戌丸アット
2024-05-15 20:56:14
50816文字
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きっとお前は

🔞ナギカン。嘘予告の世界観。オメガバース。



カンタロウに誘導されるように押し倒して直ぐに、噛みつきたいと渇望してやまなかった筋張っていながら柔らかそうな首筋に唇を寄せる。
泣けなしの理性で噛みつきすぎないように、でも歯型は残したい、と新たな我慢比べをしながら腕の中で喘ぐカンタロウの声、触れた時の反応の全てに満たされていく。

「んむっ!ぁ、なぎ、り!」
「ックソ!なんで手なんか噛んだ!もう我慢のしようが無いからな!」
「はぅ、んんっ!っふ、は!」

シーツの海から見上げてくるカンタロウが笑う。
そんな場違いさに困惑を超えて恐怖すら覚えた事を隠しナギリは、俺がお前を抱くんだと差し伸ばされた手を掴んでシーツに沈める。

「っんはぁ……合意、なら」
「あ?」
「合意の上なら罪じゃ、なぃ……よな?」
「は?……はぁあ!?」

一瞬、カンタロウは何が言いたいのか分からなかった。
しかし合意の上なら罪ではないと言うものが指している意味に気付いたナギリは改めてヒヤリとしたものが背筋を通る。
カンタロウは辻斬り被害者だ。
番になった際も合意の上だったとはいえ性行為となると話はまた違っていたか?と肝が冷える。
しかしカンタロウが言いたかったことは違っていた。

「っは、ぁ!俺も、お前も良いならお前は、ヒートの被害者にならない……よな?」
「なっ……お前、そんな事を気にしてたのか!?」
……ぅん?」

トロリと揺れる瞳は虚ろで、カンタロウの目の前に居る筈のナギリが聞いたのは朦朧としたカンタロウの独り言だったらしい。
目の前でどんどん一人で深みへと落ちそうなカンタロウにナギリは眉を寄せて、言葉が見つからない苛立ちで首筋を噛もうとして止めた。
そして涙で溺れそうな瞳を見た次の瞬間、目を合わせながら舌を差し込んでやる。

「馬鹿がっ」
「っぁ?えっ、んぁ?!」

舌先でソロリと撫でるとビクッと揺れ、瞳には火が灯ったように輝いてナギリは内心ホッとした。
ましてやガリッと言う鈍い音も口の中に広がる血の味も悪くない。
だが痛みに文句を言わねばならないだろう、と苦笑いを浮かべて、睨んでくる可愛げの無い男を見据える。

「チッ、舌を噛むな」
「貴様、なんのつもりだ!?こんな……っ!」
……ヒヒッ、お前が誘ったんだから最後まで責任持て」
「え、俺が?さ、誘ってない!っんん〜ぁっ!?」
「それは無理があるぞ?」

誘ってない!と言い張りワイシャツを捲って肌を撫でるナギリの手を止めようとしつつも、撫でてやるとカンタロウは悶えるだけだ。
文句を言うくせに抵抗しないアベコベさにヒートの恐ろしさを感じながらも、言動の変化に先ほどカンタロウ自身が吐露した言葉が嘘ではないのだと痛感してナギリは不思議と愉快だった。
押し返すのではなく、しがみつくように服を引っ張ってくるカンタロウの手が如何しようもなく擽ったい。
手を下へと滑らせて股の間に触れると不自然にスラックスは膨らみ、布は濡れていて相当これはコイツも気持ちが悪いだろうなと考えながらも脱がせるようにチャックやボタンを外してやる。
しかしナギリの舌を噛んだ影響なのか理性が幾分か戻っているらしいカンタロウは、往生際が悪かった。

「ぅあ!この馬鹿!触る、なァっ!は、ぁ!」
「馬鹿はお前だ、理性が残ってるから解してやるんだろうがっ!」
「なっ!?ぁ、指、ゆびがっ!ぅ、そだ!ん、はぁあ!」
「ッ……はっ、怖いか?」
「なっ!?誰に、言ってるんだ!っんん!」

男でありながら股の間が、しとどに濡れている感触に気付いてカンタロウは顔を真っ青にしているのに器用に真っ赤にさせて肩を震わせた。
しかしナギリは戸惑わず、体液を軽く指に絡ませると誰に教わった訳でもないのにカンタロウの更に奥に触れてみる。
すると意外にもあっさりと身体は指を受け入れ、浅かったが中に入ってきたナギリの指をキュウキュウと締めつけた。
その感覚はカンタロウを動揺させるには充分すぎるほどハッキリとした感覚で、本来ならば拾わないはずの快楽によって更に力は入らない。

「ぁ、ぐ!うご、動かすなっ!」
「は……断るっ!ここまで来たら俺は吐いても止まる気はないからなっ!」
「なっ!?吐く、くらいなら止めろっ!ぁ、ふ、ぅ!」

俺はもう考えるなんてウンザリだ、と呟いたナギリの表情はカンタロウには分からない。
勝手に溢れてくる涙と腹を満たす長い指の感覚に翻弄されていては見る余裕などない。
何しろ本来ならば許す筈のない指の侵入に焦っている自覚があるのに、頭に思い浮かぶのは多幸感だ。
あのナギリが優しく自分の肌に触れ、咄嗟に顔を隠せば「見せろ」と言って腕を掴んでくる。
まともに抵抗が出来なくてムカつく筈なのに「嬉しい」「もっと触って欲しい」という気持ちが湧き上がってくる己に驚く間もなく、思考は全て甘い痺れによって塗り潰されていくのを感じて、危険だと自覚していながらカンタロウは抵抗出来そうになかった。
ただナギリの方もカンタロウだけではなく己もおかしいと自覚しながらも、指を少し動かすだけで目の前にいる傷の男が喘ぐと途端にどうでもよくなっていく。
あの普段から厄介な筈の、同時に手放したくないと思った仏頂面の男が赤面した様子は見ていて愉快で、何処か満たされるものがある。
だからこそ指が3本に増えた頃には、すっかりナギリも己の性器は勃って我慢の限界だった。

「は、ぁっ……クソッ、挿れても良いか?」
「えっ、ぁ、なんで聞く!?……っぁ、その、かまわ、なぃ……
はぁ……あ?なんだって?」
「〜〜〜っ!うるさい!聞くな!挿れるならサッサと済ませろ!」
「うぐっ!?」

ドンッと拳で胸を叩かれた事でナギリは呻いて「こいつ本当にヒートなのか?」と一瞬、考えたが自分に組み敷かれている時点で大人しい方だなと考えを改める。
それよりも今はカンタロウの言葉に甘えて早く中に挿れてしまいたかったナギリは、焦れったさを覚えながら慌ててYに押し付けられていたコンドームを取り出す。
何個か渡されたゴムは、ゴミが出るものの使い勝手が良いという認識だが本来の使い方をすると比較的、性器のサイズがしっかりとあるナギリとっては少し面倒な使い方だ。
装着しながら「きっと君には必要だ、持っていると良い」とYに笑って渡された事を思い出して、少し萎えたことにより無事に着けられたなんて世も末だと思う。
しかしカンタロウの太ももに手をかけると、その手触りとカンタロウの何処か不安のありそうな反応によって吹っ切れたような気持ちが戻ってくる。
己の手から伝わる肌や体温を感じながらナギリは、ようやくハッキリとカンタロウは自分のものなのだ、と言えるのではないかと思うと何とも言えぬ満足感があった。

「え?ぁ待て!どうして正面からッ、ぁ゙あ゙!?」
「無理だ、ジッとしてろッ」
「ひ、ぅ!はっぁうっ!」

近い、熱い、という漠然とした感覚と共に挿れられただけでチカチカと目の前に火花が散る。
その感覚が怖くてカンタロウは己の上で吐息を吐くナギリに抱き着きたい衝動を憎まれ口を言うことで耐えたが、顔を背けると涙は勝手に溢れた。
涙は生理的なものだったかもしれない。
しかしカンタロウは涙を流した自分が恥ずかしかった。
正直ナギリの性器を受け入れた瞬間、快感によって意地や根性で保っていた理性が蕩けていったのが分かった。
ただ気持ちが良いのにまだ心の何処かで、ナギリはヒートに流されているだけなんじゃないか?と過ると、もうダメだった。
抱かれたいとほんの一瞬でも過ぎり、抱かれていることが嬉しいはずなのに叶ったのはヒートのオメガだったからではないか?と思って己の涙を見ると、泣くな馬鹿かと己を叱りたくなっていた。
だがそんなカンタロウを現実へと引きずり戻したのはナギリだった。

「は、ぁおい、痛みは?」
「んぁ、へ?あ、なぃが……ッなんで、この体勢なんだっ!?っァ、はぐ〜ーッ!」
「うぐっ!叫ぶなバカッ!……ッ」
「なら抜けっ、え?んん〜〜〜ッ!?」

身体が快楽によって満たされていけばいくほどカンタロウは虚しかったせいだろうか、ナギリの様子に気付けなかった。
なんの前触れもなくキスをされたことに驚いたのだが、それ以上に舌を撫でられながら奥へと更に腰を進められると思わず閉じた筈の瞼の裏でチカチカと星が飛ぶ。

「はぅ、ぁ!んぶっ、んぁッ、まて!」
「いやだ、んっ、はぁ!」
「ぅえ!?ばっ、ぅあ!んんッ、あっ!ひぅっ!」
「ッ、は……口を噛むな、かんたろう」
「んァッ!?した、やめっん、ひっ、あ゙ぁ〜ーッ!?」

辛うじてナギリの性器を全て受け入れた事までは分かったが同時に与えられた快感に耐えられず、その後のカンタロウの記憶は朧気だった。
ただただナギリから与えられる快感に喘ぎ続け、外はうっすらと夜が明けたような気もしたが途中からはナギリも正気ではなかったらしい。

「ひぁ!あっ!も、それ、ぃヤだぁッ!」
「ッ!は、ぁ……分かったッ、あと一回で済ませるから、な?」
「ぁう、なら、いぃ……っン、ぁ!あっ!」

真っ赤な顔で涙を流しながらも頷くカンタロウにちぅ、と音を立てて宥めるようにキスをしてやる。
きっと普段なら考えられない行為だろうが、今のナギリは酔っ払っているかのようにカンタロウから溢れるフェロモンに浸っていた。
実のところ最早ナギリは己の欲望に従っているだけだったのだが、ナギリからのおねだりにカンタロウの方も普段とは異なり、蕩けきった顔と声で頷く。
あと一回、もう少し、と言ってキスに抵抗を覚えなくなった頃には二人とも完全にヒートにのまれていた。
そもそも短時間の休息を何度か挟んだ程度でナギリの方が離さず、最初はカンタロウも普段の勢いで流石に腹を立てたりもした。
しかしヒートが少し落ち着いた後で片付けていた際にあんな状況でもナギリは律儀にゴムを替えていたらしいと気付いたカンタロウは有難さと彼なりの真面目さに何とも言えぬ気持ちにさせられた。
確かな気まずさはあったが、それでもようやくお互いにヒートから意識が落ち着いたのは、鳴り響くガラケーの電話の音を聞いて目が覚めた深夜頃だった。

「は、ぃ……カンタロウ、です。さギョウ先ぱぃ?」
『よかった!やっと繋がっ……その声っ!大丈夫、じゃないですよね?吸対のみんなで交代しながら電話かけてたんですけど……もしかして怪我してますか?』
「いぇ、そうではないのですが、のわッ!?な、何すっ……おい、ナギリ!」

流石に喉が丈夫なカンタロウでもあからさまに声が掠れており、心配してくれるサギョウに気まずさを覚えているとガラケーをスッと手から抜かれてしまい、思わず隣を見る。
なんで取ってくるんだ?と様子を見ていたらナギリはなんの躊躇いもなく通話を切ってしまうと、ガラケーをカンタロウに投げて返した。
精密機械を投げられて慌てて受け取ると器用にナギリが腰に巻きついてきて思わず狼狽えたが、ナギリの腕に手を添えてみる。
カンタロウは未だにナギリに抱かれた事実に対して何処か夢心地だったのだが、仕事仲間からの連絡があったのなれば話は変わる。

「ねむぃ……お前も、もう少し寝てろ」
「なっ!?切るなんて失礼だ、ろっ!?は、腹をさわるな!ひ、ぁっ!」
「まだ感じるのか」
「ちがっ!お前がさわ、るから……ぁ、ぅ、離せッ!かけ直してくる!」
「えっ……ぁ、おい!」

グイグイと腕を押し倒そうとするように引っ張られながら腹を撫でられ、ゾクゾクと背筋に走った快感に流されまいとしてカンタロウは自分が口走った内容に気付くと慌ててベッドから降りた。
無論、足に力が入る訳もなく敢えなく床に転がりそうになったが意地と腕力、そして意識を保つ体力でバタン、とカンタロウは扉を閉めた。
そんな行動にナギリは目を見開いて驚いていたが扉を挟んでしまったカンタロウに見える筈もない。
それよりも気怠さと心地良さの狭間でなんとかソファーのひじ置きに項垂れるようにもたれ掛かり、己の腹にある古傷を撫でた。
正確には腹に先程ナギリに撫でられた温もりが残っている気がしたのだ。

……アイツは今後ヒートが無くても俺を抱けるんだろうか」
……お、前そんなこと気にしてるのか?」
「は、ぇっ?……ぅわぁああッ!!?忘れろ!!ナギリ!!!」
「のわっ!耳がッッッ!!!」

ナギリになり考え悩んだ末に気遣って追いかけてきたのだが、タイミングは最悪だった。
まさか聞かれると思っていなかった言葉を聞かれ、羞恥心に耐えられなかったカンタロウは、疲労しているとは思えないほど大暴れしてしまい、最後の方には壁に大穴を空けた為に寝室は、しばらくリビングと直通になった。

「これで分かった、クソ砂!アイツは吸血鬼より凶暴でお前の言う可愛げなんぞ無い!!!」
「えぇー?でもそんなところもギリギリ君は好きなんじゃないのかね?って、アーッ!?」
「何処がだ!?死なすぞ!!!」

もう砂だよ!事後報告はやめたまえ!とドラルクからの文句を背中に浴びながら、何処が少し悪くないと思う自分にナギリは釈然としないまま預かったトランシーバーから聞こえてくるギルドマスターによって分かっている吸血鬼の特徴に耳を傾けた。



END?