MN*B
2024-06-21 01:54:56
17748文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

Ep.2 来る者到る。

シリーズ中第33話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。

このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいねを、いつもありがとうございます。
お待たせしました。

今回、ちょっと暗い話もしてます。
詳しい時系列については、これのちょっと下あたりに書いてます。
ちなみに、この話の順平は、家入さんから自分の身体に起こったことくらいは聞いてるくらいの…そういう呪術知識がほとんどないままの順平です。

 
次回、時系列が『E.15 ヒトもケモノ』と『E.16 結び目の解き目』の、ちょうど間の話となります。
2週間以内にあげます。この期間だけはバチバチに守りたいです。

 
 

【時系列のおさらい】

E.9 束の間
前回の七海の回想…滝中問答
今回の順平の回想…6P
E.10 山椒魚に水
E.11~13(交流会初日) = Ep.1:同日

みたいな感じです。

正直、既出な情報の詰め合わせのような気もするので、サラっと読んでいただけたらいいかと。
(ただし、サラっと読めるような文字数に抑えきれませんでした…)
 


#オリ主 #夢術廻戦 #七海建人 #灰原雄 #オリキャラ #吉野順平
2021年10月22日 06:57



 なんだか、朝早くに目が覚めてしまった。
薄暗闇の中ケータイで時間を確かめた僕は、こっそりと息を吐く。
これから毎日、ここで寝て起きるのだという実感が湧かない。

取り留めもなくいつも通りの行動でケータイでネットの海を漂う。

「回線重いなぁ

昨日聞いた話を実感しつつ、そんなことを呟いた。
お兄さん「回線がクソすぎて、俺はこの家から出たと言っても過言じゃない」なんて言ってたな。

遅々として進まないロード画面を前にして僕はそれを諦め、ベッドから抜け出した。



 そろりと部屋を抜け出して、そばにある階段を下りる。そして、あてもなく廊下を歩いていく。
どれがどの部屋か教えてもらっていても、あっているか自信がない

そうやって歩いていけば、空間のある開けたとこに出た。玄関だ。
確かあっち側が居間だっけ。なんてふうに、記憶を思い返しながら通り過ぎようとして気になることがあって、足を止めた。

 ガラスの嵌った戸から、朝日だろう光が微かに差し込んできている。
だけど、それを遮るように、黒い影が玄関前にできていた。
おそらくそれは人影で、玄関前で誰かが座りこんでいる。それが磨りガラス越しに薄っすらとわかった。


 玄関へ下りて、靴を履く。
恐る恐る、戸へ近づいてゆっくりとそれを開ける。鍵はかかってなくて、すんなりと開いた。
朝の澄んだ空気に、独特の煙たさが加わった風が、開けたそばから流れ込んでくる。

んぉ。お前か」

滑舌悪くそう言ったのは、その口に煙草を咥えたお兄さん。彼は驚いた様子で、こちらを振り返っている。

「あ、えっとおはよう、ございます

言うことに困って結局、僕は挨拶を喉から絞り出した。
そんな僕の挙動不審さも、彼は特に気にせず、おはよー。なんて軽く返事をしながら、吸っていた煙草の火を消してしまう。
自然な動作だけど、ちょっと気を遣ってもらってる気がした。

だからか何か話すこともないけれど、なぜだか外に一歩踏み出して、彼の隣に座る。
母さんのとも、僕をイジめてたヤツのとも違う、煙草の匂いを嗅ぎ取った。

「早いな。そんなに早く起きても、することなーんもねぇだろ」

彼はそう言うと、僕の隣でくつくつと笑ってみせる。
それに僕も苦笑いを返してから、まぁはい。とかって、微妙な返事をした。


 そこから、無言が続いてしまう。
朝日の照り返しが強くなっていく地面を眺めても、僕には何も話す内容が出てこない。
隣の彼もそうなのか手慰みに、手に持ったオイルライターの蓋を、開けたり閉めたりしている。
彼が指を動かすたびに、キンカチンと、金属の音が響いていた。

なぁ、えぇっと順平」

「なんですか?」

僕はチラリと、彼のほうへ顔を向ける。
昨日とは違い、なんだか少し落ち着きのない感じで、彼は話を始めた。

「お前って、海外行く気あるか?」

ポカンと、彼のことを見上げたまま固まる。

「は、え?えっ?」

「あぁいや、悪ぃな。順番に話してけばいいか?」

突拍子もない話すぎて僕はロクに返事もできないで、ただただ頷いた。

 きまりが悪そうにしながら、彼は話をしていく

「本当はあいつにするはずの話だったんだ。去年くらいからか、なんか嫌なカンジがすんだよ」

彼は言葉に悩んでいるようで、目をすぼめて難しそうな顔をする。

「微妙に治安が悪いってか、裏でヤバイことがあってるみてーな陰謀論に近いけどな、一部じゃそんな噂があってだ

「そんなときに、あいつも"ダウン"するし。環境を変えたりぶっちゃけ、日本から出たらいいんじゃねみてーな」

うーんと、彼は言葉に苦心して唸っている。
彼の言っていることは、根拠もなさそうな、無鉄砲にも思える提案だ。
それに、深い理由があるというわけでもなく行動力だけがあるような、そんな雰囲気だった。

僕はどう返せばいいのか困り無難なことを言う。

「でも海外のほうが、治安って悪そうですけど

「まぁそうだけど、そういうこっちゃなくて……とはいえ、この話も今さらだしな」

言葉に詰まった彼だったが吹っ切ったように、力強く頷く。

「お前もたぶん"えらい目"にあったっぽいし、言ってみただけだ。引っ越してきたばっかで悪かったな」

彼はそう言って、その話を終わらせる。そこから、ちょっと無理矢理にだが、話題を変えた。

「お前はあいつと会ったことねぇよなぁ。あーえっと昔の話じゃなくて、最近な」

「いえ、ありますよ……一応」

「え、マジか」

お前より身長高かったろ?と、彼は苦笑した。
僕は答えに困って、曖昧に頷く。
衛くんは僕より低いんだけど"彼女"のときは寝ている姿しか見てないから、よくわかんないな


 さっきまでの話はなかったことのように、お兄さんは振舞ってやっぱ一回見に行っとくべきな気がすんなーなんて独り言をこぼしながら、立ち上がる。
それと同時に、彼は握っていたライターをポケットへしまいこんだ。
それを僕は、下からぼんやりと眺めた。



 もうそろそろ中に戻るかと、お兄さんに促される。
それに逆らう理由もなく、僕も立ち上がった。
彼に続いて、玄関に入ったとき

「ん?なんか、誰か来たな」

そう言った彼は、一歩また外へ戻った。

「へ?」

「いや、ほら玄関前って砂利だろ。だから敷地内にまで車が来たりすると、すぐ分かんだよ」

耳を澄ましてみれば確かに向こうのほうから、それっぽい音が聞こえてくる。
そして、段々と大きくなったかと思えばお兄さん越しに見えた外に、ゆっくりとこちらへ走って来る軽トラが見えた。運転席には、昨日会った風間って人が。その助手席には七海さんが乗っている!?

 二人が乗った車は玄関前で止まると、そこからどちらともが下りてきた。ジャリジャリと音を立てながら。
色々と気になりはするが特に目を引いてしまったものを言及する。

「七海さんなんで下駄なんですか?」

……詳しいことは聞かないでいただけると助かります」

長々とため息をついた彼の足元、その履物が古めかしさを感じる下駄だった。
なんで?