さもゆ
2024-12-06 15:52:46
10482文字
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【ザプレオ】ツイログ

全て付き合ってないザプレオです。

2020.12.27 たまごのお粥pixiv投稿作品


ワンドロワンライ

溶け込む




 自分だけは彼を見失わないと思っていた。
 慢心していた。くそったれ神々の義眼はなんでも見通して、くそったれだと思っていたはずなのに自分が一番頼っていたのだ。呆れる。これじゃあ先輩にいくら使えないと罵られても言い返せない。
 その先輩が視界からあっけなく消えてしまったんだから、本当に言い返すことなく終わってしまう。彼が言葉を放ってくれなければ何も言えないんだから!
「ザップ……さん、ザップさん!」
 呼びかけは、しかし、いつもよりまとわりついてくる濃霧に吸い込まれて消えた。
 ずっと発動し続けている義眼がひっきりなしに視界をさらい、霧とは違う白色を見分けようとしている。拡大と縮小を繰り返し、選別し、隠されているものを暴こうと躍起になる。どこを見ても霧、霧、霧。白、白、白。レオナルドが見たい色はその白じゃない。もっと薄汚れていて、もっと軽薄で、そして何より鮮明な、こんな濃霧に溶け込む色じゃないのに──。
「ザップさん……ッ!」
 瞼の隙間から一瞬火花が散り、限界値を超えた義眼が煙を噴き出した。
 その噴き出した新たな白色の合間を縫い、決して溶け込まない褐色の指が伸ばされる。
 ばちん!
 両目に手が張りついた。
「うぎゃあ!」
「ッかー! 死ぬかと思ったわ!!」
「ザッ……! ザップさん、」
 後ろに熱量。火傷をしかけた目を覆う手にぐぐぐと力を入れ、霧に溶け込んでいたはずの、どうやら消えていた間に死ぬ思いをしたらしい先輩がそのままレオナルドを引っ張り込んだ。背中が熱に触れたと思ったのに、目を覆う手だけは冷たく、遅れてやってきた痛みが自覚するとともに引いていく。
「ザップさん、ど、どこに行ってたんすか」
「どこもここもねェよ、お前は何なっさけねー声で俺を呼んでんだ」
「な……! だ、だって、アンタ急に消えるし! き、霧に溶け込んだかと、」
「ハッ! 霧に溶け込んだ~?」ガキの幼稚な夢みたいなこと言っちゃってまあ、と馬鹿にしたように笑っているのは確かにレオナルドの先輩で、一気に体の力が抜け息を吐いた。良かった。本当に。
 あの背中を見失った時、あんまりにも不安になった。自分は義眼がなければあの背中について行けない、なのに、それはレオナルドの唯一の立ち方なのに、急に足場が崩れ去ったかと思った。
 今自分は、後ろの先輩にもたれながら、ちゃんと二本の足で立てている。
「見失ったかと……本当に、おれ……
 安堵と僅かばかりの恐れを乗せた呟きに、先輩は一瞬からかう気配をしたものの、やがて大仰に溜め息を吐いてレオナルドの背中を叩いた。目から手が離れ、一人で立たせられる。
「お前が見失っても、」
 振り返ると、しょーがなさそうに肩を竦める、霧に溶け込まない白い服と髪、褐色の肌を持つ先輩が笑っていた。
「俺が見つけてやる。……おめー目立つからな。……カッコ的に」
 どっちが、とレオナルドは思って、見つけるのは自分の仕事なのにとも思って、でも、きっと。
 この人は必ず、出会い頭に顔面を踏んづけてでも自分を見つけてくれるのだろう。
……でも、今度は俺の目の届くとこに消えてくださいよ」
「こっちの台詞だわボケ。おら行くぞ、まだ任務途中だ」
 そう言ってさっさと走り出す先輩の背中を、霧に溶け込み、レオナルドの目には鮮明に映るそれを、ハイと声を上げて追いかける。
 彼は溶け込まない。

 そう思っているのがレオナルドだけなんて、そんなことは、ないのだけれど。
 ザップはニヤリと、必死についてくる後ろの後輩を満足そうに笑いあげた。