MN*B
2024-06-20 22:14:38
23887文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

E.9 束の間

シリーズ中第23話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。
このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいねをしてくださって、どうもありがとうございます。
シリーズ一作品目にタグも頂けており、嬉しいです!
そして、お待たせしました。
今回、状況説明回みたいな感じです。
想定よりめちゃめちゃ長くなりました…。
順平生存が確定しましたので、救済タグをつけました。
次回、新たな章に入る感じの雰囲気でいくかと。いやでもあんま変わんないです。
どういう展開にするか、はっきりとは固めてないので…また2週間くらい間が空くと思います。

伏黒から真希さんの呼び方はいつからなのか判断ができなかったので、とりあえず今回は禪院先輩で通しました。脳内だけですし。
あと、七海さんと伏黒が知り合いなのか判断できなかったので、とりあえずああいった書き方にしました。
五条先生のまいっちんぐポーズは、異様に似合ってる気がして笑いました(妄想)。
ドロボウネコチャンタチィ!!するならやりそう…。

【順平の処遇について】
救済するにしても、そのまま呪術師をやらせるのはどうなんだろうと思った結果がこれです。ほかにも意味合いはありますが…。
書き手としては、落としどころはここかなと思って、こうしました。
あと、ナナミンと順平で、夢のタッグフラグを立てときました。ぶっちゃけ、それがやりたい部分もあります。
番外編扱いで書くと思いますが…どの辺りで上げるかは未定ですね。
【袖-石-衆生:元ネタ】
袖:袖振り合うも多生の縁
石:躓く石も縁の端
衆生:縁なき衆生は度し難し

2021.6.30 冒頭をちょっとだけ変更。意味はないけど、ちょっと気になったので。

#オリ主 #夢術廻戦 #虎杖悠仁 #吉野順平 #五条悟 #七海建人 #救済
2021年6月7日 23:10



「硝子本当に彼はそう言ってたの?」

僕は自分でもなんの為の確認なのかわからないまま、その疑問を口に出した。

 事の顛末を聞いた僕は、その彼の様子を視るために救護室へやってきていた。
横にいる硝子は、僕のほうへチラリと視線を向けたあと、またそれを前に戻す。

「ああ。実際、今の彼女を視ればわかることじゃないかそれが本当なのか」

ベッドに寝かせられている彼女。
その彼女に流れる呪力そこに呪いの気配は混じっていない。

ただし。

「問題はこっちだな」

硝子はそう言うと、彼女が着ている病衣に手をかけって、

「ちょーーーーい待って!!いや事情はわかるけどイケナイ気がしちゃうだって男の子だもんっ!!」

「ふざけるな彼は気にしないだろ」

「ソレはソウですネ」

前例があるだけに、思わず片言になってしまった

 結局。一応配慮されてあっぴろげにされた、彼女の胴体。
その脇腹辺りに似つかわしくない、鈍色の

「呪い

金属特有の鈍い反射表皮に露出している部分が円形に広がり、まるで浸蝕していく途中のようだ。いや、”まるで”ではなく、きっと正しくそうなのか。
それは植物のように身じろぎをせず、その根を皮膚の下に潜りこませているのが透けている。どちらかと言えば、菌糸に近いようにも思えた。

「寄生されてる。おそらく、これが獣鉤手それの本体だ」

体質でも術式でもなく、己に寄生する呪いを使役している状態本人も知らずに制御していたのか。

「衛のときにはなかったんだよね?」

「ああ。その気配もなかっただろ?彼の肉体 かたちが、絶縁体のような役割を果たしていたんじゃないか」

だから僕の眼でも呪力を感知しないし、その内側にあるモノは見透かせない。すべてを内に潜ませ、覆い隠す。
だがこれは、きっと彼にとっても予想外のことだろう。これは彼にではなく、彼女に憑いている。
彼を含めればある意味、彼女には二体の呪いが憑いていた。


摘出できないの?」

「できたらやってる。問題は獣鉤手じゃない、彼女の状態だ見てろ」

硝子はポケットからメスを取り出した。いやなんで入ってんの?
そしてそれを、勢いをつけて、寝ている彼女へ向かって振り下ろす

傷一つつけられない。そのせいで点滴の針も刺さらない」

その言葉のとおり、メスの刃先はその肌に刺さらず、わずかに沈みこむだけだ。
肌の柔らかさはそのままに、外傷を負うことがないか。
その状態を保つことで、最低限の生命維持を行っているのだろう。

「どれくらい持つ?」

「一か月それくらい持ちそうだと診てる。だけど、彼女の術式がいつ切れるかは分からない」

今の状態は術式によって成り立っているだろうからなと硝子は呟いた。

「オートで発動し続けてるわけか」

「それのせいで、獣鉤手の摘出に挑むこともできない。術式の緩和や、解除ができればいけるかもしれないな」

それで連想するのは今まさに、憂太が探しに行っている呪具 黒縄。それに術式を乱す効果があるのは実体験済みだ。
あれば可能かもしれないがそれは未だに見つかっていなかった。

「もしくはこれを上回る威力で、この部位を丸ごと吹き飛ばし、すぐに治療を施す」

軽くそんな方法を言ってくる硝子。それに思わず空笑いを返す。

「エゲつなえ、僕にしろとか言わないよね?」

……聞いてないのか」

どこか意外そうにも聞こえた声色。僕はその響きに嫌な予感がした。


「2週間が経っても目覚めない場合、その方法を試す」

詳しいことは改めて夜蛾学長のとこへ行けと、素っ気なく言われる。
その態度からして、このことは確定事項なのだとわかった。

 獣鉤手は、準1級術師を切り裂いた前例がある。術式が切れたとき、寄生している獣鉤手がどういう挙動をするか分からない。
だから排除しておくべきなのはわかるけどリスクが高すぎる。

改めてその命は、天秤にかけられていた。


 なぜ、そこまでするのか。
そう思った僕のことを見透かしたように、硝子は改めて話を始める。

「今の彼女には脳波がない。彼がいたことで、この身体が動いていたのだとしたら」

「本人はもう死んでるって?」

僕が食い気味に言えば、彼女は冷静なまま、そうだと頷いた。

「術師の意思とは関係なく、術式だけが生きて延命を行っているだけに過ぎないのかもしれない」


かける命すら失われていたとしたら。
今、この天秤に乗せているのはなんなのだろうか。



 阿古屋あい。
彼女につけられ、そして表示されている心電図は波打っていない。
体温も低すぎてまるで死体のよう。

それでも、数十秒に一度、その心臓は脈打ち。胸は緩やかに、遅すぎるリズムで上下する。
体温も通常より低いだけでないわけではない。


 究極の仮死状態。
発動し続ける術式によって生かされている。

その身に巣食っていたはずの呪いは、その気配を消していた。




 僕は気を取り直して、ほかに方法がないかを模索する。

「棘の呪言は?」

「効かなかったよ。だからこそ。起きないんじゃなくて、起きれない可能性がある」

不可能だから効かない、か。
改めて、寝ている彼女の状態を視れば呪力が穏やかな湖畔のように凪いでいた。

術式もしくは呪力で守っている状態である可能性は?と尋ねれば、ありえなくもないなと返ってくる。

「それと。何度か試した時点で、狗巻への負荷、跳ね返りが結構起こってねあまり試行はできなかった」

「効かないだけならわかるけど負荷ってどういうこと。衛は効きやすい、そのはずだ」

「青嶺はな。逆に、青嶺じゃない彼女の場合、狗巻より格上ってことなんじゃないか」

術式。そして呪力量。
その能力のポテンシャルは計り知れない。
おそらく万全の状態でも、僕より呪力はないだろうけど七海の報告も気になるところだ。


 魂に触れ、その形を変える呪霊。そしてその影響を白紙にした彼。
魂への干渉それに伴う、魂の知覚。視覚と聴覚という違いがあれど、似通っている。
しかも、形を変えられた人間は反転術式で治せる見込みがない以上、似たような術式であるとみるのが自然だった。

 そして。報告にある吉野順平は術式を扱えず、視ることも不可能になっている。
後遺症の可能性もあるけど、ほかにも考えられる事柄があった
 それは、彼の術式は、他者の呪力に干渉ができる可能性。
魂の干渉によって、改造された人間に呪力を与えることができるのなら、逆を行うこともできるはずだ。

そんな力は、間違いなく特級として扱われる。