雨宮水月
2024-07-18 14:26:53
8154文字
Public 企画
 

第二回誰の文章だゲーム

参加者6名の中で、どの作品を誰が書いたのか当ててみよう!



【作品F】

「なあ後輩くん」
「なんですか先輩」
 斜め前から投げかけられた声にいらえを返す。顔は上げない。なぜなら文化祭まではもう時間がなく、我々二人と数人の幽霊部員を擁しているのみの我が生物部にとって、ポスター作りが出来るのは僕一人しかいないからである。
 ちなみに先輩は戦力外だ。見なくてもわかる。チョコレートの匂いがする。
「いやだな、君は噂というものに興味がないのか?」
「『ない』寄りですね。どうかしましたか」
「それがな。巷じゃ我々、阿吽の呼吸なんて言われてるそうだぞ?」
 マウスを滑らす手が止まった。現社会人の諸兄には信じてもらえないかもしれないが、昨今はノートパソコンを高校に持ち込むのも大して珍しいことじゃない。
 顔は見えないが、先輩がにやけている気配は伝わってくる。そんなものを大気中に伝播させないでほしい。酸素などの構成割合が変わってしまう。どれが何パーセントかは覚えてないけど。
……それはまた、適当言う人がいるものですね」
「懇ろなのは事実だろ?私と君の話だが」
「学生らしからぬ表現はやめてください。ただの部員同士でしょ」
「しょうがない奴だな君は。照れてるのか?」
「勘違いも甚だしいですね」
「根っから嘘でもないんだがなあ」
「アンタそんなんだといつか刺されますよ」
「よしてくれよ。君にだけだ」
「大体先輩、僕のタイプじゃないですし」
「淑やかな女は好かないか?」
「かけ離れてるにも程があるでしょ。大人しい方が好みですよ僕は」
「若いねえ、青春ってやつだな」
「何か老人みたいだな。ところで先輩」
「いやに神妙な顔だな、なんだい?」
「いえ」
 そこでようやく僕は顔を上げた。俯きっぱなしだった肩が悲鳴を上げる。とぼけた声で返事をした先輩は、思ったとおり、実に楽しげににんまりと笑んでいた。
……しりとり、いつまで続けます?」
 先輩は板チョコをかじりつつ「すまん」と言って笑った。対する僕は憮然とする。やっぱりこの人は全然僕のタイプじゃない。
 そこは多少無理やりでも『阿吽』で終わらせるところだろ。