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木蔦(キヅタ)
2021-02-28 21:52:06
8388文字
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閉所&暗所恐怖症のまんばの話【ちょぎくに】
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「話がある」
数日後、まんばが部屋に訪ねてくる。目は泳いでるし、体は強張ってるっぽい。
部屋に入れ、お茶を出したが、一向に手を付けず、話す気配もない。いつも生意気で竹を割ったようなサバサバした性格だが、こんな優柔不断な態度は珍しい。
「あの、本歌、」
辿々しく口を開く。ようやくか。
「その、」
そしてまた黙り込む。1分、2分
…
ため息を吐いた。
「蔵と池田屋の時のことかな」
仕方なく助け舟を出してやる。まんばは気まずそうだが、こくんと頷く。
「そ、そうだ、本歌は気づいたかもしれないが、俺は」
そこで言葉を切って、ぐっと黙り込む。
「閉所か暗所恐怖症なんだろ、もしくは両方」
まんばは目を丸くして長義を見つめる。図星らしい。そして苦虫を噛み潰したように肯定する。続けてポツリポツリと話し始めた。
「
……
俺は政府からの配布刀だったんだ」
刀剣男士のことが映画になったことがあった。それを記念して映画に出演する8振りを全本丸に配布することになった。この本丸はそれと同時期に設立されたため、当然この本丸にも配布された。
「しかし、主が俺だけ受け取り忘れて
…
」
配布された刀は受取箱に届く。他の刀達はそこから取り出されたのに、まんばだけは忘れられていた。
受取箱の保管期間を過ぎれば、まんばは廃棄されることになる。毎日毎日不安と闘いながら、開けてくれる日を待った。
受取箱の中は暗く、じっとりとしていて、冷たい。換気的な意味で空気も澱んでいる。
狭くて圧迫感もあり、そのうち壁がまんばを押し潰すために迫ってくるのではないかと恐怖することもあった。
結果的にまんばは受取期限ギリギリに気付いてもらえて、事なきを得た。審神者に顕現させられ、古参の刀として大事にしてもらえている。受取箱に入れたままになっていたのはわざとではなかったらしい。
しかしまんばにはトラウマが残った。顕現してから狭く暗い所にいるとあの時を思い出し、体が硬直するようになった。怖いという感情が占め、平常心でいられない。ここはもう受取箱の中ではない、もう大丈夫だ、そう自分に言い聞かせて、なんとかやってきた。
「
……
別に狭いところも、暗いところも、今は平気だ、だけど不安だったり、気が昂ってたりすると暴走する」
まんばが暗い顔でそう言う。
蔵の時は誰かが間違えて施錠したらしく、閉じ込められ、助けが来ないかもという不安から。そして池田屋は暗闇でどこから敵が襲ってくるかわからない中、気が昂っていたせいで。
「で?なぜわざわざここに?口止めに来たのか?」
長義が不機嫌そうに言うと、まんばはボッと顔を赤く染めた。
「?」
「
……
しい」
「は?」
「克服するのを手伝って欲しい
……
!」
「はぁ?」
犬猿の仲の長義に何を言い出すのか。協力を求める相手を間違えている。
「蔵の時も、池田屋の時も、錯乱してたのに、本歌にだ、
……
抱き、抱きしめられただけで、落ち着いたから、だから本歌ならなんとかできるんじゃないかって
……
思ったんだ
…
!」
まんばが赤くなりながらも絞り出すように言う。
「待て、なんで俺がお前なんかのために
……
!」
断ろうとするが、いつになくしおらしいまんばの上目遣いに言葉を飲み込む。
「
……
まあ、少しなら、いい、かな」
そんなことを言ってしまった。本当か!?などとまんばが喜んでいる。
「じゃあ早速、そこの押し入れに入れ」
「え
…
!?今からか
…
!?」
「お前のためにあまり時間は割きたくない。今都合がいいからいいだろ」
まんばがおそるおそる押し入れを開ける。布団が入っていたスペースがぽっかり空いてる。
まんばがそこに乗り上げた。長義もまんばを奥に追いやり一緒に入る。そして閉めた。
「ひっ」
まんばが見る見るうちに真っ青になる。カタカタ指先が震え、ぎゅっと長義の服を掴む。目は今にも零れそうなくらい涙が溜まっている。
長義は吸い寄せられるようにまんばの頬に手を掛ける。くいっと長義の方を向かせた。ちゅっと目尻の涙を吸い取る。
動揺で焦点が合ってなかったまんばが、長義を捉える。視線が絡み合った。
そして、そうするのが自然かのようにキスをした。
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