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MN*B
2024-06-21 01:54:56
17748文字
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蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
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Ep.2 来る者到る。
シリーズ中第33話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。
このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいねを、いつもありがとうございます。
お待たせしました。
今回、ちょっと暗い話もしてます。
詳しい時系列については、これのちょっと下あたりに書いてます。
ちなみに、この話の順平は、家入さんから自分の身体に起こったことくらいは聞いてるくらいの…そういう呪術知識がほとんどないままの順平です。
次回、時系列が『E.15 ヒトもケモノ』と『E.16 結び目の解き目』の、ちょうど間の話となります。
2週間以内にあげます。この期間だけはバチバチに守りたいです。
【時系列のおさらい】
E.9 束の間
前回の七海の回想…滝中問答
今回の順平の回想…6P
E.10 山椒魚に水
E.11~13(交流会初日) = Ep.1:同日
みたいな感じです。
正直、既出な情報の詰め合わせのような気もするので、サラっと読んでいただけたらいいかと。
(ただし、サラっと読めるような文字数に抑えきれませんでした…)
#オリ主 #夢術廻戦 #七海建人 #灰原雄 #オリキャラ #吉野順平
2021年10月22日 06:57
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からん、ガラン
…
と、硬くも転がるような、軽い金属の音が響いた。
道を歩く音
…
少し先を行く君。それを追いかける形で、その後ろを歩く。
桜の花びらが舞う。楽しげにそれを捕まえた君が、こちらを向いて笑う。
「七海!」
その声を、随分と久方ぶりに聞いたような気がして
…
何故だか、視界がボヤけた。
思わず私が足を止めれば、彼はそんな私を見て不思議そうな顔をする。
…
それがまた胸に、痛みとして刺さる。
なんでそんな気持ちになるのか、自分でも疑問を感じ
…
そして、どこかで聞いたような話を思い出す。
人が最初に忘れるのは、聴覚。
亡くした人の『声』だという。
茫然と、舞い散る花のなかに立つ彼を見る。
何かに気づいたような彼が、私へ微笑んだ。
…
互いに口を開く
…
その前に。
桜吹雪が、私の目の前を覆い隠した。
ハッと目を覚まし、勢いよく身を起こす。
…
見慣れぬ部屋で目覚めた、のは
…
彼の家に泊まった、か
…
ら?
眠る前と全く違う部屋に、自分がいることに気がつく
…
!
咄嗟に立ち上がり、構えを取る。
…
自分の恰好は変わらないが
…
荷物に隠す形で置いていた、己の武器もここにはない。
騒ぎだしそうになる心臓を抑え、冷静に目の前を見据える。
…
周囲は特に変哲もない、ごく普通の和室。しいて言うのなら、調度品もなく、殺風景な客室に見えた。
腰の高さくらいからある障子に手をかける。そっと開ければ、するりと開き
…
ガラス窓が姿を現した。
窓の外は暗く、未だ夜の時間帯のようだ。
…
そう思い、付けっぱなしにしていた腕時計に目をやる。
…
もうすぐ夜明けのはずな時間を、時計の針は指している。
少しの仮眠をとった後
…
深夜になってから、改めて活動するつもりだった。
それなのに、完全に寝過ごしてしまっている。そもそも、この部屋は一体
…
?
「ここは
…
」
思わず独り言がこぼれる。想像よりも掠れた自分の声が、シンとしていた部屋に響いた。
そして横手から、サーっと襖が動く音
…
!それに身構えながら振り向く。
「儂の家じゃ」
入口に立つのは、昨日出会ったご老体
…
風間さんだ。
「なぜ
…
?!
…
あなたが、私をここまで
…
?」
彼の家ということは
…
言っていることが本当なら、神社へ行く途中の、あの辺りになるが
…
。
歳の割に壮健そうとはいえ、私を一人で運べるとは到底思えなかった。だが、現状そうとしか
…
。
「違わい!
…
お前さんが、歩いて来たんじゃ」
…
信じられるわけがない。そんな、夢遊病のようなこと
…
。
そう考えた私を責めるように、彼は鼻を鳴らす。
「ふん
…
信じられんでも関係ないわ。まず自分の足裏見てみい」
足裏
…
?
彼のことを警戒しつつも、そろそろと己の足を覗き見る。
一時的に靴下を脱いでいた足
…
その足裏は、土汚れや砂がこびり付いている。
ついでに周りも見れば、少しばかり歩いた畳の部分も、その汚れが移ってしまっていた。
…
最悪だ。
「だから儂は帰れと言ったんじゃ。
…
ったく、なして人の忠告を聞かんもんか
……
」
彼は不機嫌そうな顔を隠しもせず、ブツブツと不満をこぼしている。
「なぜ私がこんなことになっているのか
…
ご存じなんですね」
視線で問い詰めると
…
彼は深々とため息をついた。
「詳しくは儂も知らん。だがこうなってもおかしくない
…
そういった、危うい状態であることは分かる」
まさか本当に人まで狩られそうになるとは
…
と、彼は呟きながら眉をひそめる。
その言葉で、私も彼の表情が移ってしまったように、眉を寄せた。
「だから私のことを、町から追い返そうとしたんですか」
「止めなければ最悪
…
境内に生首と、それと泣き別れした胴体がすっ転がるかもしれんじゃろうが!」
グワッと迫るような気迫で怒鳴られる。
彼は人差し指を私の鼻先に突きつけながら、言葉も突きつけていく。
「お主がどんな人間かは知らん!じゃが、あそこで死なれるのも迷惑なんじゃあ!!」
息も荒く言い切った彼は
…
私が先ほど開けた障子をスパン!と、小気味の良い音を立てて閉めた。
…
昼間のときよりも、さらに荒々しい物言いと挙動だ。
そんな彼を刺激しないように
…
私はじっと黙って、彼が落ち着くのを待つことにした
…
。
しばらくして。気持ちを落ち着けたらしい彼が、私の視線を見返し
……
不承不承と言わんばかりに、じんわりと喋り出した。
「今、あの社に祀られている存在は、果たすべき仕事を全うしておるだけじゃ。
…
と言っても過言ではなかろう」
果たすべき仕事
…
?それに、祀られているということは
…
昼間に行った神社、
靑山祇神
アオヤマツミノカミ
というものだろう。
ずっと感じている気配、そしてこの場所の位置的にも、登った先が神社にあたる。
…
ほぼ間違いないと、私は考えていた。
彼の言葉からして
…
今までは人が巻き込まれるような"現象"ではなく、"私"というイレギュラーによって、いつもと違うことが起こったのか。
"信仰"している側にとっては、迷惑な話かもしれないが
…
しかし。人を手にかける可能性があるのなら、祓わなければならないだろう。
…
いつ、暴れ出してもおかしくはない。
「一体この町で
…
この先の神社で、何が起こっているんです。
…
その存在は、何をやっているんですか」
「詳しくは、今の儂らには到底あずかり知らぬところじゃて。
…
その声を聞ける者はおらんのだから」
付け加えるように言われたその言葉に、思わず黙りこむ。
…
聞けるとするなら、やはり"彼"なのだろうか。
だがそれも呪霊が相手なら、呪術師で可能ではないのか、と考える。例外はあるようだが
…
しかしあれは、呪霊の力が落ちきっていたから、とも言えた。
「それは
…
私も、ですか」
「聞けるかもしれんが
…
聞こうとするものが間違っとれば、聞こえるものも変わる。お前さんらに聞けるとは思っとらん」
儂はその力がない故に聞けんがな
…
と、諦めの含んだ声で、彼は話した。
「
…
私は試していませんが、そう考える根拠はなんです?」
「儂も試したわけじゃのうて
…
そういうもんじゃ。
…
しかも話す気が双方になければ、対話は成り立たんじゃろ」
そう話す、具体的な理由はなさそうだが
…
確かに、話す気がこちらにあっても、あちらがそうでなければ無意味か。
だが、試さなければ分からない。
それに
…
先ほどみていた"夢"。あれをみせたのが神社にいる呪霊なのだとしたら、その意図を知りたい。
あれは、純粋に私がみた夢なのか
…
そうやって私を"釣った"のか。
「確かめに行きます」
「ハァ!?」
気だるそうにしていた目が、大きく見開かれた。
「馬鹿言うでない!お前さんを道から外すのに、こちとら苦労したんじゃ!!」
「では、どうしろと?」
言葉に詰まった様子の彼は、数舜してから、また深く息を吐いてみせる。
「とりあえず夜が完全に明けるまで、ここに居るしかなかろう。明けたら、青嶺家へ戻れ」
夜が明けたら
…
その根拠は?
そう思った私の顔を見て、彼は次に窓の外を見た。
…
外はまだ薄暗い。
「今は夜と朝の境界
…
狭間にある。無暗に出歩くもんじゃないわい。
…
また連れてかれるぞ」
「屋内にいたのに、こうして出歩いてしまった以上、同じだと思いますが」
彼は、ム
…
と唸り声をあげて黙った。
…
この人も全てを把握しているわけではなく、言い伝えの類いに沿った考えをしているだけなのだろう。
…
それも合っているか微妙なところか。
私に起こったことは、睡眠が条件になっているのではないかと思うのだが
…
しかし彼は、「人まで狩られそうになるとは」と先ほど話していた
…
。
「私が来るまで、一体何が狩られていたんです」
「
…
人ならざるモノ、魑魅魍魎の類いじゃ。水神様がいなくなってしもうてから、ずっとそうなんじゃろ」
…
素っ気なくだが、やはり質問には答えてくれるようだ。
そして、今まで狩られていたのは呪霊ということなのだろう。
…
それなら、"餌"を錯覚させて釣っている可能性のほうが高いか
…
。
とりあえず、話がわかるらしい人物に巡り合えたようだ。
今はできる限り、聞けることを聞いておきたい
…
。
「この町について、教えていただけないでしょうか」
私はそれを知りに来たんです。
…
そう言って、相手の返答待つ。
…
この町にもう一本宿儺の指があるだとか、なんなら呪霊が取りこんでいると言われても、私も今さら驚かない。
風間さんは考えるように黙り、そっぽを向く。そして段々と、唸り声を強くした。
「
……
何も言わず、巻き込んだのは確かじゃからな。物によっては教えよう」
葛藤を済ませた彼が、どうせこのままでは居れん
…
と、苦々しげに呟いている。
…
了承は得られた。問題は、何をどう聞くかだが
…
。
私は内容を選びつつ、口を開く。
「なぜ、この町に
……
宿儺の指があったのか、ご存じですか」
「す
…
?なんじゃそれ
…
」
彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
…
完全に素の言葉だ。彼から聞いた声のなかで、一番穏やかだったかもしれない。
「この町にある小学校の近く
…
今は遊歩道しかない、昔はその場所にある川の底にあったはずの物なんですが
…
」
昼間のうちに町を少し回った際、報告にあった宿儺の指が隠されていたところを、確認しに行っていた。
…
のだが。
事件があったせいか、もうその場所が不要になったのか
…
あったはずの川は埋め立てられ、水気もない遊歩道が造られていた。
即ち
…
あの現場からは、本当に何もなくなってしまった。ということだった。
「
…
そうか。お前さんらはそう呼ぶのか、アレを」
私が言っている物がなんなのか、相手にも見当がついたのだろう。
また険しい顔をして、彼は喋り出した。
「儂らは、アレを呼び名で呼ぶことも、付けることもない。
…
名もない者に、名を与えることは禁じられておる」
名を与えることは禁じられている
…
これは先ほどもそうだった、昔からの言い伝え的な部分だろう。
だが、名がないモノ
…
それは昔から知られていなかった、忘れ去られたということ
…
だろうか。
…
しっくりこないが、知りたいことはそこではない。
「アレのことなら良かろう。なぜアレがあそこにあったのか
…
だったか」
「そうです。この町の守りのためだと、こちらでは予想されていますが
…
」
「まあ
…
そうじゃな
……
そう言われれば、そうかもしれん」
歯切れの悪い返答に、私は訝しんで彼を見る。
「そうでないなら、一体なんだと
…
?」
「意味を与えられた置物じゃな」
…
?
宿儺の指、に
…
ついての話であっている
…
としても
…
なんだそれは。
私が上手く理解できないでいれば
…
彼は深く息を吐き、改めて喋り出す。
「物もいないし、言っても構わんじゃろ
…
。
…
実はアレ、意味はないんじゃ」
「は」
「具体的にどうとか、理由付けこそされはしたが
…
そう思わせるための建前でしかないわけじゃな」
腕を組んで、至極真っ当そうに、そう話す彼。
だがしかし、私にとっては予想外の答えで、思わず思考がぎこちなくなる。
それは、つまり
…
。
「魔除けとして
…
この町にあった一種の結界を、保つ位置取りだったのではなかったんですか
…
?」
「ブハハハハハ!!アレは”流し、隠す”水の下にあったんじゃぞ!そんな力があっても、ないようなもんじゃいッ」
そのまま彼は腹を抱えて笑い始めた。
…
ゲラゲラと、ツボにハマったように笑っている。
この件に関して、この答えを出したのが自分ではないだけに
…
解せない。
そんな気分に、私も息を吐く、
「
…
ッ!!」
バッと後ろを振り向いた。
…
呪霊の気配を、微かにだが感じる。
同時に、笑っていた彼もピタリと黙りこみ、真剣な眼差しで壁の向こう
…
気配の先を見ている。
「こっち、ついて来い
…
」
心なしか潜めた声で、風間さんはそう告げると、廊下のほうへ私を手招いた。
どうするべきか僅かに迷ったものの
…
結局、大人しくついて行くことにする。
静かに歩いていく彼の後ろをついて、家の奥へ
…
階段を昇り、二階にやってきた。そして、その階にある一室へ入る。
そこで彼は、古ぼけた片眼鏡をかけると
…
無言のまま、顎で窓の外を示す。
半分ほど開けられた障子の隙間から、窓の向こうを覗きこむ
…
。
「
…
あれは」
この家に到るまでの道
…
そしてその先にある、神社へ繋がっている坂道が見える。
人の手によって木々が開かれた、その限られた空間。そこを進んでいく影があった。
…
呪霊だ。
だが、その呪霊
…
様子がおかしいように思える。
ノタノタと、目的もなく歩いているようでいて
…
目的地があるかのように、道を進んでいく
…
。
「喚ばれとる
…
山神様に」
風間さんが、小声でそう話す。
…
低く、掠れかけた声だった。
…
まさか
…
先ほどの私も、あの呪霊と同じだったのか。
動揺を押し殺しながら、そっと窓から離れる。
そして、何も嵌っていない目元を押さえ
…
その手を下ろす。
「
…
行くのか」
スッと表情の消えた顔で、彼は私へ尋ねた。
私は無言のまま、部屋の外へ足を向ける。
「儂は止めたからな
…
勝手にせい」
不貞腐れたような声が、背中越しに聞こえた。
一度止めて貰った恩はあれども、行かないという選択肢はなかった。
"呼ばれている"ということは、つまり。あの先に居るのだ
…
目的の相手が。
だが、当初の目的以上に、知りたいことが出来たからこそ
…
私は強行に出る。
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