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【再録】このすばらしき世界
2024年1月に発行した書き下ろし本。
どこかにいるかもしれないし、いないかもしれない普賢さんと、それを探す伏羲の話です。5本の短編のオムニバス。無配ペーパーにつけた外伝、あとがきもまとめて再録しています。表紙イラストにはノヒト様をお迎えしました。ありがとうございました!
「大丈夫、信じますよ」
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外伝:喫茶店にて
路地裏にある喫茶店に客はまばらだった。通りが見える窓際の席に男が一人座り、コーヒーを注文した。ほかにも店はあるだろうに、思い出したように顔を出すのは、他と違ってこの店には音楽が流れていないからだと、前に聞いたことがある。
見れば、テーブルに肘をつき、じっと耳を澄ませている。カップを用意する音、
豆を挽く音が、彼には心地よい音楽に聞こえているのかもしれない。
お待たせしました、とコーヒーを運んだ。見上げる目がやや見開かれて(なんだ、おぬしか)と落胆したように逸らされた。わかりやすい。ということは
「空振りですか」
「
……
すれ違いはした」
「やっぱり」
「相変わらず自分のやりたいようにやっておったわ」
不満げに口を尖らせて「あのエセ聖人め」とぼやくけれど、終わりのない追いかけっこを、実は二人とも楽しんでいるんじゃないだろうか。その証拠に、愚痴を吐く口調はどこかかろやかに聞こえる。それはそれとして、いつまでも見つけられないのはやはり口惜しいようで、教主ならなにか知っておるのではと探る目を向ける。やれやれと小さく肩をすくめた。
「あなたが知らないなら、僕が知っているはずないじゃないですか」
コーヒーに入れる砂糖がいつもよりすこし多いのは、見なかったことにした。
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