Hizuki
2018-09-16 10:09:31
11692文字
Public FF14
 

14ふせったーログ[エス光]

【FF14】エス光。ふせったーに上げていた分のSSまとめ。




『終わりの始まり』


その人物は外壁のない広間に一人佇んでいた。
周囲は底の見えない闇が満たしている。
落ちたら最後、二度と戻っては来られないであろう谷。
戻ることが叶うとすれば、それは竜のような翼を持つ者だけだろう。

やっと来たか」
「あぁ」

オレ達が来ることを知っていたかのように、やっと、と口にした。
声音は彼のもの。
いや、望んでいたのか。
見慣れている彼の顔に少しほっとする。
普段ならばほとんど外すことのない兜を取っていて、時折吹く重苦しい風が彼の雪色の髪をなびかせた。
甲冑と同化した竜の眼は禍々しいエーテルを放ち、ギョロギョロと辺りを見回している。

「相変わらず小さいな」

エレゼンの身長からすれば、それは小さいだろう。
幾度となくからかうように言われたが、相手がこの男だからこそ悪い気はしなかった。

「ちゃんと飯は食ってるか」
「食ってるよ」

この場に相応しくない言葉が続く。
どんな言葉でも久し振りに彼と言葉を交わせることがただ嬉しかった。

少し、大きくなったか」
「まだあんたの方がデカイ」

オレの目を見て、静かに言った。
自分を倒せるのか、確かめているような気がした。

そうだな、俺は『邪竜』だからな」

フフッと自嘲気味に笑う。
邪竜であることを受け入れている、諦めにも似た笑み。

「笑えないっつーの」

どう返していいか分からない。
笑えない、そう返すのが精一杯だった。

じゃあ、ケリつけるか」

時間は限られている。
こうして話せたこと自体が奇跡だった。
むしろ、言葉を交わす間などなく戦うことになっていたかもしれない。
最初から分かっていたことだ。
だけど、もう少しだけ、彼と話していたいと望む自分がいる。

「エス兄」

かつて表で呼んだら殴ると言われた呼び名。
2人だけの秘密だと言われた呼び名。

何だ?」

拳が飛んでくることはなく、ただ続きを待ってくれている。

ばか」

一瞬、風が止んだ。
音が消え、震えた自分の声だけが小さく響く。

それでいい」

穏やかな声が辛い。
そんな声はもっと別のところで聞きたかった。

「どうすればいいか、分かってるな」
「うん」

確かめるように問われ、頷いた。

「もうお前の声もあまり聞こえないもう少しで俺は完全に『邪竜』になるだろう

眼から放たれているエーテルが徐々に強くなってきているのが分かる。
彼が暗い空を仰ぐ。
その目には何が映っているのか。

「そうなったら、俺は俺でなくなる手加減なんてできないからな

じわりじわり、彼の足元から黒竜の気配が感じられる。

悪いな」

らしくない気遣いが痛い。

「もういいって!」

目が熱い。
視界が滲む。

「うだうだ言ってないでさあ!」

もうこれしか手はないんだ。

だな」

背にしていた槍を手に取った。
その切っ先がオレに向けられる。

やろうぜ、相棒」

手にしていた兜を被った途端、黒竜のエーテルが彼の全身を包み込んだ。
エーテルから発せられた衝撃に自分の周囲で後ずさる音がした。
こちらを見たまま、一歩ずつ後ろに下がっていく。
その先に待ち構えているのは、闇。

「エスティニアン!」

思わず名前を呼んだ。
届かないと知っている。
届いても何もできないと知っている。
それでも、足が止まらなかった。
手を伸ばすもそれは宙を掴み、彼の身体は谷底に吸い込まれていく。

「エス兄っ!!」

闇の中に姿が消えた。
大地が震えるのと同時に竜の咆哮が轟く。
眼下から巨影が飛び上がり、広間に降り立った。
邪竜、ニーズヘッグ。
その黒竜に彼の面影はない。
目元を拭って、得物を抜いた。

「すぐに終わらせてやるからな!」

眩い蒼竜を身体に宿す。
溢れてくる涙が闇に溶けた。
最後まで手間のかかる相棒で兄貴で恋人だ。

「さっさとやられろよ!」

大地を蹴り、邪竜となった恋人に槍を突きつける。

倒さなければ終わらないのなら、せめて最後はオレの手で。