さもゆ
2024-12-06 15:52:46
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【ザプレオ】ツイログ

全て付き合ってないザプレオです。

2020.12.27 たまごのお粥pixiv投稿作品



ジャンキー




 血を流して戦うのが好きだ。
 皮膚を破り、その際生まれる痛みなんかはもう慣れてしまってつまらないが、つまらないからその上を目指せる。指の先や手のひらなどはどこもかしこも傷だらけ、皮膚は硬く変形してしまっている箇所もある。そんな血刃を生み出す手は、その時、確かな痛みも同時に生み出し、そして慣れたそれに律儀に身体中を沸騰させる。
 まだいける、と思うらしい。
 全然痛くない、とも。
 別に痛みが好きなわけじゃない。ただ、戦闘中、本当にどうしてかジッポの針で傷つく以上の痛みを欲している。沸騰した血が外に出たいと騒ぎ出す。ザップの身体を巡る血は大体にしてうるさかった。轟々とがなり立て、皮膚の下、管の中でその存在を主張し、つまらないと喚くのだ。
 痛みがないのに生きているのか?
 肌を裂き、血を流し、ギリギリの生死の境目に立って、ようやく生きていることを実感できるのに?
 痛みがないと。
 きっと脳の思惑のほかで、そういうことを考えている。
 ザップは自分の血を流して戦うのが好きだ。



「だからお前のこと嫌いなんかもしれねーわ」
 かったるくなってそう言うと、血の網で受け止められたお間抜けな後輩レオナルド少年はは? と眉をひそめた。
「えっ、なに、なんの話っすか?」
 なんでも見通す変態眼球を持っているくせにそんなことも分かんねーのか、と更に面倒くさくなって、素早く血網を解いて戻しやる。するとわっわっうわっと情けない声を上げて後輩は地面に落ちた。せっかく助けてくれたんなら、最後まで面倒見てくださいよ! 喚かれた内容にげんなりする。「自己責任だろ」便利な言葉だと思う。思うけど、果たして自分がこの後輩のお守りに就いているのも自己責任なんだろうか。それはちょっと、いやかなり言いがかりだ。だって自分は守りたくて守っているわけではない。
 もともと面白くない気持ちになっているザップの前で、よろよろ立ち上がり砂埃を叩くレオナルドが、それでザップさん、と困ったように見上げてくる。
「なんの話っすか。さすがに脈絡もなく嫌いかもしれんとか言われるの、結構傷つくんすけど」
「あ? あー……」すっかり全部口に出している気になっていたので、一拍遅れてそうではなかったのだと思い知り、でもやはり面倒だったので葉巻を取り出した。先を切り、火をつける。口にくわえる。喋らなくて済むようになる。そりゃそうか、と思った。ついさっき吹っ飛ばされてそれを捕まえた自分たちが、会話をしていたわけがなかったのだ。嫌いな理由。煙を吐き出す。
「お前さー……
 このちんくしゃな後輩を守る役になってからというもの、あまり戦闘に出れていない気がする。
 気がするどころではない、実際そうに違いない。
 非戦闘員の貴重な目を持つ一般人を、おいそれと前線に出せはしない。そしてなぜか、なぜかも何もお守り役の自分も、こうしてそれに伴っている。
 つまらない。
 暴れ足りない。
「そりゃー……刺される回数も増えるわけだわ……
 今月はまだ半ばだが、女には既に三回刺されていた。
「な、なんですか?」
 これまた脈絡のないザップのぼやきに、糸目の間をしわしわ寄せている。その上にかかる暗い髪は今日も元気に陰毛じみていて、ザップはなんとはなしに手を伸ばした。頭を掴む。ぎゃっ、と悲鳴を上げられる。
「ざ、ザップさん?」
 どうしたもんか。
 もうあまり痛みを感じない手のひらは、ごわついて硬い、癖の強い髪に触れると、皮膚が突っ張った。傷やささくれに絡んで刺してくる。ひどい手触りだ、と思った。普段触っている女の髪とは異次元的に異なる最低な手触り。
 痛い。
 手のひらの中を巡る血液が、感じた痛みに少しばかり喜んでいる。
 馬鹿かと思った。自分の身体だったが。
「やっぱ……」なんだか物凄く気怠くなって、葉巻を上下させて言った。「俺お前のこと嫌いだわ……
 エッなんで!? わけを知らないレオナルドが叫ぶ。非常に面倒だったので頭を押さえ込んで黙らせた。皮膚がちくちく、痛い。