鹿
2023-12-31 17:25:16
9326文字
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CPシチュスロット学パロまとめ

CPシチュスロットチャレンジのうち、なんとなく学パロシリーズみたいになったやつのまとめ。時系列はバラバラ。


桜の樹の下で/戸惑いながら/腕を組む


「土方さん」
 僕の声に振り向いたその人は、桜の下にいるのがあまりに絵になりすぎていて、妙に不安な気持ちにさせられた。
「ボタン、見事にむしられましたねえ」
「どうせ兄貴のお下がりのお下がりだ、いくらでもくれてやる」
 顔が良い人は制服のボタンが全部なくなっていてもかっこいいからいいですね。冗談めかして言うと、土方さんも表情を緩める。やっぱり綺麗すぎて、桜に攫われそう、なんて陳腐すぎるフレーズが頭に浮かんだ。我が剣道部鬼の副部長に対しどんな感想だと自分でも思う。
「改めて、卒業と大学合格おめでとうございます」
「おう、ありがとうな」
 どこまでも厳しい副部長の役割も終え、案外よく笑うひとりの青年の表情をしていると、本当にただただ美しくて見惚れてしまう。あんなに一緒にいたのに、自分がその隣に立つことが上手く想像できないくらいに。
「で? なんだ、話って」
 そう、卒業式後クラスや部活の友達と集まったりもするだろう時に、この人を呼び出したのは僕だった。そんな厚かましい呼び出しも断らないのだから、これから言うこともおそらく了承はしてもらえる、とは思いつつも、緊張で口の中が乾いていた。
「えっと、ですね、卒業したら、土方さん一人暮らしになるって聞きました」
「おう。部屋ももう決まった。住所送るから、部活休みの時は来いよ」
 言おうと思っていたことを先回られてしまったことで、僕の頭の中にあった会話プランは崩れた。そうして口からこぼれたのは、理性を通さない感情そのままの言葉。
「あの、僕ら、付き合うってことで、いいんですか?」
 それを聞いた土方さんは唖然とした顔になる。僕の不安は頂点に達した。
「お前は今まで付き合ってもいない相手とキスしてたのか?」
 そしてそのまま不安は一瞬で打ち砕かれ、僕の感情は上へ下へと千々に乱れる。
「は、いや、確かにキスとかそういうのはだいぶちょくちょくしてましたけど、土方さん付き合おうとかそういうの言わなかったじゃないですか今僕が確認しなかったらずっと言わないままでしたよねそれでなんかこの前僕の家でしたその、ああいうことの続きもするつもりだったんですか良くないですよ! そういうとこちゃんとしてくださいよ大事なことほど言わないんですよあんたっていつも言ってますよね僕が察してくれて当然みたいな態度やめてくださいって」
 緊張が解かれたのと恋人になることを拒否されなかった安堵、いつもの言葉足らずへの怒りが合わさって、まくし立てるように言葉をぶつけてしまう。
「すまん、悪かった、許してくれ」
 さすがの土方さんも平謝りするしかない様子に、ようやく息を吸う。
「俺はお前が好きで、今までもこれからも恋人同士のつもりだ。これで大丈夫か?」
「まあ、うん、及第点ですね」
 息を整えながら出た言葉は憎まれ口だったが、正直なところ嬉しくて、僕の顔は思いきり緩んでいるに違いない。鏡を見なくてもわかる。土方さんが大層愉快そうにしているので。
「そうだな、こう毎日会えなくなるんだから、かわいい恋人を不安にさせないようにしねえとな」
「なんですか? 毎日愛してるってメッセージでも送ってくれます?」
「してやってもいいが、お前も返信するか?」
……スタンプでもいいですか?」
 お前、そういうとこあるよな。呆れた顔も優しくて、頭が蕩けるような気分だ。
「あとは、そうだな。手でも繋ぎながらデートでもするか」
「今さら……?」
「うるせえな、ほら」
 手を繋ぐ、というか掴むように引き寄せられる。たたらを踏みそうになった勢いそのまま、土方さんの腕に抱きつくような格好になった。
……恋人っぽいですね」
「そうだな」
 少し戸惑いながらも、そのまま桜並木の下を歩き出した。この人も僕も、馬鹿みたいに浮かれていたが、春の陽気のせいということにしてもらいたい。