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黒竹
2022-05-30 21:13:57
19064文字
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フォルテッシモじゃ強すぎる
【ルカミク】現パロ。アイドルミクさんとピアニストルカさん。
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目を覚ますと隣でミクが丸くなっていた。
寝起きでぼんやりとした頭でも、昨夜の出来事はよく覚えている。『出来事』と、他人事のように考える程度には、はっきりと。
あれから二人でベッドに沈み込み、もう一度行為を繰り返した。夜の内側で何度となく彼女の名前を呼んで、何度となく彼女に名前を呼ばれた。触れ合って、抱き合って、慰め合ったのは、まだたった四時間ほど前のことだ。
額に腕を置き、小さく嘆息する。
眠る彼女は無防備すぎて触れられない。
「ミク。起きて」
「
……
んー
…………
」
もぞもぞと毛布に潜ろうとするミクの髪を掴んで軽く引っ張る。「やーん
……
」痛かったわけではないだろうが、彼女は煩わしそうに唸ると渋々まぶたを上げた。
仰向けになって、眠い目を擦りこすりルカを見上げる。
「んー
……
、おはよ
……
」
その声があまりに平板だったので、ルカの肩が少し落ちた。
「もう少し動揺とかしてくれるとありがたかったんだけど」
「なんで? 別にその場の勢いとかじゃなかったし、動揺なんてする理由がないよ」
「初めてだったくせに」
そこでようやく、ミクの眼差しに表情が浮かんだ。拗ねている。
「ルカさんと違ってお子さまですから」
「子どもはあんなふうに誘ったりしないわよ」
「女の子はいつも耳年増なんだよ」
古臭いフレーズを知っているミクだった。
ぎゅむりとルカに抱きついて、泡玉みたいに息をつく。
「ルカさんを離したくなかったから」
昨日からずっと、彼女は残酷だった。なにひとつ悪びれず、自身の残酷さに気付きもしないで、絶対の味方を得るために己が身を捧げたのだと告白する。
それを是正してやるべきなのだろう。絡みつく腕を振りほどいて、叱りつけて、頭を押さえつけるべきなのだろう。
益体もなく、役にも立たない思考だった。
ルカがそれをできないと判っているからこそ、ミクはその手段を選んだのに。
「
……
ミクはずるい」
「え?」
抱き返せない腕はシーツの上で脱力したまま。
「こんなことをしたって、救われるのはミクだけじゃない」
こちらはどうだ。自尊心を放逐して、何を得るでもなく、ただ失くすばかりで、祝福もなく、彼女が去れば後には何も残らない。
ひどい、自傷行為だ。
ミクが少し困った顔をした。抱きついている腕を上げ、ルカの髪を指でくしけずる。キスをしてから首筋に吸いついて跡をつけると、そこをぺろりと舐めた。
「今さらそんなこと言われるなんて思わなかったなー」
「なに
……
ちょ、ミク
……
っ」
ルカを仰向けにさせて更に跡をつけていく。唇が辿るラインに、足跡のように紅点が刻まれていった。首に、胸元に、腹部に。
「こんぐらいつけたら判ってくれる?」ひとしきりマーキングをし終えたミクが顔を上げて、挑みかかるような視線で問いかけてきた。
「
……
なに、が
……
」
「ピアノ弾いてる指を見るたびにゾクゾクしてたよ」
「え
……
?」
艶然としなだれかかり、脇腹をくすぐってくる。
「いくらなんでも、なんとも思ってない人とこんなことしません」
この言葉を言葉通りに受け取って良いものかどうか。
愛される者である彼女は、愛されるためにいくらでも自分を変化させうる。誰かの望む歌い方、誰かの望むキャラクター、誰かの望む笑顔、誰かの望む、言葉。それらを自由に操れるからこそ、彼女は愛される者たりえる。
身体は手に入れた。心はあるのだろうか。
中国語を知らない人間がマニュアルさえあれば解答を返すことができるように、ただ決められた手順通りに相手の望む姿を見せる彼女の心はどこにあるのだろう。
ぽん、と彼女の頭を叩いた。ミクはうん?というふうに目を細めて、ルカの胸元に頬を乗せた。
「
……
私と、一緒にいたい?」
「どうかな。そうかも」
ふざけた返答だった。
彼女が中国語の部屋の住人であるのかどうか、真実を知るすべはない。それでも彼女の身体は柔らかくて温かくて気持ちが良い。抗しがたいほどに。
彼女の胸を包み込んで軽く揺さぶる。触れ方に意図を感じ取ったミクが困惑気味に眉を下げた。
「え、ちょっと待って、休憩したとはいえ三回はちょっときついかも
……
」
「大丈夫、若いんだから」
「あのね今日お昼から撮影があってねっ、やっ、もぉ
……
っ」
崩れ落ちる身体を受け止めながら、ルカは手を止めなかった。
多分、これが今のところ唯一、ミクが見せる素直な反応だから。
いつか、彼女の心を見たいとは思うけれど、それまで我慢できるはずがない。
確固とした愛しさと、漠然とした寂しさを感じながら、ルカはシーツに溺れた。
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