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MN*B
2024-06-21 01:54:56
17748文字
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蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
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Ep.2 来る者到る。
シリーズ中第33話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。
このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいねを、いつもありがとうございます。
お待たせしました。
今回、ちょっと暗い話もしてます。
詳しい時系列については、これのちょっと下あたりに書いてます。
ちなみに、この話の順平は、家入さんから自分の身体に起こったことくらいは聞いてるくらいの…そういう呪術知識がほとんどないままの順平です。
次回、時系列が『E.15 ヒトもケモノ』と『E.16 結び目の解き目』の、ちょうど間の話となります。
2週間以内にあげます。この期間だけはバチバチに守りたいです。
【時系列のおさらい】
E.9 束の間
前回の七海の回想…滝中問答
今回の順平の回想…6P
E.10 山椒魚に水
E.11~13(交流会初日) = Ep.1:同日
みたいな感じです。
正直、既出な情報の詰め合わせのような気もするので、サラっと読んでいただけたらいいかと。
(ただし、サラっと読めるような文字数に抑えきれませんでした…)
#オリ主 #夢術廻戦 #七海建人 #灰原雄 #オリキャラ #吉野順平
2021年10月22日 06:57
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6
7
悠仁と別れ
…
なぜかまた、高専の奥へと進んだ僕と七海さん。
ここで待っているように。とだけ言われ、七海さんはどこかへ行ってしまった。
手持ち無沙汰のまま、廊下に置かれた長椅子に座っているだけだ。
そうやって、七海さんのことを待っていれば
…
廊下の先から、高専の制服を着た人物が歩いてくる。
その姿を見て、僕は思わず声を漏らした。
「あ
…
。
…
青嶺くん
…
?」
相手も僕に気がついたのか
…
心なしか早足で、こちらへ近づいてきた。
…
やっぱり、”青嶺”くんだ。
彼は立ち上がりかけた僕を制すると、座り直した僕の前に立った。
「
…
成功したんだな」
感慨深げに、ボソリと呟かれたそれ。
最初それに心当たりがなくて、僕は首を傾げ
…
そして、なんとなく理解する。
「
…
君のお陰で、僕は生きてるよ」
彼は座っている僕を見つめて、さらに視線を下に向けた。
「悪い
…
」
「何が
…
?」
「
…
俺は、お前じゃなくとも助けてた。同じ行動をとってたと思う」
ポツリと落とされた言葉は
…
謝罪のような、懺悔のような響きだった。だけど、謝ることでもないようなことで
…
。
それなのに僕は、なぜだか落胆のような気持ちを抱えた。
「そっか
…
ううん、そうだよね」
「でも、助けることができたのは
…
お前だったからだと思う」
彼は下がっていた顔を上げると、僕のことを真っ直ぐと見つめてくる。
「ほかの人相手だったら
…
できても、遺体は元に戻せてた
…
程度で終わってた気がする」
「お前だったから、俺は助けることができた。お前じゃなきゃ、俺は
……
この結果にはならなかった」
…
それだけだ。
…
と、彼は付け加えた。
僕はそれに、返す言葉が浮かんでこなくて
……
そっか。とだけ返した。
数舜の空白。
その後に、彼はまたその口を開く。
「お前はもう、こっちに関わるな」
「
…
理由を聞いても?」
僕がそう尋ねれば、逆に彼からも、"アイツ"の能力は知ってるか?という問いが返ってくる。
それに僕は、頷きを返す。
…
"誰"のことか分からなくても、なんのことかは分かるから。
その返事で彼は、それなら分かってくれ
…
と、懇願するような言葉を言う。
「お前の魂は、次変形した時点で
…
終わる可能性が高い。無理に変形したものを、さらに押し戻した状態だ」
紙に一度ついた折り目は消えないし、繰り返せば金属も折れる。
…
そんな例えを話した彼は悲しげに、首を小さく横へ振った。
「変形から時間が経ってなかったこと、俺がお前の元の姿を知っていたこと
…
すべてがプラスに働いた」
俺はそう思ってる。
…
彼はそう言い切って、一呼吸を置く。
そして、澄み切った表情でこちらを見た。
「人は何かにつけて、意味を見出したがる。
…
でもそれでいいと思ってる」
「そうしないと、人は生きていけない」
「人間は言い訳をしないと、生きていけないからね」
無言で目を見開く。
…
話していく彼の声に、"彼"の
言葉
きおく
が重なる。
「それに
…
意味があると思えたほうが、満たされる」
「憎いなら殺せばいい」
「意味もなく生き続けることは、原始のころからやってる。
…
そこに何かを求めることができるから、人は心を持ち得てる」
「"魂"はある。でもそれは"心"じゃない」
だから
…
。と、彼は言葉を繋げる。
「これも
…
何かの縁なんだと。俺はそう思えた」
「価値や、重さなんてないんだよ」
「どうして俺は、ここにいるのか。生きているのか。
…
今までの俺は、生かされているから、としか思えていなかった」
「命もただ廻るだけ」「無意味で無価値」
待って、止まって。
そんな声も出せず
…
ただただ、『彼』を知る。
「
…
勝手な話だが
…
俺はお前に
……
生きていてほしかった。だから助けた」
「どう生きようと自由なんだ」
「でもそれは、俺があの場に居たからできたことで
…
お前だから、できたことだった」
「すべてを肯定するよ」
…
どちらも肯定の言葉。
それは甘い言葉か。傷を抉るような、針の筵か。
「あの人の言う通りだったんだと思う。
…
縁があったから、」
「やったのが俺なら」
「じゃあなんでッ
…
僕の母さんは死んだの
…
!」
彼の声を遮って
…
僕は訴えた。
…
僕の生存を心から喜んでいる言葉が、まるで呪いのように、僕を蝕んでいくから。
そして
…
その裏で、彼の声が"彼"になってしまいそうなのも
…
怖かった。
「その言い方じゃあまるで、母さんが死んだのはッ
……
?」
話していた僕は
…
彼が何も言わないまま、茫然としていることに気がついた。
その表情は、信じられないことを聞いたかのようで
…
何もわかっていない人の顔だ。
僕も思わず呆気にとられ、疑問が口から滑り落ちる。
「
…
知らなかった
……
?」
「
……
どういう、こと
…
だ。なんで
…
?」
彼の口からも、辛うじて絞り出された疑問。
…
混乱とショックが溢れ始めたのだろう。彼は完全に動揺していた。
そんな彼の反応に、僕はすっと感情の熱が引く。
…
"彼"の記憶が、遠のいた感覚がした。
僕が何をしたのか、僕が何故そうしてしまったのか
…
彼は知らなかった。
…
そのことを、彼の表情が物語っている。
彼は、なぜ僕があの場にいたのかも、僕が何をしたのかも知らないまま、僕を助けた。
…
僕じゃなくとも、そう行動していた。
やっぱり
…
彼の行動に、僕の犯した罪も、それに対する罰も
…
関係なかったのだ
…
。
すべてを話し、打ち明けた僕。
そんな僕の隣に座って、それを聞いた彼は
…
力なく項垂れて、呟きのように話す。
「だからお前は
…
あそこに居た。そういうこと、なのか
…
」
僕はそれに小さく、肯定の言葉を返した。
「このことは虎杖も知ってるのか」
「うん
…
。でもあのときは余裕もなかったから
…
」
ここまで詳しく話せてはいない。
そして、目が覚めたあと
…
時間はあれども、口には出せなかったことがあった。
…
それを今、彼にだけ、打ち明けたのだ。
「
…
その呪物と、仕掛けた奴は
…
こっちでなんとかする」
彼はそう断言する。
そんな彼を見つめて
…
僕は諦め悪く、呟く。
「僕には
…
何もできないのかな」
「
…
俺は、お前に恨まれて当然のことをしてる。お前をこっちに関わらせない以上、探すこともさせてやれない」
それは
…
僕には関わらせない、という言葉だった。
だけどそこには、僕への申し訳なさがあった。
…
僕にあった力を、彼が使えなくしてしまったから。だから僕は、関わることを完全に断たれてしまっている。
でも、彼が意識して、そうしたわけじゃない。それは分かっていた。
…
彼は、何も知らなかったんだから
…
。
しいて言うのなら
…
僕が、彼に、そうさせたのかもしれなかった。
彼は視線を下に向けて、淡々と話を続ける。
「犯人がわかっても教えない
…
事後報告になる」
「
…
そっか」
僕はそれに
…
露ほどのショックも受けなかった。
それは、記憶に靄がかかっているかのような状態だから。
…
というだけ、でもなかった。
呪物について話したとき、彼がこぼした言葉
…
「あれはそう簡単に手に入る
呪物
もの
じゃない。それこそ、ただ他人を殺すために"そのまま"を放り出すなんてこと
…
」
…
それが決め手とも言えた。
それ以上を彼は言葉にしなかったが、僕にはその先が理解できた。できてしまっていた
…
。
彼は悲しげな顔をして、こちらを見てくる。
「
……
心当たり、あるんだな」
「こうなった以上、察しはつくよ
…
」
「
…
そうか」
あの
際
きわ
で、囁かれた言葉。
…
馬鹿だったとしても
…
馬鹿だからこそ
…
わかってしまった、その意味。
なぜ
…
あんなにも、『死』が近くなってしまったのか
…
言葉を変えるのなら、それは縁のせいだとも言えた。
先ほど遮ってしまった彼の言葉。
…
彼が僕を助けられたのは
…
彼曰く、縁だという。
でも、そうだというのなら
…
母さんが死んだのは、言うなれば
…
僕が結んだ縁のせいだ。
なのに、僕が助かったのは
…
母さんが結んでくれた縁のおかげじゃないか
…
。
そんな思いを喉の奥に詰めて
…
僕は別のことを口に出す。
「ねぇ
…
宿儺の器ってなんなのか、知ってる?」
「
…
どこでそのことを」
「あの、呪霊が
……
」
『彼』と呼びそうになる唇を、無理矢理に動かした。
僕の家に置かれていた呪物。"彼"から教えてもらった、ソレの名前を
…
悠仁に言うことが、僕にはできなかった。
"彼"が悠仁に向かって言っていた言葉が、無関係とは思えなかったから。
「
……
端的に言うと、虎杖のことだ。何を言われたかは知らないが、そうなったのは虎杖本人も不本意だ」
「それに
…
そうなった要因に、俺も関係してる」
俺が、弱かったから。
…
そう呟く彼はぎゅっと、苦しげに眉を寄せる。
…
何があったのか、僕にはわからない。
やっぱり僕は、彼のことを知らないのだと実感した
…
。
そんな彼を見ていられなくて
…
僕はまた、話を他へ移す。
「あの、僕
…
君の実家に、引き取られることになって
…
」
唐突な話の流れに、彼はキョトンとした顔をした。
それから、納得したような声をあげる。
「あぁ
…
そうか、そうなるか
…
。
……
覚悟しとけよ」
「
…
そ、それって」
ただならぬ雰囲気に、僕は固唾を呑む。
…
僕ってやっぱり、あんまり立場が良くないし
…
彼はともかく、ほかの家族の人がなんて思ってるか
…
。
「映画館へ行くのに一時間以上かかるド田舎だ。ネット回線も、未だに電話回線しか通ってない、化石みてぇな町だからな」
「
…
へ?」
「家にwifiは飛ばしてるし、近場にコンビニはあるからマシだ」
ツラツラと述べられるそれに、今度は僕が目を点にする。
「俺の部屋にあるものは自由にしていい。本とかDVDとか、ゲームも勝手にしろ。セーブデータも気にするな」
「クローゼットの中身も好きなのあったら取っていいぞ。男物がいくつか入ってるし
…
スカートも履きたいなら履けよ」
「すっ、はっ履かないよっ!!」
咄嗟に、それだけは否定の声をあげる
…
!
そんな僕の反応に、彼はフッと息を漏らす。
「冗談だ。
…
一回りも下の女子のスカートを履くような、ふざけた大人にお前はなるなよ」
釘の差し方が、なんだかやけに具体的かつ真剣だ
…
。
呆気に取られていれば、彼は隣からスッと立ち上がった。
「じゃ、俺はもう行く」
「待って!」
さながら通り風のように、スルリと抜けていきそうな彼を、とっさに立ち上がって引き留める。
…
さっきまでの話の流れに、思わず流されかかってしまった。
こちらに向き直った彼へ、僕は言葉を投げかける。
「君のこと
…
なんて呼べばいいか、わかんないんだ」
「なんとでも、と言いたいが
…
そうもいかないか」
彼は悩んだように息を吐いた。
「とりあえず、今この場にいる俺は、青嶺衛だ。
…
お前の兄弟とも、友人とも
…
お前が受け取りたいように取れ」
そう言ってまた、すぐに離れようとする
…
その腕を引く。
「君はっ
……
僕は、君が僕のことをどう思ってるか、知りたい」
…
戸惑った表情を浮かべ、彼はこちらを見た。
それでも僕に折れる気はなくて
…
どうしても、彼からの言葉が欲しかった。確かめて、おきたかった
…
。
そのまま僕が、彼のことを見つめていれば
…
彼の、その長い袖の中から、そっと指が伸びてくる。
こちらの手を、包み込むように握ってくるその手は
…
きっと僕の手よりも小さくて、そして温度があった。
「吉野順平
…
俺の、弟。
…
お前が生きていることを、俺は嬉しく思う」
まるで祈りのように、その言葉は
言祝
ことほ
がれる。
サングラス越しに見えていた瞳が、今は伏せられたまつ毛で隠されてしまっていて
…
尚更、その雰囲気を煽る。
…
その伏せられていた目が開き、こちらを見た。
「傍から見たら、お前のほうが兄になるがな」
「それは
…
そうかも」
微かに笑みを浮かべた彼の言葉に、僕は控えめに頷く。
…
彼は高専一年だし
…
今の見た目は、中学生にも見えるから。
「じゃあな、順平」
そう言った彼は、今度こそ僕の前から去っていった。
そのときの僕には
…
諦めと共に、羨ましさもあった。
去っていく彼の後ろ姿は、行く先があったから。彼が望む、望んだ場所へ進むのがわかったから。
…
僕の"心"が望んでいる場所は、なくなったから。
僕が
…
なくした。
僕は、彼らと一緒に行けない。
それを噛みしめて
…
見送った。
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