鹿
2023-12-31 17:25:16
9326文字
Public
 

CPシチュスロット学パロまとめ

CPシチュスロットチャレンジのうち、なんとなく学パロシリーズみたいになったやつのまとめ。時系列はバラバラ。


診断メーカーお題 同じ部活の先輩後輩の設定で片思いの相手に猛アタックする


 剣道部の部室の見える位置に佇む人影は、よく見知った相手だった。高校生としてはずいぶん高く、私よりも頭ひとつ近く大きいが、手足はまだ細く、成熟しきらない印象がある。もうとっぷりと日は暮れていて、こんな時間に校内にいるのはよほど熱心な部活動の生徒だけだが、彼はもう引退した身分のはずだ。
「部活動をしていない生徒が、こんなに遅くまでいるものじゃないよ」
 彼はうげ、と声をあげた。振り向いた顔は明らかに不満げだ。彼が剣道部に在籍していた時から、自分は彼から反りの合わない相手と思われていたのは承知している。しかしこうあからさま顔を歪められると、彼の普段は感じさせない幼さが見えていっそ面白くもある。
「山南」
「先生をつけなさいといつも言っているね?土方くん」
 彼は教師というものを言うことを聞かねばならない存在とは考えていない。納得いかなければ突っかかってくるし、そのくせ成績は校内でも上位だから、周囲の教師からは厄介な生徒と思われている。
「別にやましい事ねえ、図書室で真面目に受験勉強してたんだよ」
「図書室が閉まるのは部活終了時間よりは前だったはずだね。こんなところで何を待ってるんだい?」
 私は剣道部の顧問でもあるので、彼とはずいぶん衝突したものだ。だからといって彼に悪感情があるわけではもちろんない。彼の方も私をしょっちゅう口うるさいと言うが、私が心配して声をかけていることくらいは理解していた。
「斎藤を待ってる」
「何か約束でもしてるのかい?」
「一緒に帰ろうって誘うだけだ」
「それはまた、どうして?斎藤くんなら話くらい、携帯とかでも……
 土方くんが下級生の中でも斎藤くんに特に目をかけていて、斎藤くんもその期待を面映く思っていたことは知っている。しかし、わざわざこんな時間まで待ってまで一緒に帰ろうとする理由はわからない。
「うるせえな、教師が生徒の自由恋愛に口出しすんじゃねえ」
……は?」
「俺は今、あいつにアタック中ってやつなんだよ」
 ふん、といっそ誇らしげに言う彼は今日一番子どもらしく見えて、なんだか唖然としてしまう。
……あんまり後輩をからかうものじゃないよ」
「センセイは、俺が斎藤に、ふざけてそんなことするとでも?」
 正直、まるで思っていない。彼の瞳はいつ見てもまっすぐで、手がかかるとは思えど、くだらない嘘や冗談で人を惑わすような生徒ではないと信じられる。
……じゃあ、口うるさい先生からのアドバイスだけれども。恋愛というのは相手があってのことだというのはわかるね?」
「当たり前だろ」
「アプローチというのは過ぎれば重たいものだ。例え好意であっても相手のことを考えずにぶつけていいものではない。斎藤くんの方は、君の行動をどう感じているだろう?」
 部活で尊敬する先輩(しかも同性)から、恋愛的な好意を向けられるというのは、歓迎される場合ばかりではあるまい。端的に言えば、脈はありそうなのだろうか?
「は、俺を侮るなよセンセイ」
 だが土方くんはニヤリと尊大に笑ってみせた。
「勝算ありと見てるから、ここぞとばかりに攻め込んでるとこなんだよ」
 そうして彼は部室に視線を向ける。やってくるのはこれも良く知った気配。
「土方さん!……と、え、山南先生⁉︎お、おつかれさまです、あの、何か」
「ああ、気にしないでいいよ。大した話じゃないんだ」
「いつものお小言だ。行くぞ、斎藤」
「は、はい。それじゃあ先生、さようなら」
 誘うと言っておいて、まるで受け入れられるのが当然と言わんばかりの土方くんの態度にも、斎藤くんは健気について行った。
 さようなら、と手を振りながら、なるほど、自信ありげなわけだと思う。斎藤くんが土方くんの姿を認めた瞬間の、あの目の輝き。あれを見てしまっては……
 土方くんの言う通り、何か問題を起こすわけでもないなら、生徒同士の恋愛に口を出す権利など教師にはない。せいぜい彼らの幸せを祈るくらいしかなかった。