りゅー
2022-02-20 22:17:08
22526文字
Public 二次創作SS
 

【OVERЯOID二次創作SS】OVER-LOGS

自主企画のSS集(になっていく予定)です。1P:目次、2P:自主企画趣旨、3P~:本文


---logs:06-

 ぺら、と音を立てて捲られるカード。人類軍は『魔道師』、アンドロイド軍は『獣』だ。

「何故? コピーできるのはさっき相手が使った『愚者』のみなのに、ここで『獣』を使うなんて」

 バトル2に展開されたカードに対し、少女は不服な声をあげる。それに対して、カードを捲って見せた男は小さく肩を竦めながら勝ち星を人類軍へと動かしている。

「では便宜上、我々が『魔道師』の効果を適用するカードを選びましょう。どれになさいますか?」
「どれを選んだところで同じでしょう? 真ん中のカードにして」

 再び小さな音を立ててカードが表にされる。描いてあったのは12の数字。

「ちょっと待って。偶然とはいえ、こんなの勝負にならないわ」
「選ばれたものは仕方がありません。それに、ここに"戦略はない"。さあ、続けましょう」

 有無を言わさず男は次のバトルの対戦カードを開いた。人類軍は『内通者』、アンドロイド軍は『弾丸』。

「本当に操作してないんでしょうね? まるで計らったかのように内通者が出てくるなんて都合が良すぎるわ。それにアンドロイド軍は先攻なのに、効果が0になる『弾丸』を出す理由がない」
「そうでしょうか。理論はなくとも理由はあるのですよ」

 勝ち星がまた一つ、人類軍につけられる。人類軍とアンドロイド軍は3対0。

「たった1%にも満たなくとも、誰しもがミスを犯す可能性がある。人類しかり、アンドロイドしかり、です。たとえそれが超越者であろうとも。そしてそのわずかな可能性に賭けて、一発逆転の奇想天外な計画をねじ込むこともまた、ごくわずかながら可能性として存在してしまうのです」
「解からないわ」

 「解かり合えると?」

 異形の頭が少女の方を向く。そこに表情らしきものは……いや、顔と呼べるものはない、と人類ならば言うだろう。
 少女は少しだけ悩むふりをするため視線を彷徨わせると、蜘蛛糸のごとく張り巡らされた糸を一本手繰り寄せ、妖艶に指を絡ませた。
 答えなど最初からNOで決まっている。彼女はこの男とさえ解かり合えることはないのだ。

 「こういうの、なんと言ったかしら。……嗚呼、そう。言葉の綾、というのだったかしらね?」
 「本来はその糸のように言葉を技巧的に飾る表現方法をそのように言うそうですが。まあいいでしょう」
 「『内通者』の効果ね。当然、見えているのだから『超越者』を選ぶけれど」
 「構いませんよ。人類軍のカードは伏せたまま一枚移動しましょう」
 「ねえ、やっぱりアンドロイド軍に勝ち目はないと思うわ」
 「続けますよ」

 少女の予想した通り、その後も大した逆転の目はなくアンドロイド軍は大敗した。並べられたカードの盤面に、退屈そうな溜息が降ってくる。

 「ほらやっぱり」
 「その通りでしたね」
 「これに何の意味があるっていうの?」
 「それを考えるためのお時間です」

 男は執事らしい手つきでカップに紅茶を注ぐ。少女は相変わらず糸を弄んだまま、他の空いた二つの手でカップを受け取り、更に別の手で伏せられたカードを捲る。

「『博士』。盤上になくてデメリットが強いのは人類軍でしょうけれど、今回は人類軍の圧勝だった」
「カードはすべて伏せたまま、ランダムに対戦カードを配置。そのまま対戦カードを見守るだけ、ですからね。我々に干渉の余地はなく、こちらはただの観測者です」
「意味があるとは思えないわ」
「意味がない行動の学習、と思っていただければよろしいのです」

 人間の手を模した両手で男はカードを再び集め、盤面に伏せて配り始める。第二戦目、ということらしい。

 「愚かな思考など理解できない」
 「計算をするコンピューターは、理屈・理論の通っていない行動を計算し得ない。可能性が0%のものは思考に値せず、それ故にその0%が発生したときにバグを起こす。これこそが、相手が望む奇跡とやらなのですよ」
 「知ればいいのね。気は進まないけれど」
 「始めましょう」

 人類軍のカードは『獣』。対するアンドロイド軍は『内通者』。

 「ちょっと」
 「思考されてください」
 「……単純に数字勝負に勝つ可能性に打って出た、くらいしか思いつかないわ」
 「よろしい。『内通者』の効果は伏せたままで」

 『兵団』対『偶像』。『魔道師』対『歌姫』。人類軍2勝、アンドロイド軍1勝で迎えたバトル4。先ほどの『魔道師』の効果でアンドロイド軍の最後の手札は『弾丸』であることが分かっている。
 そこまで進行を進めて、男は手を止めた。

 「今はまだ観測者である我々が介在する時も、もう間もなくです」
 「あなたはどうしたいの?」
 「マスターの御心のままに」
 「そう」

 少女と男は同時にカードを表へ返した。

 『無垢』対『超越者』。

 少女は無邪気に笑う。
 これまでならここで終わっていた戦い。けれどこれから、そうではなくなる。その兆し足る異形の少女は、一体何を望んでいるのか。

 すべては観測されている。すべては監視されている。
 人類もアンドロイドもまだ知ることはない。戦いが始まる前から、もう始まっていたのだと。


 第三の観測者が戦いの盤上に降り立つ日が、迫っていた。





【1戦目】
BATTLE1 ★6愚者    10兵団
BATTLE2 ★2魔道師   9獣    →獣は愚者をコピー。魔道師により超越者が公開
BATTLE3 ★7内通者   13弾丸   →超越者が人類軍へ(すべて伏せた為、不明のカードがアンドロイド軍へ)
BATTLE4 ★5偶像    3創造者
BATTLE5  1無垢    11戦士★  →戦士の勝利により歌姫と交代
BATTLE6 ★12超越者   11戦士

伏せ:4博士

勝者:人類軍


【2戦目】
BATTLE1 ★9獣     7内通者
BATTLE2 ★10兵団    5偶像
BATTLE3  2魔道師   8歌姫★ →弾丸オープン
BATTLE4 ★1無垢    12超越者

残り手札  6愚者    11戦士
      3創造者   13弾丸
 
伏せ:4博士

勝者:人類軍

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