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Hizuki
2024-11-02 22:05:48
11808文字
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あんスタ[零薫他]
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あんスタ過去ログまとめ[零薫・零敬]
【あんスタ】零薫・零敬。ついったに画像のみで上げたSSのテキスト版まとめ。
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『悪あがきを少々』(零薫)
今日の仕事を終わらせ、寮に戻ろうとする足はいつもより重く感じられた。
回りくどいことをした、と自分でも思う。世間の雰囲気に乗っかって零くんにチョコレートを用意したまではよかった。だけど、どんな顔をして渡せばいいのか分からなくて、結局彼の鞄の中にこっそり忍ばせるくらいしかできなかった。
俺にチョコレートを渡しに来てくれていた子達も、こうやって色々悩んでくれていたのかな、なんて昔に思いを馳せていると、ポケットに入れていたスマートフォンがメッセージの受信を知らせる。送り主は今の俺を悩ませている張本人の零くんで。開いてみれば何の文章もなく、ただ一枚の写真が貼られているだけ。
「なっ!?」
写っていた見覚えしかない紙袋と小さな箱に足を止め、外だというのに思わず声が漏れた。驚きのあまりスマートフォンを手から落としそうになったのをギリギリで止め、ふぅと小さく息を吐いたのも束の間。今度は通話がかかってきて、一人慌てていると、持っていたところが悪かったのか、そのまま拒否してしまった。俺がかけ直そうとするより早く、画面は同じ人物からの着信を知らせた。慌てて応答ボタンを押して耳に当てれば、しくしくとわざとらしい泣き声が聞こえる。
『酷いのう薫くん
…
我輩からの着信をそのまま切るとは
…
』
「違っ
…
!持ってたところが悪くて切っちゃっただけ!」
ほんとだって、と慌てて付け加えれば、泣き声は次第に笑い声へと変わっていく。普段の調子に戻ったところで、零くんは一度声を切った。何とか自分の方も落ち着かせて、止めていた足を進める。
『まぁ、こうしてちゃんと出てくれたからよいのじゃが』
「
…
えっと、何か用事?」
『うむ、薫くんに確認したいことがあってのう』
何か余計なことをしでかしてしまう前に自分の部屋に戻りたくなった。重い足を動かして、スピードを上げながら零くんの声に耳を傾ける。
『我輩の鞄の中に入っておったんじゃが、薫くんの仕業じゃろ?』
寮の玄関の取っ手を掴んだ瞬間、聞こえてきた言葉にその場で固まってしまった。何を、と言われなくても、指し示すものは一つしかない。そのためにわざわざ写真を送ってきているのだから。
「何、の話
…
?」
『これこれ、とぼけたって無駄じゃよ。薫くん以外の誰が今日の我輩の鞄に物を入れられるんじゃ?』
ごまかそうとしても、心当たりがある以上どうしても反応には不自然さが滲み出る。零くんの言う通り、今日は朝からずっと一緒だった。個人で受けた仕事の打ち合わせがあるからと夕方に別れて今に至る。窘めて諭すように続ける零くんに、俺は観念して大きな息を吐いた。
「はぁ
…
そうです俺です」
『くくく、あの羽風薫が随分可愛いことをするのう?』
「
…
うるさいよ」
からかうように楽しげに言われ、返す言葉は自棄気味になった。外の空気は冷えているのに顔だけが熱い。ああもう、早く部屋に戻ろう。今の状態で誰かに会おうものなら色々と説明が面倒になる。勢いよくドアを開けて中に入ると、突然何かに身体を引き寄せられた。何が起きたのかを先に把握させられたのは、頭ではなく耳だった。
「ありがとう、薫くん」
機械越しの声ではない、そのままの声が耳に届けられる。とびきり優しくて、嬉しそうな声。
「
…
どういたしまして」
零くんの腕の中に収まりながらふと考える。来年は直接渡してあげてもいいかもね、なんて。
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