【デデカビ】すぐ近くにある奇跡【小説詰め合わせ】

※新作ゲームのネタバレ含みます※喋ったり喋らなかったり飽きずに大体ふせったーの妄想集めてまとめた感じです。

◆いつか旅立つ君へ

カービィがポップスターから去る時お世話になった住民達に手を振い満開な笑顔でワープスターに乗る彼の心はこれからどんな世界に出会えるのだろうかと興奮と楽しさで埋め尽くされており、まるでお祭り騒ぎな別れを物の影から希薄な面持ちで視線すら合わせず身を隠す面々にカービィは気付いていない。
誰が言ったか晴れの門出に涙やしみったれたものなぞ似合いはしない。笑って分かれるのが一番なのだと。
ワープスターに乗り下から見上げてくる顔はみな涙混じりに笑っていたり、隠す気もなく大号泣していたりと様々だ。バンダナワドルディも泣かぬまいとバンダナを強く握りしめている。
「ちょっと旅したら戻ってくるから」
泣くのを我慢出来なくなったバンダナの頭をカービィがゆっくり撫でた。誰かが聞いた。なんでポップスターから出ていってしまうのか。カービィは答えた。
「久しぶりに旅したくなったから」
思い立ったが吉日ではないものの、すぐ旅立とうとするカービィをプププランド総出で、お別れ会やるから少しだけ待てとデデデに押し切られ今に至る。いっぱい食べて、いっぱい飲んで、いっぱいお喋りしたカービィはとても楽しんだ。
カービィを取り囲むように和やかな雰囲気を出す誰も彼も、このままずっとプププランド強いてはポップスターに居続けてほしいと心の中で噛みしめる。
されど、カービィを止められるものはいない。力尽くだろうが絡め手を駆使しようが旅に出るというカービィの思いを止めることはできなかった。

はじめデデデは何かつまらない冗談だと捉えた。プププランドから離れ旅に出るというカービィの話を適当に聞き流せば、
「きちんと話を聞いてくれないなら勝負だデデデ!きみに勝ったらぼくは旅に出る!」
と、言うではないか。旅に出るというのが少々気掛かりだがカービィからの勝負受ける他なし。
勝負の最中デデデは漸く話の内容を反芻した。理解していくたび頭から血の気が引き、目の前で戦うカービィを睨みつける。そして、認めたくはないが一番厄介なことをカービィはしようとしている。

「はい!ぼくの勝ちだから」
知らない間に仰向けで倒れていたのかカービィの顔に影を引き連れデデデの顔を覗き込む。
旅立つっていつだ」
「今から」
「ばっか!最低限世話になった奴らにも挨拶してけ!」
「ん〜、わかった」
「あと、旅立ちは一週間後!いいな?!」
「わ、わかったよう」
デデデの気迫に押し負けたカービィはデデデ主催のお別れパーティの主役として今までお世話になった面々に挨拶まわり。
何人か姿が見えなかったけど、挨拶全員終わったことにしようとした矢先
「あ、メタナイト」
人混みの奥の奥、物陰に佇んでいたらしくマントを靡かせ指で天を指した。
「付いてこい」
そう言われているような気がして、カービィはポップスターに乗りながら先に空へ羽ばたいたメタナイトを追う。
どこまで飛ぶのだろう。そんなカービィが問い掛ける前に雲の影から馴染みの戦艦が姿を現した。メタナイトが甲板に降り立ったので、カービィもまた甲板に降り立った。
只ならぬ気配。思わず身構えれば、メタナイトがくすり笑った気がした。
「餞別だ」
むてきキャンディー?」
てっきり最後に勝負をするものだと思っていた。
メタナイトが懐から取り出したキャンディーを静かに受け取る。きらきらして甘いキャンディー。
どうして、あの場で渡さなかったのかと問えばはぐらかされてしまった。
ムッとする。でも、嬉しい気持ちが顔にまで溢れてしまう。
「ありがとう」
「次回帰ってきた時、手合わせ願おうか」
「うん、わかった!」
元気よく手を振りながらそのまま甲板から飛び降りた。
下から掬い上げる形で飛んできたワープスターに乗り、どんどん遠ざかり小さくなるメタナイトにプププランドに、ポップスターに別れを告げる。
途中ローアが見送りに来てくれてまた手を振った。船内の様子は見えないけれど、もしかしたら聞こえないかもしれないけれど大きな声で
「いってきま~す!」
と返した。

ポップスターから旅立って色んな星を巡った。
オーロラのカーテンが揺らめく星。乾いた砂の海が広がる星。朝も夜もないずっと夕暮れの星。他にもいっぱいたくさん、たくさん
そして、色とりどりの花びらが舞い踊る花に満ちた星。微かに聞こえる春風のうたがとても心地よい。
歩いていた足取りが徐々にゆっくりになり、花びら舞う空を見上げるかたちで止まった。
カービィの視界に映る楽しい思い出の数々。そのどれもが掛け替えのないきらめきに顔が緩む。
「そっかぁ
思いのほかあっさりした感覚に満たされながら仰向けに倒れ込む。
カービィの丸い体を囲むように揺れる花畑。一点の雲もとどめぬ空色の瞳がゆっくり閉ざされていく。まるでお昼寝でもするかのように穏やかな顔。
されど、丸い体は時間が止まったように動かなくなってしまった。
相変わらず周囲は花の甘い香りに満ち溢れ、うららかな陽気に春風がうたう。



カービィがプププランドから旅立って数か月経った。
正確には数えていた日にちはある境から数えなくなった。帰ってくるのはいつなのか、いつになったら帰ってくるのか。
朝起きてまず家来ワドルディに聞くのはあの食いしん坊は帰ってきたのかだった。だけど、返ってくる答えは皆一緒みなおなじ。

「まだ帰ってきてないみたいです」

その内、デデデ大王は眠らなくなった。
寝ている間にカービィが帰ってきてまた何処かへ旅立ってしまうのではないかと不安に駆られたからだ。
日に日に衰弱する様子はとても痛々しいものだった。
その所為か珍しい来客がやってきた。その者はデデデ大王の姿を見るなり少し俯き、そして一つの提案を口にする。
「ギャラクティック・ノヴァに願えばあるいは
どんな願いでも叶う。その者は、メタナイトは身を持って知っている。
ただそれを実行に移すかはでデデデ大王次第。
伝えることを伝えたメタナイトは城を後にした。
ひとり残されたデデデ大王が独り言ちる。
懐かしい声がして振り返った先、いない桃色の影を追う日々も疲れた。
「しかたねぇ。迎えに行ってやっか」
何処までも続く青空を見上げるデデデ大王の瞳に光が戻った。

その日のうちにデデデ大王は銀河を巡りギャラクティック・ノヴァのもとに辿り着いた。お世辞にも体調万全とは言えない体を突き動かすのは暢気な春色を迎えに行くため。
目の前にいる奇々怪々な見た目の大彗星に願う。
「カービィに、星のカービィに会わせてくれ!」
無機質で調子の外れた声が了承の言葉を紡ぐ。カウントダウンの後、デデデ大王の視界が光に覆われ咄嗟に目を瞑った。
瞼裏の鮮烈な光が落ち着き、恐る恐る目を開ければそこは花びらが舞い散る常春の地だった。陽気な春風のうたを聞きながら周囲を見渡す。
そして、願っていた桃色は花畑に埋もれていた。
花を散らしながら駆け足で近付き、仰向けで寝ているのが確認できる距離で立ち止まる。
「気持ちよさそうに寝ていやがって」
苛立っている口ぶりだがその目には薄っすら涙が滲んでいた。
このまま蹴とばして起こしてやろうか。そんな乱暴なことを思い浮かびつつも、ここは大人な対応をしてやる感謝しろとデデデ大王は心の中で呟いた。
桃色の丸い体を揺り動かす。起きない。もっと大きく揺らしてみる。うんともすんともしない。
頬を軽くペチペチさせながら、今度は大声で名前を呼んでやろうかと思った矢先、違和感に気が付いた。
嵌めていた手袋を外し、目立った傷のない丸い体に触れる。伝わるはずのやわらかな熱が、無い。バッと身を屈め薄く閉じた小さな口に耳を寄せる。小さな呼吸すら、聞こえない。
小さな体を抱き上げその身に耳を付けた。命の鼓動が、伝わってこない。
今さっき寝たばかりのような穏やかなカービィの顔に雫が落ちる。
「どうして、なんで、お前はっ」

──カービィ。
悲痛でか細いデデデ大王の声を陽気な春風のうたが攫いその姿を花びらたちが隠した。



「ここ、どこなんだろ?」
右を見ても、左を見ても、上や下を見てもどこもかしこもくすんだ色の世界。鮮やかさの欠片もない薄暗い世界にカービィは知らず佇んでいた。
生い茂る木々、地面を覆う花、流れる小川の何もかもくすんで生き生きとしていない。
そして、どういうわけかお腹も空いていない。
「この道に沿って歩いていけばなにかあるかな」
くすんだ世界ではあまりにも目立つ春色の体。ぽってぽってと緊張感なく歩き出すカービィの後ろをひらりこれまた鮮やかな赤い蝶が追うように飛んで行った。