澄ひろえ
2021-06-18 21:03:23
14457文字
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大団円への道程は遠く

ククゼシ2人旅ツイート小説「カジノ護衛編」を加筆、修正した物です。 ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。


 その夜。私達はフォーグ達の屋敷でもてなしを受けていた。
 だけど、ククールは料理に手を付けない。難しい顔をして何か考えているみたい。
「どうしたんだ。流石にもう眠り薬は入れていないぞ」
 フォーグが苦笑する。ユッケも頷いた。
「・・・あんた達に聞きたいことがあるんだが」
 ククールは口を開いた。
「聞きたいこと?ああ、報酬ならカジノのコインを用意してある。存分に楽しんで・・・」
「そいつはありがたいが、俺が聞きたいのは別の事だ」
 ククールの目は真剣だ。フォーグも顔を引き締める。
「何だろうか」
「・・・俺達のこと、調べたのか?」
 調べる・・・?どう言う事?私はククールとフォーグの顔を交互に見やった。
「・・・護衛からドルマゲスを倒した人達の存在を知ってね。少し興味が湧いて調べさせてもらった」
「それで、俺達が護衛に適任だと思ったのか?」
「まぁ、そうだね。父の仇を討った者達だ。腕は立つと踏んでね」
 2人の間の空気がピンと張り詰めている。私とユッケはいつの間にか固唾を飲んで2人の動向を見守っていた。
「・・・」
「納得してない顔だね。マイエラの聖堂騎士殿」
 フォーグの言葉にククールは机の上に置いてあったコップをぐっと掴むと中身を一気に飲み干した。
 そして、ダン!とコップを机の上に戻す。
「単刀直入に言うぞ。俺の事をどこまで知ってる?」
 ククールはフォーグを睨みながら言った。
「どこまでと言っても・・・マイエラの聖堂騎士で、殺された修道院長の仇を討つためにドルマゲス討伐に参加したんじゃないのかい?」
 フォーグはそう言って肩を竦める。
「そこは否定しないさ。だが、それ以上の事も知ってる・・・そうだろう?」
「何を言って・・・」
「とぼけるなよ」
 ククールの目が更に厳しくなった。
「護衛の途中でユッケ言ってたよな。『キミにも兄弟とかいるの?』って。で、俺が兄が1人いると言ったら『たった1人の肉親なんだから大切にしないと』って答えたよな。何で、『たった1人の肉親』なんだ?俺に両親がいないってどうして知ってるんだ?」
 ククールの指摘にユッケがあっと声を上げた。そう言えば・・・そう言っていた気がする。私はあの時ククールの表情が一瞬変わったのを思い出していた。
 確かにマイエラ修道院は身寄りが無い子だけが来るわけじゃない。聖堂騎士団に憧れて来る人もいる。
 どうしてユッケはククールの両親がもうこの世にいないことを知っていたのかしら? 
 フォーグがユッケを睨む。ユッケはバツが悪そうに目をそらした。
「そこまで聞いたのなら正直に言おう。私達は確かに君の事を知ってる。いや、正確に言えば・・・君の御父上を知っている」
「・・・親父を?」
「君の御父上はここのカジノのお得意さんでね。生前何度もここを訪れていたんだ。」
 その言葉にククールの眉間にしわが寄る。
「私達の養父であるギャリングとも馬が合ったらしくてね。よく2人で話しているのを見かけたよ」
「まぁ、俺の親父は博打好きだったらしいからな・・・そういう事もあるか」
「君の名前も何度か聞いた。出会った時に名乗っただろう?名前だけなら確証は持てなかったが・・・」
 フォーグはすっとククールの頭を指さす。
「その、銀髪・・・君の御父上と同じ髪の色で確信を持ったよ。君がドニの領主の息子だと」
 ククールの顔が酸っぱいものを飲み込んだような顔になった。
 そっか、それで私達が最初名乗った時に顔を見合わせていたのね。
「流石に兄弟の有無までは分からなかったがね・・・その後、君のご両親は流行病で亡くなったと父から聞いたよ。父はとても残念がってた」
「・・・そいつはどうも」
 抑揚のない声でククールはそう言って、頭の後ろで腕を組み、天井を見上げた。
「・・・ま、おそらくそんなところだろうとは思ってたけどな」
 大きく息を吐きながらククールが言うと、張り詰めていた空気が元に戻ったのを感じる。私はいつの間にか固く握り締めていた手をほどいた。汗でびっしょりだわ。
「じゃあ、家族ぐるみのつきあいだったって事で俺のお願い聞いてくれねーかな」
 ククールは既にいつものペースに戻っていた。声音もいつものククールだわ。とは言え、一気に180度変わった空気に私は多少困惑していた。
「一体何だ?カジノのコインなら・・・」
「それは俺が実力で増やしてやるよ。俺達が欲しいのは・・・情報だ」
「情報?」
 フォーグが首を傾げる。
「俺達捜し物をしてるんだ。あんたらの人脈の広さを見込んでその情報を見つけて欲しい」
「捜し物だと?それは一体何なのだ?」
「俺達は隔絶された台地と呼ばれる場所へ行きたいんだが、そこに行くには特別な海図が必要らしいんだ」
「・・・なるほど。その海図の情報が欲しいのだな」
「ま、そういうこった。おそらく、簡単な場所にはない・・・何らかの封印がされている場所にあると思うんだよな。出来ればそういった情報も併せて欲しい」
「・・・分かった。調べさせよう」
「助かる。恩に着るぜ」
 フォーグの言葉にククールはニヤリと笑うと「疲れたから先に休ませて貰う」と言って、立ち上がった。
 私も慌てて立ち上がろうとする。けれど、
「ゼシカはまだ食事してろよ。久々の同年代の奴らだし、話盛り上がるんじゃねぇ?」
 ククールの言葉はいつもと変わらない。でも、そこから感じられるのは「1人にしてくれ」という拒絶の意思。
 ヒラヒラと手を振りながら、ククールは階段を上がっていった。
 ククールの事は気になったけど・・・折角のおもてなしなのに2人とも辞する訳にはいかない。
 それに実際フォーグ達と話をしてみると、興味深い話を沢山聞くことができる。伊達にギャリングさんの養子じゃない。
 食事をしながら話し込んでいるといつの間にか夜は更けていって、私も昼間の疲れが出てきた。
「ああ、そろそろお開きにしようか」
 時計を見ながらフォーグが言う。
「そうだね。あたしも疲れちゃったし。今日は2人ともありがとね。ゆっくり休んで」
 ユッケの言葉に頷くと、私は階段を上がっていった。あてがわれた客間を軽くノックして扉を開ける。
 もう、流石に寝ちゃったかしら・・・。

 
 ・・・ククールはまだ、起きていた。流石に部屋着には着替えていたけれど。
 窓を開け、ぼんやりと外を眺めている。そこから差し込む月の光が彼の銀髪を明るく照らしている。
 私が入ってきたのに気付いたのだろう。ククールはこちらを見た。
「・・・まだ、起きてたんだ」
「ん、まぁな」
「・・・眠れないの?」
「ああ、明日からカジノが出来るって思うと、ギャンブラーの血が騒いでなー」
「・・・」
「まぁ、それも・・・親父譲りなのかって考えると少し複雑な気分ではあるけどな」
 自嘲気味に呟いてククールは肩を竦める。
「ま、ゼシカに俺の華麗なカジノのテクニックを見せてやるよ」
 そう言ってククールはニヤリと笑う。
 
 ・・・また、そうやってあんたは笑うのね。本心を隠すように。
 本当は言いたい事があるんじゃないの?
 お父さんの事も、マルチェロの事も・・・。
 でも、あんたは何も言わない。うわべだけの作り笑顔を浮かべるだけ。
 ・・・そんな哀しい顔しないでよ。

「・・・まぁ、そうは言ってもずっとカジノばっかりやってるわけにもいかないか。流石に」
 突然変わった話題に私は状況が飲み込めずに首を傾げる。
「えっと、どういう事?」
「ゼシカも今回の探索でさ、身をもって知っただろ?そろそろ今のレベルじゃきついって」
 ククールの言葉に私は頷いた。
 ・・・確かに。今回の迷宮は厳しかったわ。魔物達も強くなってきてかなり苦戦した。
「だから、情報集め任せてる間に、俺達はカジノで装備整えて、レベル上げ、な。そこそこ上がる頃には情報も集まってるだろ」
 そう言ってククールがパチリと片目を閉じる。まぁ、確かに効率的ではあるんだけれど・・・。
「ふ・・・ああ・・・流石にそろそろ寝るか。ゼシカも早く寝ろよ」
 ククールはあくびをしながらそう言ってベッドに入った。
 流石に私も体力が限界だった。
 どうにか部屋着に着替え、ベッドに入るとすぐに睡魔が襲ってくる。
 だから不意にぽつりと聞こえた
「・・・クソ親父・・・」
 その声は夢だったのか現だったのか・・・私には分からなかった。