ななき
2024-05-11 16:09:08
8998文字
Public 吸死
 

お題企画「弊ドロこう言う」 まとめ

お題で作成したもののまとめ。
増えたら更新します。一部、投稿しなかったものを含みます。
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##履歴
2024/12/14 「全然好きじゃねえし」追加
2024/11/30 「その顔が見たかった」修正
2024/10/2 追加


「おかえり」 (バニ金)※没

 ドロップは、赤の8。重ねたチップは俺の前から回収されて、正面に座るバニーボーイの前に積み上げられた。
 その人は悠々とそれをみて、
「もうお山におかえり、金太郎くん」
と優しい声で言う。
 何にも知らなかった俺に、常識と人の世の機微を教えてくれたウサギさん。一目惚れの恋しさを隠せもしなかった俺を、ひらひらひらひらかわしながら面倒をみてくれた人。
 おかげで今の俺はちゃんとビジネスマンで、だからウサギさんの仕事が、一時の享楽と一夜の夢を提供することだってわかってる。そして、わかってしまったことを、この人に悟られた。

 このゲームに勝ったら一晩付き合ったげる、代わりに負けたらもうここに来てはダメ、なんて究極のゲーム、イカサマがないほうがおかしいってそれもわかってる。ノった時点で負けだった。
 もう手持ちはない。借金すれば続けられるけど、ウサギさんはそういう遊び方を嫌う。
……俺の負けです」
 ウサギさんは、ほっとしたように、でも寂しそうに笑った。そんな顔するくらいなら、今まで通りを続けてくれたらよかったのに。

 ――深呼吸をひとつ。頭を切り替える。
 愛想がよくて素直な新人ビジネスマンの仮面は終わり。今から俺はハンターだ。狩りを、始めようじゃないか。
「じゃ、ウサギさん。これ見て」
「うん?」
 俺が差し出したのは、二枚の証文。の、コピー。一通はこの店の権利書。もう一通は。
 可愛いウサギはカタカタ震え始めた。
「ここ、昨日から俺の店だから」
「なんだこの備品登録って!」
「あんたは、爺さんとの契約でここにいるって言ってただろ。その契約も買い取った。手続きの都合で備品にするしかなかったんだよ。あ、私の孫、大事にしてね、って言われちゃいました」
 最後だけ、ウサギさんが可愛がった金太郎の顔をしてみせれば、いやあ、怒ること怒ること。マシンガンのごとく罵倒が飛んでくる。日本語ではないのも混じってる? かも。聞き取れない。
「体頑丈じゃないんだからそんな怒ると気絶すんぞ」
「こっの……
……別にさ、何か変えようとか思ってねぇよ。ただ、この店とあんたが誰かほかの人のモノなのがイヤだっただけ」
 ほら、またそんな顔する。年上ぶって可愛がって情を移したおばかさん。入れ込み過ぎたおばかさんはお互い様だけど。
「それとも勝負するか?あんたが勝ったら、そうだな、備品登録の証文はあんたにやる。好きにしたらいい」
「負けたら?」
 心底悔しそうに言うウサギさん。
「オーナー室あるだろ、あんたが使ってる」
 事務所と、狭いが住居を兼ねた一画に、このバニーボーイ兼代理オーナーが住んでいることは知っている。というか何度かお呼ばれもしたし。でも俺が正式なオーナーになったから。
「あそこに住ませてください」
「あそこは私の城だが!?」
 俺も一緒にって意味なんだけど、通じてないな、これ。
 まあいいや。
「なら、賭けるに価しますよね」
 ディーラーに目線をやってニコリと笑ってやれば、実は友人であるそいつはため息で答えた。
「イカサマはどっちにもなしな」
「助かるぜショット」

「さ、はじめましょうか、ウサギさん」
 どっちに倒れたって、あなたと真剣勝負できるなら最高だ。