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mishiadd
2024-05-14 18:43:07
12769文字
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ただでさえ生まれる時代を間違えてたのに更に間違えてて草
可惜夜を迎えずに盈月の儀が終結後、カヤちゃんが立派にお嫁にいくのを見届けて伊織殿は入水。……と思ったら現代に転生しちゃってただでさえ生まれる時代間違えてたのに更に間違えてて全然笑えない転生パロ。令和の男子高校生の宮本伊織くんとその親友のなにも起こらない不穏な凪いだ日々。
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二、「ピクニック」
東京という場所は不思議なもので、むしろ地方よりも「森林浴」をするための森林公園がいくつもある。
ビル街の中に突如として立ち現われるそれにある種のわざとらしさや人工的な意図を感じる向きもあるだろうが、まるで仏像を彫るように精巧に手入れされたそれらの「自然」を、伊織は嫌いではなかった。
なんにせよ、なにかを極めるために精神を研ぎ澄ませるという行為に伊織は価値を置く。それらはやがて、あの月へと至る一助になるだろう。
――
と、そこまで考えて、伊織は我に返る。
――
「月」が一体なんだって?
令和の男子高校生の宮本伊織くん
。
「イオリ! おむすびを食べよう」
ちょうど二人分の大きさのブルーシートを敷いた上に伊織の持ってきた食べ物を勝手に広げ、セイバーが急かす。
はいはい、と乞われるままに腰を下ろしてラップに包んだ梅おにぎりを伊織が手渡す。「御御御付はー?」とすかさず唇を尖らせてねだられたので、魔法瓶に詰めてきた味噌汁を紙コップに注いでやる。
ほわほわと湯気の立つのを嬉しそうに見つめるセイバーに、伊織が「熱いぞ」と忠告しながら紙コップを手渡してやる。
「『御御御付』。妙なところでやけに古風な言い方をするな、おまえは」
「御御御付は御御御付だろう?
――
うむ、味噌むすびもうまい!」
むぐむぐと口を動かしながら、セイバーが目前の風景を見遣る。新宿御苑の日本庭園。一本の枝すら乱れなく丹念に手入れされた木々の姿に造園の粋を感じて伊織も感嘆する。
思い返せば、かつての江戸にもこうした絶景を誇る名所は多かった。伊織にとっては既に見慣れたものとなっていても、やたらめったらなんでも珍しがる
誰か
を連れて今一度新鮮な心持ちで見直せば、なるほど伊織もそのありがたみというものを再認識することも多々あった。
――
そう、あれは
――
一体
誰
だったか。
「イオリ、イオリもほら、御御御付だぞ」
先程伊織がやったのを真似てセイバーも新しい紙コップに不器用に味噌汁を注ぎ、伊織に差し出してくる。
まるでそれだけで自分がイチから作ったかのように誇らしげな顔をしていたので、特に余計なことは言わずに礼だけ言って受け取った。
伊織が紙コップに口をつけた瞬間に、剪定されたばかりの木々の合間を爽やかな風が吹き抜けていく。新緑の瑞々しい香りが鼻先を掠めていった。
「そうだイオリ。この間きみが言っていた夢の話」
味噌汁を両手で抱えながら、目の前の庭園を眺めたままでセイバーが言った。
「きみが江戸時代で浪人をしていた夢を見たという話。
――
夢の中できみはこういうところにも来ていたのか? こういう、風光明媚な場所に」
「さあ、どうだったか」
「来ていたらいいな。それこそ、江戸時代のきみも
ここ
に来ていたらいい」
「ここに? そうだな
――
」
相槌を打ちつつ、「それは無理だな」などと伊織は考える。なぜなら当時ここは、
「ああでも、無理か。
――
あの頃は、ここはどこぞの誰かの屋敷で、このような庭園などではなかった」
ぽつりとセイバーが呟いた。
ふっと気を取り直したように笑い、セイバーが伊織を振り向く。
「今、こうしてここに来られているのだから、よい。きみと私と、ふたりで」
「うん
――
」
セイバーがふっと目を柔らかく細めて笑う。そのまま、再び目線を庭園へと向ける。
それにつられるようにして、伊織も木々へと目線を向ける。味噌汁を啜る。
去年の誕生日の記憶より余程鮮明な前世の記憶。だが、思い出せない。
――
いつも一緒に町を巡っていたのは、一体
誰
だったか
――
。
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