澄ひろえ
2021-06-18 21:03:23
14457文字
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大団円への道程は遠く

ククゼシ2人旅ツイート小説「カジノ護衛編」を加筆、修正した物です。 ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。


 私達は部屋に戻り、ユッケの護衛を受ける事を伝えた。
 すると、フォーグはせめて英気を養って欲しいと夕食を用意してくれた。食事はとても美味しかったわ。けど、食べていたら強烈な睡魔が襲ってきて・・・。私達は早々にベッドに入った。
 そのままぐっすり寝入ってしまって。
 私が目覚めた時には既に日は高く上っていた。
 どうやらフォーグがメイドに命じて夕食に眠り薬を混ぜたみたい。うう・・・フォーグって結構えげつない事するのね。私は頭を押さえた。鈍い痛みが頭の芯を刺激する。
「こらー!起きろー!」
 ユッケがククールに向かって叫ぶ。なんであいつ掛け布団を抱き枕なんかに使って寝てるのよ。
 そういえばククールの寝顔なんてあんまりじっくり見た事ないかも。子供みたいな寝顔しちゃって・・・。思わずクスリと笑みがこぼれた。
 ユッケは抱き枕に生まれ変わってしまった哀れな掛け布団を引っぺがして、それでようやっとククールも目を覚ましてくれた。
「寝坊したことは責めないわ。あたしも寝ちゃってたし。でも、お兄ちゃんは日の出前にはもう出発したって」
「んー・・・そういえば竜骨の迷宮ってどこにあるんだ?」
 まだ、薬が抜けきってないのだろう。眠い目をこすりながらククールが言った。
「地図を見せて・・・ここよ」
 ユッケはククールから世界地図を受け取り、広げると、ベルガラックからかなり離れた砂漠の中央を指差した。
「・・・ん?ここは」
 ククールが指差したのはその中央より北。建物が記されている場所。
「ここ、寄ったな。確か、教会だった。まどろみの剣買った記憶があるぞ。ルーラで飛べるな」
「ああ、バウムレンの時。夜明けに間に合わなくてもう一日時間潰した時ね」
 私の突っ込みにククールがうっと黙り込む。ユッケが不思議そうな顔で見ていた。
「なら、追い越せるのかしら?」
「護衛が以前寄っていたらキメラの翼でも飛べるからな。ま、そこから距離は詰められるな」
「それじゃさっさと行くよ!お兄ちゃんをギャフンと言わせてやらなきゃ」
 ユッケが息巻く。私達は素早く旅の支度を整えて、ククールのルーラで砂漠の建物目指して飛んだ。
 一瞬にして砂漠の教会にたどり着く。強い日差しが私達を照りつけてくる。
「あっちー・・・」
 ククールが額の汗を拭う。まぁ確かにその騎士服は通気性悪そうだものね。
 砂漠の教会で聞き込みをしたら、フォーグ達はこの建物に寄って、数時間前に出発したらしい。
「ま、何とかなるかな」
 そう言ってククールは教会の外に出るとチリンと鈴を鳴らした。現れた2頭のキラーパンサーにユッケは目を丸くする。
「これに・・・乗るの?」
 ユッケは不安そうだ。まぁ本来魔物であるキラーパンサーに乗るのなんて初めてでしょうしね。
「ユッケは俺の後ろに乗って俺に掴まっていればいいさ。さっさと出発しようぜ」
 私達は出発した。ユッケはククールの背中にしがみついて歓声を上げている。
 仕方ないんだけど・・・なんだろう。何かモヤモヤする。

 
 風のように早く走るキラーパンサーのお陰であっという間に目的の場所にたどり着いた。フォーグ達は多分徒歩でここまで来たはずだから、少しは追いつけたのかしら?
 それにしても・・・私達は迷宮を見上げる。
「これ、竜の・・・骨?」
「だなぁ、大昔にはこんな大きな竜がいたんだな」
 もはや骨と化した巨大な竜の顎が迷宮への入り口となっていた。
 迷宮の中にも沢山の竜の骨が散乱していた。場所によっては背骨が橋のようになり、渡っていかないと行けないところもある。
 そして、それ以上に厳しいのが。
「ここの魔物結構強いな・・・。こりゃフォーグ達も中々先に進めないんじゃないか?」
 魔物を倒し、剣を納めながらククールが言った。
「お兄ちゃんねぇ・・・お兄ちゃんって生意気なんだよ。何でもかんでも分かってるって顔して、あたしにいっつも小言言ってさ。あたしとお兄ちゃんは同い年なんだから、あたしの方が先に生まれてきた可能性だってあるもん」
 ユッケはおしゃべりで・・・魔物を引きつけちゃうんじゃ無いかって思ったけど、機嫌を損ねて動かなくなるよりはましって事で喋らせておいた。
「そしたらあたしがお姉ちゃんでお兄ちゃんが弟って事になるわけ。そこんとこ分かってないんだよなぁ」
 その言葉に私達は苦笑するしか無かった。
「・・・ま、フォーグとユッケはお互い喧嘩をするだけまだマシだよな。喧嘩も対話の一種だしよ」
 ククールの言葉に私は胸が詰まらされる。それは、喧嘩すらできなかった人しか発せられる事が出来ない言葉だったから。
 だけど、ユッケは意に返さない。腕組みしてククールに言い返した。
「え~兄妹喧嘩だよ。これのどこが対話なのさ・・・ところでキミにも兄弟とかいるの?」
「・・・兄が1人いるけど。何の交流も無いね。奴は俺をいないものだと思ってるらしくてね」
「どんなに冷たいお兄ちゃんでも、たった1人の肉親なんだから大切にしないとダメだぞ。ダメダメ!」
 その言葉を聞いてククールの顔つきが一瞬変わった。だけどすぐに眉間にしわを寄せて、
「そこまで言うならお前も兄妹喧嘩なんかすんなよ!」
 呆れたようにそう言い放つ。その声にユッケは「ひゃっ」と声を上げて首を竦めた。


「あらっ、あの人・・・」
 迷宮の奥へ進んで、隅で見つけたのは、フォーグの護衛の1人の女性。聞けば、魔物との戦いで魔力が無くなってしまい、足手まといだからと置いて行かれたらしい。
 ・・・ちょっとフォーグったらひどくないかしら。
「仕方ねぇなぁ」
 ククールはため息をついて、女性に一緒に来るよう促した。
 さらに奥に進んで、出会ったのがフォーグの護衛の1人、戦士風の男性。どうやら、魔物からフォーグをかばって大けがをしたみたい。
 ・・・フォーグは、この人も置いて1人で先に行ったの?
「こりゃひどいな」
 片膝を着いて、男の傷の具合を見ながらククールは言う。傷も酷いけど出血も多い。
「ほら。今治すからじっとしてろよ」
「ちょ、ちょっと!こんなことしてたらお兄ちゃんが先に着いちゃうじゃないの!」
 ユッケが大声でわめく。
「うるさい。そんなに急ぎたいならお前1人で先に行ってろ」
 ククールの厳しい言葉にユッケはうっと言葉に詰まって黙り込んだ。ため息をつきながらククールは男にベホマを唱える。

 そう、分かってる。
 ククールは口では面倒臭い、かったるいって言うけど。傷ついた人を見捨てない。
 ううん、傷ついた人だけじゃない。ユッケのことだって。あえて厳しい言葉を使って引き留めている。
 そして、多分。フォーグの事も気に掛けている。
 ・・・分かってる。知ってるんだから。

「どうだ?」
 傷は塞がり、男は立ち上がろうとしたけど、ふらついて膝をつく。出血が酷かったせいで貧血を起こしかけてるみたい。
 回復呪文は傷をたちどころに塞いでくれる便利な呪文だけど、流れてしまった血までは元に戻せない。
「あんたリレミトは使えるのか?」
 ククールは護衛の女性に話しかける。女性は頷いた。
「じゃ、これ使って2人とも外に出てろ。んで近くに教会があったろ。そこまで飛んで休ませてもらえ」
 ククールはフォーグの護衛達に魔法の聖水とキメラの翼を渡した。一緒に進むよりは引いて貰った方が良いと判断したみたい。
 まぁ、異存は無いわね。これだけの人数を護りながら戦うのは正直厳しいわ。
「分かった・・・あと、頼みがあるんだが、もし、フォーグ様が魔物に襲われていたら助けてはもらえないだろうか」
「ふーん、どうかしらねぇ。あんな卑怯な手を使うくらいだし、また罠にはめる気なんじゃないの?」
 まだ睡眠薬を盛られたことを根に持っているらしい。腕組みをし、そっぽを向きながら言うユッケの言葉に私は苦笑するしかなかった。
「ま、そうなってたらひとまず勝負の事は置いておくさ」
 ククールの言葉に護衛の男は安堵したらしい。
「すまない。よろしく頼む・・・」
 男は頭を下げ、女性と共に女性の唱えたリレミトで迷宮を脱出した。これで一つ問題解決・・・と。
「なによ、護衛を置いて1人で先走ったんだから自業自得じゃない」
 ユッケは納得いかない口調でぶつぶつ言っている。私は意を決してユッケに話しかける。
「ねぇユッケ。勝負が決まったら、どっちが勝っても仲直りするのよ」
「お兄ちゃんが、泣いて土下座して謝ってきたらね」
 私の言葉にユッケは不満げに返してきた。
「まだ、そんな事いってるの?たった1人のお兄さんでしょ」
 仲直りしたくても、出来ないきょうだいだっているんだから・・・。