百夜通い、ならず

pixiv再掲
kbnz馴れ初め編。
100日自分のところに通い続けることができたら、恋人になりましょう。というネさんに、キさんが頑張る話です。
日付がぽんぽん飛ぶので読みづらかったらすみません。映画「500日の○マー」みたいなのを意識して書きました。


100日目

 ネズは夜も更けるスパイクタウンの安宿で、酒瓶を一本空にしていた。床板が軋み、ベッドもパイプの簡素なこの宿を、実はネズは気に入っている。『あの男』あたりが見たら思わず顔を顰めるこの宿の作りは、ネズにとっては高級ホテルくらいマシな場所だ。
 二本目のビールの栓を開けて、口をつける。飲み損ねた液体がたらりと顎を伝う。
 泡も未熟な、スパイクタウンでもよく知られる薄味のビール。
 スマホロトムが鳴った。『あの男』からの着信。
『ネズ…………! 何してる?』
……物好きですね、おまえも。別に、何も」
 この男はよく通話する時に、ネズの顔が見たいからとテレビ通話にしてくる。褐色の指が画面に触れて、ネズも相手の顔がようやく見えた。少し笑う。
(埃まみれじゃねえですか)
『じゃあ今そっち行くから!』
「来るなって言っても来る気でしょう」
『行く! 間に合うだろ⁈』
……それはおまえ次第ですけどね。スパイクタウンの、ホテルにいます。……気をつけて」
 まだ何か言いたそうな相手の顔を遮るように、通話を切った。
 もうすぐ、あと十分もしない内にアーマーガアの羽ばたきが聞こえてくるだろう。