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mishiadd
2024-05-14 18:43:07
12769文字
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ただでさえ生まれる時代を間違えてたのに更に間違えてて草
可惜夜を迎えずに盈月の儀が終結後、カヤちゃんが立派にお嫁にいくのを見届けて伊織殿は入水。……と思ったら現代に転生しちゃってただでさえ生まれる時代間違えてたのに更に間違えてて全然笑えない転生パロ。令和の男子高校生の宮本伊織くんとその親友のなにも起こらない不穏な凪いだ日々。
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五、「えいえんにあけないでほしいとねがうよる」
「あ、ほらイオリ、一番星」
セイバーの指さした先を、伊織が見上げる。星の名前や星座に詳しくはないが、他に星のない中でたったひとつ輝いている星があるのならそれは一番星で間違いないのだろう。殆ど満ちかけている月のすぐ下あたりに明るく輝いている。
ひとたび校舎の外に出てしまえば街や住宅の灯りでよく見えなくなる夜空も、こうして校庭の真ん中に寝転んで見上げていればよく見えた。まるで空気の澄んだ山奥にキャンプにでも来ているかのようだ。
剣道部の練習帰り、なんとなくふたりで制服のままグラウンドの上に寝転んでいる。伊織の隣で、ぽつぽつと出てきた星をいちいち指さしてはセイバーが喜んでいる。
「イオリ、今度『ぷらねたりうむ』というのに行ってみよう。まあ、こうして本物の夜空を見られているのだから必要がないといえばそうだが、なにやら面白そうだからな!」
「セイバー」
「なんだイオリ、どうした?」
「
――
前に話した、夢の話なのだが」
ややあって、「
……
ああー」とセイバーが間延びした返事をする。忘れていたのかな、それもそうかこんな話、と伊織は思う。
「実は、今も時折見るんだ。
……
それで、妙なんだ。すべて鮮明なのに、なぜか
そこにいた筈の人
のことだけを思い出せない」
「へえ?」
「一番近くで
――
いつも一緒にいて、いろんな場所を共に見て回ったんだ。なのに、思い出せない」
話しながらなんとはなしに月を見上げていた伊織が、ふと隣を見遣る。セイバーが、真剣な、しかしどこか優しい目でこちらを見ていた。
「なんにも、思い出せないのか?」
「ああ」
「姿かたちも? 声も?
――
その人が、
なにが得意だった
とかも?」
「ああ。
……
なんにも」
「でも、絶対にそこにいたんだよ」とだけ、ぽつりと伊織が呟いた。それで、セイバーが苦笑する。
「なら、それでよいのではないか」
「でも、それだけ思い出せないのはなんだか気持ちが悪くないか。
――
それに、その人にひどく悪いような気がする。それは、あまりにも不義理ではないかと」
「フフ、なるほどな! 案ずることはないよ、イオリ。きっと、
忘れているのには理由がある
。だから、きみは忘れてしまっているのだ」
「理由?」
「うむ。
――
きっと、忘れてしまっていた方が、きみにとっても、その人にとっても都合がいいのだ。
たとえ、忘れてしまっている想い出がどんなに素晴らしく、甘美で、いとおしく、かけがえのないものだったとしても
――
」
セイバーが伊織の左手に右手を伸ばす。まるで幼い子供同士がするように、軽く手を握りこんで繋いだ。
「ひとたび思い出してしまえば、きっとすべては
為されるべきように為されなければならなくなる
。
たとえそれが、そうなるまでの時間稼ぎの引き延ばしに過ぎなかったとしても、それでも今日という夜は素晴らしい。そうだろう」
「あ、ああ
――
いや待て、わからん。さすがにそれはさっぱりわからん」
「ハハ! よいよい、よいとも! イオリにはまだ難しかったということだな」
「なんだその言い方は
……
」
ははは、と大声を上げて笑うセイバーの隣で、伊織も苦笑する。
――
これもまた、モラトリアムと呼ぶのかもしれないが。
こんな夜もまた悪くはないのかもしれないと、伊織は思う。
了
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