mishiadd
2024-05-14 18:43:07
12769文字
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ただでさえ生まれる時代を間違えてたのに更に間違えてて草

可惜夜を迎えずに盈月の儀が終結後、カヤちゃんが立派にお嫁にいくのを見届けて伊織殿は入水。……と思ったら現代に転生しちゃってただでさえ生まれる時代間違えてたのに更に間違えてて全然笑えない転生パロ。令和の男子高校生の宮本伊織くんとその親友のなにも起こらない不穏な凪いだ日々。

宮本伊織が「自我」に目覚めたのはちょうど十六歳の誕生日を迎えた頃だった。
輪郭のぼんやりとしていたモノクロームの世界がぱっとクリアになってテクニカラーに色づいた。急に思考の焦点が合い、自分が何者であるのか、なぜそこにいるのか、そして何をしているのか、唐突に理解した。
そして、端的に思った。

――ああきっと、これこそが、「ばちが当たった」というものなのだろう、と。






宮本伊織は都内の男子高校生である。ぼんやりと地方から上京して高校受験し、ぼんやりと親元を離れ、ぼんやりと剣道部に所属し、そしてぼんやりと下宿生活を送っている。――送っていた
今朝の朝食の記憶すら朧げな程ぼんやりとした今生に反して、突如彼の中で蘇ってきた自我と前世の記憶は鮮明だった。――かつての彼もまた「宮本伊織」という名で、江戸時代の浅草に住んでいたこと。盈月の儀という怪しげな儀式に巻き込まれたこと。それを勝ち抜き、しかしそうして手にしたトロフィーをその場で叩き斬ったこと。そして「儀」は終結し、――その結果誰かと別れ――あれは一体誰だったか――とにかく、そうして凪いだ日常へと戻っていったこと。

「宮本伊織」には「カヤ」という義妹がおり、儀の終わった後も数年間、変わらぬ生活を続けながら、ただ義妹が成長し、年頃になり、そして小笠原家から嫁いでいくのを穏やかに見守った。そうして、ただ義妹の変わらぬ幸せだけを祈りながら――宮本伊織は入水した。自ら命を絶ったのである。



まあ、だから、これは罰が当たったということなのだろう。



かつての自分は、もはやあれ以上生きてはいけなくなってしまった。あの時代ではもう呼吸ができなかった。生まれる時代を間違えた。
だからせめて、唯一の心残りだった義妹の幸せだけは見届けた上で、ひとり身勝手にもこの世を去った。――つまるところ、それがけしからん、ということだったのだろう。
もっと苦しめ、一体誰の許可を得て逃げ出している、途中放棄は許さない――そうして無理やり連れ戻されたのが、今生であるということらしかった。

あの時代ですら呼吸ができなかったのだ。いわんやこの時代をや。

すべて思い出してしまったのだ。二本の刀を振るうあの感覚、一秒を永遠とも思えるような鬼気迫る命の獲り合い、あの闇夜を切り裂く月のような剣。――この令和の日本の、東京で。

苦笑いすら浮かばない。率直に言って最悪だ。



――またしても宮本伊織は、生まれる時代を間違えた。






ただでさえ生まれる時代を間違えてたのに更に間違えてて草