Hizuki
2018-09-16 10:09:31
11692文字
Public FF14
 

14ふせったーログ[エス光]

【FF14】エス光。ふせったーに上げていた分のSSまとめ。




脅威を払う力は、人々の称賛の対象になる。
同時に強大な力は、人々の恐怖の対象にもなる。
それは『英雄』も例外ではない。


『Praise or Fear』


久し振りに戻った皇都は相変わらず雪に包まれていた。
とうに見慣れた景色に目もくれず、真っ直ぐに目的地を目指した。
神殿騎士団の本部の扉を開け、総長室の戸を叩く。

「邪魔するぞ」

エスティニアンか、とこちらを一瞥しまた机の上に視線を戻した。
横には決裁待ちであろう書類が山のように積まれている。

「アイメリク、相棒を見ていないか」

机に歩み寄り、そこに両腕を突いて問いかけた。

イシュガルドでは見かけていないな」
「本当にか」
ああ」

返答までに空いた間に、何か俺の知らないことがあるのだと確信する。

何か知っていることがあるなら教えてくれ」
「冒険者の彼女のことだ。またどこかに旅に出たのではないか?」
「暁の連中や各国でも聞いたが誰一人として何も知らないと言う」

2週間ほど前、四国合同で執り行われた平和記念式典にあいつの姿はなかった。
本来ならば平和の立役者のあいつがいないはずはない。

「アイメリク!」

痺れを切らした俺が思わず語気を強めると、アイメリクがペンを走らせる手を止めた。


彼女は、もうエオルゼアにはいない」


何を言われたのか理解が追い付かず、時が止まったような気がした。

「どういうことだ

到底アイメリクの口から語られた言葉をそのまま受け取ることはできなかった。
エオルゼアにはいない、なんて一体どうして。

「彼女は、彼女自身の意思でエオルゼアを去った人々を混乱させないためにな」
「混乱?」
「各国それぞれに小さな問題はあれど、共通で抱えていた蛮神や帝国といった問題はほぼ全て解決した他の誰でもない、彼女の力で」

アイメリクの言う通り、エオルゼアで起きた数多くの問題をあいつは解決に導いてきた。
時には一人で、あるいは俺や他の冒険者と協力して、時には国に力を貸す形で。

「つまり、現エオルゼアにおいて最強の力を持つのは彼女ということだ」

力は称賛の対象にも恐怖の対象にもなり得る。
俺が蒼の竜騎士として竜狩りを生業にしていた時は恐らく前者だった。
もちろん、あの力を称賛する者も多くいるだろう。
だが、あいつ自身は後者と取った。

世界のためにあいつはこの地を去った、と?」
そういうことだ」

淡々と語る様子に、カッと血が昇る。
握った左手が机を叩く。

「誰も止めなかったのか!」
「彼女に恩のある誰もが止めなかったと思うのか?」

冷静ながら強い声が響く。
そんなはずはない。
分かりきっていたことなのに。

私達では、彼女を止められなかったのだ」

悔しさの滲む声。
目の前のこいつも、他国の盟主も、同じ思いを抱えている。
何も知らなかったとはいえ、少し考えれば分かることだ。

悪い」
「気にするなそうだ、彼女からお前宛てに手紙を預かっている」

そう言って机の引き出しから一枚の封筒を取り出すと、俺に手渡した。
蝋の封を慎重に開け、中の便箋を取り出す。
書かれていたのはたった2行。


『私のことを相棒と呼んでくれてありがとう
 貴方のことが大好きでした』


それだけでも、俺を動かすには十分すぎた。

「チッあの馬鹿

一刻も早く見つけなければ。
こうしてはいられないと、気持ちが逸る。

「こちらも何か手がかりがないか個人的に探しておく」
「ああ、頼む」

騎士団本部を後にして表に出る。
イシュガルドはこんなにも色のない街だったか。
いや、そんなことはなかった。
あの時は、隣にあいつがいたんだ。
ふと決戦前夜のことを思い出す。


私さ、この戦いが終わったら
どうした、らしくないぞ相棒
ごめん、何でもない


今にして思えば、あの時言いかけていたのはこのことだったのかもしれない。
『この戦いが終わったら、エオルゼアを離れるつもりなのだ』と。
人々に希望になっていたあいつの褪めた目の意味が今なら分かる。
あそこで話を聞いて引き止めておけば、こうはならなかったのかもしれない。
だが、変わらない過去を悔いても仕方のないこと。
あいつに言いたいことは山ほどある。
勝手にいなくなってしまったこと。
本当はあの戦いが終わったら言うつもりだったこと。
それ以外にもたくさんのこと。
探して、探して、必ず探し出して。
文句のひとつでも言わないと俺の気が済まない。
そして、どうかお前の口からその言葉を聞かせてほしい。
過去形ではない、手紙の言葉を。
その答えは俺の心の中にある。

ただ一人の相棒を探して、俺はあいつのいない街を歩き出した。