空が白む。
…夜が明けていく。
くたびれた俺は、のろのろと下山する。
夢をみせられていた間に、神社まで登らせられ。戦い、歩き回った。
勝てたのは良かったが、ズタボロもいいとこだ。
…魂への損害は少ないものの、精神的に参るって感じ。
つまり
…最悪の気分だった。
でも。アイツの術のおかげか、地理はわかっている。
おそらく、現実に則した立地で、夢の中で見た建物は建っていて
…それはすなわち。
「あは
…」
アイツは俺を仕留める気だったんだろうが、しくじった。
『青嶺』の家がどこにあるのか、今の俺にはわかる。
「全く同じ人間がいるとまでは思わないけど
…憂さは晴らせる」
どいつもこいつも
…馴れ馴れしく人の名前を呼ぶ。教えた覚えもないのに。
日が眩しく、辺りを照らし出す。
そんな中、俺は夢でみた場所に辿り着く。
砂利を踏みしめて進む。
車庫を通り過ぎ、玄関へ。
家の
…おそらく台所の方向から、物音がする。
…人がいる。
『青嶺』の表札をちらりと見て、呼び鈴を押した。
…人がやってくる音がする。
鍵が開いて、ガラガラと引き戸が
…
「
…順平?」
「あれ?誰もいない
…」
不思議そうな顔をして、開けた玄関から、こちら側をきょろきょろと見渡す。
その顔は、魂は
…確かに、死んだはず
…?
俺が茫然としていると、また人がやってくる。
「順平くん、どなたかいらっしゃった?」
「いいえ。誰もいません
…変だな」
家の中を振り返り、そう言いながら彼は戸を閉めた。
…その様子は、無理している風でもなく
…自然な
態度 。
これは一体
…現実か。
それとも俺は
…未だに、夢の中
…?
俺は後退り
…逃げるように、そこを離れる。
…覚束ない足取りのせいで、辺りの砂利が散らばった。
確かに俺は!奴を!!夢からは醒めたはず!!
何が起こってる!?順平は無為転変で魂を
…!
「ハァっ
…ハァッ
……」
笑っていたのは夢の中で、でも話していたのはあの家で
…?
違う!順平は確かに殺しぁあ!違う!!俺じゃない!!それでもでもなんで俺が見えない!?
気持ち悪くて、胸を押さえながら地面に膝をつく。
側にあった用水路の、浅い水の流れを見つめ
…そこに映る自分の姿が歪んで見えて、縁を掴み、握りしめる。
「
…!
……オェッ
…っ
…」
ストックしていた改造人間を吐き出す。それらは水の流れに呑まれて消えていく
…。
…自分の裡にあった、"他者の魂"。それがなぜだか、気持ち悪くて仕方なかった。
握りしめていた場所から手を放し、頭を抱える。
ぐしゃぐしゃに掻き乱しながら、立ち上がり
…呻き声をあげた。
「ぁ
…ぁぁ
…」
「問おう、真人」
「呪いは、夢をみるか?」
あれがみせた夢のなか。
俺は一人の
__ のようだった。
「ァアアあぁァアあアア!!違う!俺はッ!!」
「
…ッいたぞ!呪いだ!!」
「ヒト型の呪霊か!」
感じる呪力と、その魂。
散らばった髪の隙間から、
彼方 側を覗きこんだ。
……呪術師。
「ッ!!」
踏みこむ。手を伸ばす。
相手が反応するよりも早く速くはやく、その魂に触れ、形を変える
…!
…呻き声未満の何かを音立てて、二つの奇怪な塊が、地面に転がった。
服と共に、人の形を脱ぎ棄てたソレらは、すぐに息絶える。
それをみて
…俺は、嗤いがこぼれた。
「
…そうだッ!!俺が!呪いだ!!」
あははははは!!
…歓喜の声が、辺りへ響き渡る。
その胸に滲む感情は、らしくもない安堵。
…精神を侵す術式なんて、もう二度とごめんだって経験になった。
「あー
…でも疲れたなぁ。もう帰ろっと」
また別の呪術師が来られても面倒だし、興味が失せた。
昇ってくる朝日に背を向けて、俺は足早にその町を去る。
…もう一度、あの家を確かめる気すら、今の俺にはやる気がおきない。
疲れたから
…帰るんだ。同じ、呪いの、仲間の
…ところへ
……。
頭に響きそうな、あの夢の記憶を思い出さないように
…俺はそれを、意識の奥へ沈めた。
次回
『E.18 耳目一手の慾』
【問答について:愛とは】
今回出てきた封魔は、生きていた時代が違うので認識も違います。
具体的に言うと、明治よりももっと前なので。
【前から出てた文言について】
『水神と共に鎮め その御許で眠るべし。
その水の流れで 穢れを禊 祓い給え。』
これ。牛鬼のことのようでいて、別のことでもありました。
今回の場合だと、一行目は山神のことです。町中が水神の御許(結界内)であり、その水神が居なくなれば目覚めます。
二行目は
…厳密に言うと、山神に対してのことではありません。言うなれば、山神の目的ですね。
オリ主の「石柱に文言なかった」は、通常では視えないからです。
牛鬼の入ってた石櫃と同じですね。
【実は
…】
だいぶ最初の頃に、町の地図を挿絵として入れていましたが
…実はあの地図、あえて情報を抜いた部分があります。地図の右下です。
あそこに、今回の話の冒頭で出てきた『川(と橋)』を最初描いていました。ですが、あの頃の情報としては不要で、しかも混乱を招くと思ったので、削ってしまったんです。
なので、今までの小説内にも描写はなく、地図としても微妙に不自然な空白と形になってしまいました。
(川の向こうから隣町なので、結局空白はできてしまいますが
…。)
右下の区切られるように描かれた土地、それに沿う形で川がある設定です。
〈前にあげていた地図→
https://www.pixiv.net/artworks/87149262 〉
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