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しるひ
2024-07-24 06:40:42
13117文字
Public
小説
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魂の寄る辺へ
note創作大賞2024、オールジャンル部門に応募
https://note.com/ariaketuki_aria/n/n224f09b7e2a8?sub_rt=share_b
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「メイジャー! ご覧よ、新しい創作の夜明けが来たよ!」
同じアパートに住む同期の作家であるマイナが、あいさつもなしに飛びこんで来たのは、今まさに朝食のコーヒーを飲もうとしていたその時だった。
「マイナ、騒々しい。せめて朝食を食べてから来てくれないか」
「ごめんよ。すっかり興奮しちゃって。それよりこの記事を見てくれよ」
マイナは興奮しすぎて握りしめたのか、しわくちゃになった朝刊を広げて見せてきた。
新世代のクリエイティブAIモデルの無料提供開始。でかでかと大きなタイトルで書かれたその記事には、すでに赤ペンで印がついていた。マイナの仕業だろう。
「実に創造的な記事だな。もっとも、クリエイティブAI自体はすでに使い古された技術で、もはや目新しい発明ではないということを除けば」
事実、人間の文化活動におけるあらゆる創作を可能にするというクリエイティブAIが世界にとてつもないインパクトを与えたのは10年ほど前のことだ。しかし話題になったのはほんの数年で、利益を追求しすぎた大企業の技術独占により、発展の好機を失ってみるみるうちに無価値の発明となった。
それを踏まえて皮肉たっぷりに言ってやると、マイナはとんでもないとばかりに身振り手振りを加えてそれを否定してきた。
「それは違うよメイジャー、よく読んでほしい。ほら、ここの箇所だ」
マイナが指し示した部分にざっと目を通す。そこにはメイジャーの眉をわずかに動かす内容が書かれていた。
「人間の感情を記憶させる? AIに?」
「そうだ。AIを調整するのと同時に感情も学習させるんだよ」
「そうすればAIが人間のような感情を得るというのか? 馬鹿馬鹿しい!」
メイジャーは吐き捨てるように言った。
先のクリエイティブAIがブームの域を出なかったのは、人間の感情を理解しきれないのが要因のひとつだった。どこまでも人間に寄り添うアシスタントという前提がありながら、次の瞬間には全く逆の回答をする。そういうAIの『クリエイティブ』さを人間側が受け入れることは、ついになかった。
「マイナ、君がAIに誰よりも期待を寄せていたことは知っている。だが人間はわがままだ。自分にとって都合のいいものしか必要としない。そして、そんなものはすでに世の中にごまんと溢れている。分かるだろう?」
「もちろん、僕だって恩恵を受けている。そういったものを否定はしないよ。でもクリエイティブAIは、それらとは全く違う次元の発明なんだ。僕は信じたい」
「マイナ
……
」
「今度は希望モニターのみに配布する形を取るらしい。僕は部屋に戻ったらさっそく応募してみるつもりだよ。できれば君にも認めてほしい。だめかな?」
マイナは押しの弱い性格だが、こうと決めたらテコでも動かない芯の強さを持っていることをメイジャーはよく知っていた。
「私が認めようが認めまいが、君は自分がしたいことを諦めたりはしないだろう。好きにするといい」
「そうとも言い切れないよ。最も親しい君に否定されてはさすがに心細いからね。僕の話を聞いてくれてありがとう」
マイナは人の良さそうな笑顔を浮かべると、来たときと同じ勢いで出て行った。メイジャーはそれを見送り、すっかりぬるくなったコーヒーに向かってため息をついた。
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