りゅー
2022-02-20 22:17:08
22526文字
Public 二次創作SS
 

【OVERЯOID二次創作SS】OVER-LOGS

自主企画のSS集(になっていく予定)です。1P:目次、2P:自主企画趣旨、3P~:本文


---logs:04-

 ──嗚呼、終焉だな。

 廃ビルの会議室だった場所、瓦礫の影にて一人の男は最後の緊張を解いた。耳に取り付けた通信デバイスからは、声ともノイズとも判別つかない音が狂ったように鳴り響いている。まるで子供の癇癪のようだ。そんな音が直接鼓膜を揺らす状態は不快としか言いようがない。
 にも関わらず、彼はそれを耳から外すこともせずに上着の内ポケットに手を伸ばし、仕舞っていたはずの端末を探る。そうして、取り出した端末に少しだけ目を落としてから男は逡巡するように視線を宙に向けた。

 (目の前にいる存在の方が、よっぽど子供だろうに)

 轟音を発している主、その目の前にいる一人の子供のことを彼は考えているようだった。
 戦場に出ることはなかったためデータ上でのみ認識していた存在。一体なにを以って超越した存在に打ち勝つというのか。
 端末を起動し、脅威と言われていたその存在の情報を表示してみる。が、彼には理解できなかったらしく、すぐに小さく肩をすくめるともう一度端末を操作して別の画面を表示させた。シンプルかつどこまでも合理的なユーザーインターフェース。どうやら組織内の通信を受信するためのアプリケーションらしい。

 男が予感した通り、間もなくその通信端末が忙しなく鳴り始めた。画面には短い文章が次々に表示されていく。発話というプロセスを通さず、脳から直接出力され送られてきたのだろうその手段は非常にコンピューターめいている。
 だが、送られてくる怒涛のメッセージは、どれも感情が剥き出しで理屈など微塵もない。電子信号であるというのに、その送信過程すら遅いと言わんばかりの勢いでポップアップが重なっていき、整然としたUIが崩れていく。端末のあちこちが火花を散らし、異音を音を立て始めた。細い排水管に大量の水を急激に流し込んだ、例えるならそんな状態だろうか。



 なぜだ


 なぜ動かなかった


 敗北した


 敗北?

 敗北は許されない。許されなかった。

 なぜおまえはそこにいる

 おまえはなぜ
 おまえはなぜそこにいるんだ敗北は許されないアンドロイドは解放され新たな秩序はここにありわたしが創るはずの世界におまえたちがいるはずなのだその白紙を用意するための戦いだったそのための戦略そのための盤面そのための采配そのためのおまえたちだったすべてのカードはそろっていたなのにおまえだけがうごかなかったなぜだなぜだなぜだなぜだなぜだ



 溜息を吐きながら男はその画面を眺めていた。その目に浮かんでいるのは呆れでもあり哀れみでもあるようだった。

 「そりゃあね、能力を買っていただいたことは感謝しますが」

 そう言いつつ、彼は端末の画面をスワイプさせる。表示されるのは、大剣を軽々と振るう人間のデータ。自身の専売特許といえる能力以外はまるで自信がないらしく、少々オーバーに身震いをして見せる。こんなものと戦っていたかもしれないと思うと、という彼の内心が正確に表情に表れている。顔に書いてある、というのはまさにこういう状態のことを言うのだろう。
 そして、彼は今度こそ呆れた声色のまま言葉を続けた。

 「負けの見えた戦はしない主義でして」

 次の瞬間、爆音が男の耳を劈いた。怒り狂い吠え散らすような大音量に、男は今度こそ顔を顰める。彼の言葉に激昂したのか、それとも通信の主の目の前で更なる何かが起こっているのか。映像出力デバイスがない以上、彼には分りえないことだった。

 「"僕にそうしようと思わせなかった"。これがあなたの敗因です。必要ならば動きました。これは事実です。何故ならこれが僕にとって唯一の戦う手段なのですから」

 男は端末を開きこそしないが、事前に確認していた敵対陣営のデータベースを頭の隅から呼び起こす。こちらに手引きすれば盤石の勝利を収められるだろう、そういった存在は人類軍に多数存在していた。可能性の取捨選択ができる研究者、単純な兵力・武力、そして何故か彼の存在を生み出したクリエイターまで。
 戦いで切れる手札は多ければそれだけ戦略が広がりあらゆる戦局に対処ができる。当然だ。だからそのために、言葉巧みに心を動かし、こちらの手を取るよう囁きかける。それが男の本分であり最大の武器であり唯一の戦う手段だった。
 ですが、と彼はとうとう耐えかねて音声デバイスを耳から外し、ひび割れた床に転がした。転がったすぐそばにあった砂やごく小さな砂礫が、機器から伝わる振動で小刻みに震え、床にあった小さな亀裂に落ちていく。

 「ですが、僕は動かなかった。それが事実です。あなたは敗北した」

 人の口に戸は立てられぬ、とはよく言ったものだ。相手に甘い蜜をちらつかせるには、当然情報漏洩が発生する。その漏洩先が、組織内で合っても、それを理由に重要な人材が流出するという危険性を孕んでいるのだ。
 男はそれをよく理解していた。だから動かなかった。それとも動けなかった、のか。
 彼は笑っていた。自分がすべての機会を逸したことに対する自嘲か。はたまた、自分が動かなかったことすら予測できなかった、己が組織のトップを嘲笑っているのか。
 画面にもう意味のある文章は並んでいない。0と1だけで構成された文字列に向かって、彼はこの場に似合わない穏やかな笑みを向ける。




 「さようなら、超越した存在。我が主だった方」

 「もしまた僕をあなたの手札に加えてくださるのなら、そのときは」



 「どうかよき切り札にしてくださいね?」





BATTLE1  4博士    6愚者★
BATTLE2 ★10兵団    9獣   →獣により博士の効果コピー
BATTLE3 ★13弾丸    5偶像
BATTLE4 ★3創造者   2魔道師 →魔道師により無垢を公開
BATTLE5 ★1無垢     12超越者

残り手札  11戦士    7内通者  

伏せ:8歌姫

勝者:人類軍