MN*B
2024-06-20 21:56:43
18507文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

探りか指導か休日か。

この小説は【蠱毒な夢術廻戦】シリーズの番外編です。
番外編言いながら、実質本編と化しました。

時系列としては、『E.2 回復する指針』と『E.3 死赦處生』の間です。

アニメディスク1についていたオーディオドラマの内容を改変したものになってます。
それと、つまりノベライズ版を踏まえた内容ですので、読みにくい部分があるやもしれません。

雰囲気重たい話になりました。ふざけた話になるはずが、ガチの話になってます。

 
ちなみに書き手としては、あのメイド喫茶の概念ぐちゃぐちゃ具合がすごく好きです。
あえてそう書いてありますよね?センスあるな~って思いました。

 

【書き手の言い訳的な言い分】
※『E.3 死赦處生』での流れにて
「それは人によって異なります。ですが、非公式記録とはいえ青嶺くんは特級を祓っている実績がありますから」
「え…ええ、まぁ。元がつくとはいえ特級仮想怨霊も祓っていますし…もしかして、これって言っちゃいけませんでした…!?」
焦りながらこちらを見てくる伊地知さんだが…俺はその辺よくわかってねぇから、聞かれても困るな。
↑これ、青嶺がわかってないのは、非公式記録とか祓った呪霊とかの実績についてのことです。

 
表紙は、かんたん表紙メーカー様からお借りしました。



#オリ主 #夢術廻戦 #五条悟
2021年4月2日 23:27



 俺たちが店内へ入ると、勢いよく店員さんが挨拶をしてくれる。

「いらっしゃいませー!ご主人様お二方を天国へご案内しまーす!」

「ここでは天国を味わっていただくために、この天使の羽と輪をつけていただいてます!」

差し出されるのは、作り物の羽と針金のついた輪。
は?

「解釈違いです」

「はい?」

「あー!うん、ごめんねこの子のことは気にしないで!」

別に羽と輪が悪いわけじゃない。だがと思ったところで、五条さんから背中を押されて、席まで押しやられた。


 注文し終わって、店員さんがいなくなったあと。
納得のいかない俺は口を開いた。

「ここってすげぇ納得いかないんだが大体、宗教は一貫してくれないか?」

しかも挨拶が「かしこまリィンカーネイション」って、概念めちゃくちゃだろ。
俺がそう訴えれば、向かいに座った五条さんは疲れたように笑った。

「ジョークみたいな店に、気にするのがそこっていやまぁ言いたいことはわかるよ」

君って面白いなぁと、しみじみと言われる。

「今のアンタの恰好も面白いぞ」

俺はなぜか避けられたが、五条さんは今、作り物の羽と輪を背負っていた。

「こういう店に来たなら、そこのルールに倣うのがマナーだよどさくさに紛れて、君はしなくてよくなったけど」

「アンタが背中押したからだろ」

図らずもガードされた形になったようだった。

「ってかさっきのやり取り、めちゃくちゃ懐かしかったんだけど!もうすぐあれから半年経つよ」

「それは気が早くねぇか?あと一か月ってほどでもないな」

なんだかしみじみというか、感慨深いようなそんな空気が流れる。
自然とお互い黙りこみ、目の前の彼と視線が合った感覚がした。


「君のこと、事情なんかをどこまで開示していいか、なんだけどね君の裁量に任せるよ」

ゆっくりと口を開いた彼は、ふざける様子もなくそう言った。
俺は本当にそうなのだとわかったが、念のための確認をとっておく。

呪いとか、身分とか、全部ひっくるめてか?」

「うん。君自身のことは君が話したいと思ったとき、話したい相手に話せばいい。呪いの件についても結局どうなってるのか、わからないことだらけだしね」

俺は一体どうなっているのか。今の俺についてわかっていることは少なく、現象からの推測で成り立っている。

「もしかしたら君の術式についても、君の中にヒントがあるのかもしれない。誰かに話しているうちに、見えてくるものもあるんじゃないかな」

俺が使っている、身体に刻まれた術式。本来なら、幼い頃4~6歳くらいで自覚するものだという。
さすがに二十年近く前のことなんて覚えている自信はないがきっかけがなければ、思い出せないのは確かだ。

彼はそうやって落ち着いた声で話したあと、少しおちゃらけた様に態度を和らげた。

「あ、呪いの件に関しては信頼できる人にしか話しちゃダメだよ。その辺はわかってると思うけど、念のためね」

俺はそれに頷いて返答する。

「大体、そんなこと話すのってそういう相手ぐらいなもんだろ」

「それはそうん?」

五条さんが話している途中で不自然に固まる。
俺が不思議に思ってそれを見ていれば、彼は首を傾げた。

「え、それってつまり僕が信頼できるってこと?」

「は?いきなり何言ってんだアンタ」

話の流れがワケわかんねぇんだが
そう思って怪訝な目を向ければ、それを受けた五条さんは不可解そうに喋る。

「じゃあなんで僕に話をしてくれるワケ?」

聞かれるからだが」

「待って、それ本気で言ってる?」

「お待たせしましたー!」

そのとき、店員さんが注文の品を持ってきてくれる。
五条さんの前にはパンケーキとカプチーノが、俺の前にはオレンジジュースが置かれることになった。

 店員さんが下がっていったあと、俺らはお互いに微妙な空気のまま口を開かずにいた。
彼は静かにカプチーノを手に取って、口をつける。
そうやって、まるで気分を落ち着かせるかのような行動をとったあと、また喋り始めた。

「僕って結構、君と仲良いんじゃないかって思ってるんだけど


何を根拠に言ってるんだ、この人

「いやホントなんで、そんなマジでわかりませんみたいな顔するの?」

わかんねぇからだが
俺が困惑を隠さずに彼を見れば、彼も同じような感じだった。

前にも似たような話、しなかったか?」

「したっけ?あ~電話でしたよね、なんて言ったっけ君

「仲良いの基準がわかんねぇってなこと言ったが」

未だにわかんねぇんだよな、仲が良いの定義
そう考えて、俺は内心首をひねった。

「仲の良さに基準ってある?」

納得できないといった顔をしている五条さん。
俺は少し考えて、とりあえず確かに言えることはこれだな。と思って、口を開く。

俺から言えるのは、名前と肩書きくらいしか知らない相手と、仲が良いと言えるのか?って辺りだな」

「もっと知ってることあるでしょ~。……僕、君から個人的なこと質問された覚え、全然ない」

そういうことだ。と首肯して、俺はオレンジジュースに刺さったストローへ口をつけた。
五条さんは、でも仲の良さって情報量で決まるもんじゃないし!と、何やら言い出した。
なんでそんな必死になるんだ

「一緒に出掛けたり呪霊祓ったりしたじゃん!てかこのナイスガイと一緒に居て、気になることがないなんてことある!?もしかして僕の年齢すら知らない!?」

その言葉に、はたと気がつく。
マジで知らねぇ。

よく考えたらヤベーな。そんな相手と一緒に出歩いてたのか」

なんなら実家行ったりもしてるなと、茫然となる。

「興味なさすぎでしょ!あとそんな相手ってどうなの、僕、担任!!」

うるさ
思わず顔をしかめれば、えぇと声を漏らしながら彼は肩を落とした。
そして何を思ったのか、椅子の背もたれにダラーっと身体を預けて喋り出す。

「只今質問受付中でーす。してくれないと拗ねまーす」

「すでに拗ねてんだろ、アンタ歳いくつだ」

「28。誕生日は12月7日~」

大人げねぇ上に、聞いてねぇことまで答え始めた。
俺が呆れた目で彼を見ていれば、ほかにないの~?とまで言ってくる。
俺は思わずため息をついた。
そして、なんか質問とかあったか?と考えを巡らせる。

俺が考えていることに気がついたのか、彼は体勢を前に戻すと、おもむろにパンケーキを食べ始める。
そしてそのまま、窓の外を見始めた。見えるのは古ぼけたビルだけだが
そういえば当初の目的は、呪われスポット探しでって、もしかしてそこのビルか?

「なぁ、呪われスポットってそこか?」

「そだよー。今視てるけど、気にしないで質問して」

俺はまた、ため息を漏らす。
もういっそ、聞かないでおこうと思ってたことでも聞くかと、考えをまとめた。


アンタ、何を待ってるんだ」

ん?と、不思議そうな声を出して、五条さんはこちらに顔を向ける。

「今日。待ち合わせのとき。言ってただろ」

へ?え、なんでそう思ったの?」

アンタがそう言ったからだろと、俺が呆れて言えば彼は、結構待ってるほうって言っただけだよね?と、困惑したように話す。
俺は頷きつつ、進まない話に少しだけ不満を持った。

「だから、ずっとなんかを待ってるんだろ」

あの流れなら、一つの事柄をじゃなくて、人との待ち合わせのときって受け取るもんじゃない?」

「じゃあ違うのか?」

聞かれた彼は、どうやってそこまで察してんのとこぼした。
察するも何もアンタがそういうトーンで話したからだろと、俺は眉を寄せて思った。

「別に答えたくないならいい」

「いや、そういうわけじゃないよ。むしろ聞いて」

彼は俺のほうをじっと見つめると、少しずつ話をし始めた。

「確かに僕は待ってるんだ。もちろん待つだけじゃなくて、行動もしてるだから教師をやってるんだ」

俺は口を挟まずに、彼の言葉に耳を傾ける。

「君は見ての通り無害な存在だけど今の呪術界、上の連中は躊躇なく処刑を選ぶだろう。はっきり言ってクソだよ」

悠仁だって僕が無理に執行までの猶予を与えたと、重く話す。
力がこもっている、至る所にそれが滲んでいる。だがそれは、次の言葉で緩んでいくのを感じた。

「そんな腐った呪術界を変える。内側から変えていくために強く聡い仲間が育って、僕に並ぶ術師になるのを、夢みてるんだ」

だから僕は待ってるほうだし、気も長いほうだと思うんだよね。と、彼は薄く笑った。

「君も、その一人だ。本来ならもっと早く、僕らは巡り会っていたのかもしれない」

俺の本来の年齢なら。もし、ほかの学生と同じ歳で呪術高専に入学していたとしたなら。
しかしそうだったとしたら、俺は

「出会うのが遅くなったのにも、きっと意味がある」

俺の思考を遮るように、彼は話を続けた。
落ちかけていた視線をまた彼に戻して、俺はその言葉を聞く。

「今の世代は皆、優秀だよ。君はそれに合わせるように調節してやってきたのかもよ?しかも、下の世代をサポートするためみたいにね」

茶化すように言葉を和らげて話した彼は、さも愉快そうに笑みを浮かべた。
俺はその理屈に戸惑って、つい反論を述べる。

それなら、アンタみたいに教職に就いてたりするほうがいいんじゃねぇのか。経験的にも」

それを聞いても彼は迷うことなく、口を開く。

「同じ立ち位置に居られるってのも、また別のアドバンテージがあるんだよ。僕なんて強すぎるせいで、あんまり生徒と一緒に居られないし!」

そう言って明るく振舞う。
俺はその言葉に目を細めて、結局いつも通り、尋ねるのをやめた。

「そうか話はわかった。俺から聞いておいてなんだが、言っていいか?」

「何?」

「真剣な話を、その恰好でされると困るな

しかも場所がメイド喫茶。
少し離れた席に、この話を聞いておくべきだろう生徒も2人。

もっとさぁ、ほかに言うことないの?」

困ったように笑う五条さん。
その背中には羽、頭には針金で浮かんだ輪がつけられているそんな姿だった。