乙麻呂
2024-05-02 17:43:19
21265文字
Public
 

花も実も在る

アンソロ開催ありがとうございます!!
参加させていただきました。二人の関係性のゆらめくような変化を……描けていたらよいな(願望)


・原作二巻、アニメ二季までの内容
・not CP



【○○年】


その日、上天庭の鐘が一際強く鳴った。
武神が生まれたと、神官達がざわめいた。
玄真と呼ばれるようになって久しかった慕情は、大した興味も無くその話を聞いていた。
飛昇を告げる鐘がやけに煩かったから、煩い奴が飛昇したんだろう。
関わりたくは無いなと、皮肉混じりに考えていた。



倶陽の神号を賜った武神と遭遇したのは、飛昇から暫く経った日の事だった。
偶然かち合わ無ければ、慕情は避けていたと思う。だが、同じ武神として、そう遠からずまみえる運命ではあっただろうが。
「な……………
驚愕に目が見開かれ、言葉すら失ったその様を、慕情は焦げ付くような気持ちで見ていた。
慕情が上天庭にいる事など、予想出来ただろうに。
嘲笑いたかったし、詰りたかった。
野垂れ死ななかった事にどこか安堵し、同時に無性に腹立たしかった。
殿下との生活に限界が来る事など、分かりきっていた。
殿下と共に死ぬよりは余程“利口”で“前向き”な道だ。


コイツなら、殿下と共に破滅するかと思っていた。
それが、殿下の元を去って自分が飛昇するとは。
慕情は腕を組み、不遜に笑った。
「飛昇おめでとう、《倶陽真君》」
風信の顔がさっと赤く染まった。照れているのでは無い。怒りと不快によってだ。
「お前…………何でこんな所で……………
「飛昇した神官が上天庭にいて、何かおかしいか?」
軽薄な口調が自然と口をついた。
明確な生まれの差があって、でも何と無く並び立っていたあの頃はどんな風にコイツと言葉を交わしていたか、よく思い出せなかった。
いや、“自分の事として思い返せなかった”と言った方が正しいか。
風信は慕情を凝視し、何度も何かを口にしかけ、しかしそのどれもが言葉にならない様子で、ただ口をパクパクさせていた。
…………………………ッッ、失礼する!」
結局、風信は何も言わずにその場を立ち去った。
煌びやかな仙京に似つかわしく無いドスドスと言う足音が遠ざかるのを聞きながら、慕情は苦々しい気分を味わっていた。



数年前に自ら人界に落ち、祖国に混乱と終焉をもたらした神官。
その腹心の配下が二人とも主の元を離れ、それぞれ飛昇し、かつての主と地位も栄誉も逆転した。
長きを生き、日々刺激を求める神官達にとって、こんなに面白い展開は無い。
慕情と風信の話題は上天庭を駆け巡り、それが小神官に広がる頃にはすっかりと定着していた。


主を見放した南陽真君 風信
主を見限った玄真真君 慕情






こんな形で同類になる 肩を並べる つもりなど、無かったのに。