しるひ
2024-07-24 06:40:42
13117文字
Public 小説
 

魂の寄る辺へ

note創作大賞2024、オールジャンル部門に応募

https://note.com/ariaketuki_aria/n/n224f09b7e2a8?sub_rt=share_b


7

 初夏のまぶしい日差しが降り注ぐ中、駅前の書店でエンタメ雑誌を手に取った。
 表紙には大きな文字で『あの有名作家が遺したクリエイティブAI、衝撃のデビュー!?』と書かれている。
 同じように雑誌を手に取った若い女性が中身を読んでいる。その背後から連れ合いらしい男性が声をかけた。

「それ、君がファンだって言ってた作者が作ったAIだろ?」
「そうだけど?」
「ほら、やっぱり自分の小説も書かせてたんだろ。僕の言った通りだ」
「違うわよ。全然違うもの、あの先生らしさが全然ない。よく書けてるとは思うけど……。どうしてこんなAIを遺したのかしら」
「そうなの? 作り損だったんだなあ」

 女性は興味なさそうに雑誌を陳列台に戻してから書店を出て行った。男性もそれを追う。

「やれやれ、散々だな」

 メイジャーは手に取った雑誌から、隣で苦笑いを浮かべるトーマスへと視線を移した。

「あのポンコツAIの『作品』を掲載するのにどれだけの人間に頭を下げたんだ?」
「言わないでくださいよ。このままクビになってもいいと思って必死だったんです」
「それだけ彼の作品に思い入れを持ってくれたんだろう。感謝する」
「いいええ……おかげさまでこの先の掲載枠もある程度ぶん取ってあるので。それより、本当にうちで短期連載書いてくれるんですか?」
「ああ、もちろん」

 マイナは大事なことを忘れていたようだ。
 大きな山は、互いに越え続けないと意味がないということを。
 マイナの魂にもまた、高い山を見せなければ奮起しないのだろう。作家というのはそういうものだ。

「気長に見守ろうじゃないか。彼が遺した魂を」

 正直なところ短編は得意ではないのだが、新しいことに挑戦するのも悪くはない。手にした雑誌を会計するため、メイジャーは書店のレジへと足を運んだ。




-----------

なにかあればどうぞ→ https://sugar-pot.underxheaven.com/c/01hsmvb82n48a91tnc3hkvk55d