雨宮水月
2024-07-18 14:26:53
8154文字
Public 企画
 

第二回誰の文章だゲーム

参加者6名の中で、どの作品を誰が書いたのか当ててみよう!



【作品C】

 物心がついた頃から、私は負けず嫌いだった。勉強も運動も音楽も芸術も。誰にも負けたくなくて、自分で自分を認めるために積み重ねてきた。
 誰にも負けたくなくて人一倍の努力を惜しみなくしてきた。
 当たり前だろう、私がいる事が花が咲くような事なのだから。
 しかし、歳が10後半になりかけた時私は出会ってしまった。
その人は勉強も運動も音楽も。芸術だってそつなくこなせて見せた。その上、能力は自分に負けず劣らず。いや、自分より上なのかもしれない。成果をあっという間にあげて上を挙がっていくそいつを見ると言いようもない焦燥感に襲われた。
 自分の地位が揺るがされる恐怖、自分に誰かが勝つ焦り。転落したくないという不安。
 その人間の素性が知りたくてつい自分から声をかけてしまった。
「ねぇ、君。名前は?」
 名前なんて知ってる。年齢なんて知ってる。どこに住んでるかも何が趣味なのかも全部知っている。知った上でそれを包み隠して君に声をかけた。
 それ以降、何かある度に声をかけ距離を縮めて行った。君を、お前を、貴方を知るために。
 なんでもいいから知りたかった。その人の情報を得ることを望んだ。乗り越えるために、勝つために。でも知っていけば知っていくほど、分かり合えば分かり合えるほど痛感する。あぁ、私は__________
 この人に勝てない。
 暫く時が経っても現実は変わらなかった。いつしか君と背を向け合う間柄になっても勝てないと痛感する。乗り越えられない大きな壁。それなのに優しく暖かく私の隣にあろうとする。手を繋いでみても拒否しないで背中を押しても拒まない。何をしても私に微笑みかけて笑うのだ。
 君は私の相棒だろう?
 そう、憎たらしい笑顔を君は浮かべる。