botanin5
2024-11-14 03:10:59
14175文字
Public 薬さに♀(小説)
 

雨のち浮かれ気分

ハッピーエンド
突然、浮気するようになった薬研のお話
・薬研が他の女性を口説く描写があります
・名前の無い女性モブがちょいちょいしゃべります






薬研の部屋の障子を勢いよく閉めて、廊下を駆け初期刀である加州の元へと向かう。恋人になってから、私の私室と薬研の部屋は隣同士になっていた。つまり、恋人である私がいる隣で堂々と女の人といちゃつくのだ。ほんと信じられない。それによって、薬研が浮気する度に駆け込むのは加州の部屋が常となっていた。

「かぁしゅうううううう」
「びっくりした。なに、あいつまた女連れ込んでたの?」
「見たこと無い人きてた!また新しい店開拓したんだぁぁ!うっひっく」
「あーほらほら、泣かないで主。ほんと何考えてんだろねあいつ。主のことこんなに泣かせてばっかりで、ちょっとむかつく」
「私はかなりむかつく!!!!」

涙でずるずるになった顔を、ティッシュで拭いてくれる。加州はいつも優しい。

「もう別れたらいいじゃん。俺は主が頼ってくれるのが嬉しいから何も言わないでいたけどさ。やっぱ傷ついてるとこ見てると可哀そうだなって思うし」
「だめだよ!!別れたら、本当に違う女の人のとこ行っちゃう!!私は、薬研の事好きだもん
「もうほぼ他の女のとこ行ってるようなもんでしょ」
でもキスしてないって言ってたし別れるなんて言って、隣の部屋で女の人抱かれたりなんかしたら私死んじゃう
「いや別れたら部屋変えればいいじゃん」

そういうことじゃないんだよぉぉと加州の背中に顔を埋める。
ダメな女の自覚はある。付き合っているのだから、もっと堂々と薬研に対して怒るべきなのだ。浮気したら別れると強く出るべきなのだ。でも、別れを切りだして「あぁ分かった。今までありがとな」とすんなり受け入れられてしまったらと思うと、恐怖で言葉がひっこむ。女の人を連れ込むようになってしまったというだけで、相変わらず私には優しいし、本丸のみんなにも優しいし、仕事ができる頼れる薬研のままなのだ。普段は、いつもの薬研なのだ。

「なんにせよ主がちゃんと怒った方がいいと思うけどね、俺は。外野が言っても聞かないだろうし。まぁ、内番も出陣もちゃんとしてるし、近侍の仕事もこなしてるし問題なのは女を連れ込むってとこだけか。でもさ、ただの仕事仲間ならまだしも、恋人って条件ではそこが一番の問題点じゃない?」
……。いや、私の心が狭いだけなのかもしれない。薬研とお付き合いできてるだけでも奇跡だし、これ以上束縛するようなことしちゃだめだよ。もっと余裕ある女にならなきゃ薬研もきっと、そういう人が好きなんだ
「どーだか」

加州の背中におでこを預けてぶつぶつ自分に言い聞かせていると、前触れなくがらりと障子が開いた。お迎えきたよ、と加州に促されて障子の方をみれば、薬研がいる。またしてもじわじわと涙がこぼれてきて、立ち上がって薬研の元に飛び込んだ。あぁやっぱり、余裕ある女になるなんて無理だ。

「おっと、なんだ大将。機嫌直ったのか」
「薬研のばか!!明日の演練用の編成組むから、手伝って」
「ん。分かった。」

優しく頭を撫でてくれる手は、さっきまであの女の人を撫でていた手と同じだ。じくじくと胸が痛む。涙を拭いて、薬研の服を引いて執務室へ行こうと促す。薬研は加州に「大将が邪魔したな」と声をかけると、障子を閉めて私の手を引いて歩き出した。この手が、私にだけ向けられればいいのに。浮気しないでと伝えてみようか。ぎゅっと繋ぐ手に力をこめると、薬研はどうした?と優しい顔でこちらを見る。この手を自分から手放すことになるのが怖い。やっぱり何も言えなくて、黙って廊下を進むしかなかった。






はぁ。毎回あんな怖い顔で迎えに来るなら、主のこと泣かせなきゃいいのに」