。大鬼たちよ、話をしてくれて、感謝する」
「フン、酒の肴に喋っただけだ。てめぇの為じゃねえ」
「お前らが持ってきた酒は俺らが貰っておいてやる。ハハッ……あの木っ葉天狗のぶんはねーな」
 茨木童子の言葉に、なんと言い訳をすればいいのか不安になったが、返せとも言えない。元来た道へ戻る三人の背中を見送り、酒呑童子がため息を吐いた。
「ったく……天界の奴の考えてる事はさっぱり分かりゃしねえな」
「まったくだ」
 二人の言葉を咎めるでもなく、雪女は上機嫌に残った漬物を摘まんでいる。
「機嫌がいいな」
「そうかい?」
 三千院がからかえば、雪女が首を傾げる。ややあって、そうかもね、と肯定した。
「久しぶりにあんなにも真っ直ぐな子を見たものだから」
「ま、俺らにしちゃ傲慢にも見えるが……根っから純真なんだろう。そこの捻くれきった大酒飲みとは大違いだ」
「喧嘩なら買うぞ」
…………聞こえていたか」
 三千院が苦笑いを浮かべ、盃を干す。足早に夜になっていく外は、雪でほんのりと明るい。茨木童子が小屋の奥で、次の酒はどこだと呟いた。

 踏みゆく雪が、心なしか柔らかく感じた。
「ねえ、不死鳥」
 しばらく黙って歩いていた兄狐が、不死鳥に声をかける。どうした、と青い目でそちらを見やれば、彼の横顔は心なしか笑んでいる。
……君は、琵琶弾きを救いたいと言ったね」
「お前もおかしいと思うのか」
 不死鳥が声を落として問えば、そうだね、と兄狐は否定しなかった。
「そんなことを考えもしないから、オレ達は」
……そう、なのか」
 いよいよ道は暗くなり、弟狐が持っていた提灯に火が灯る。再び互いに黙ったまま歩いていると、次は不死鳥が口を開いた。
「ずっと考えていた」
……なにをですか?」
「ここに落ちてくる前、天界の池のふちで……地獄や、ここで苦しむ人々を眺めていた。どうして彼らはそうなるような罪を犯したのか、どうすれば彼らは……安んじる事が出来るのか。よく、考えていた。俺が地獄に降り立ち、この尾を垂らして一人でも引き上げればよいのか、それとも――
 それきり口を噤んでしまえば兄狐がそう、と頷く。弟狐は黙ったまま、二人を先導するように灯りを片手に歩いていた。
「不死鳥、君はその答えのひとつを得るために、ここに落ちる運命だったのかもしれないよ」
……そうだろうか」
 きっとそうだよ、ただの狐であるオレ達にはそれぐらいしか分からないけど。兄狐の言葉に曖昧に頷く。ゆらゆらと揺れる灯りが、闇深い山道を淡く照らしている。 
 ふと、不死鳥が歩みを止めた。それにつられて狐たちも歩みを止めれば、不死鳥はなあ、と切り出した。
「茨木童子が言っていた。……既に、人ではなくなっている、と。彼らは元は人間だったのか?」
「ああ、そうみたいだよ。なんでも……彼らに恋をした者の念が、彼らを鬼にしたとか」
「恋をした者の……念?」
 恋とは。と怪訝な顔をする不死鳥の顔を見て、兄狐がくすくすと笑う。
「この世でどうしようもないもののうちの、ひとつだよ」
 兄狐の言葉に首を傾げ、不死鳥は思案したがどこか雲を掴むような言葉であった。