【デデカビ】すぐ近くにある奇跡【小説詰め合わせ】

※新作ゲームのネタバレ含みます※喋ったり喋らなかったり飽きずに大体ふせったーの妄想集めてまとめた感じです。

◆入れ替わりっこ

「うーん
深くあたたかい、まるで水の底から水面に向かって浮かび上がる感覚に目が覚めた。
僅かな隙間から差し込む朝日の眩しさに、今日もいい天気なんだろうと背をグッと伸ばす。ベッドから降りて締め切ったカーテンを開けるべく歩を進める。
「あれ?」
何故カーテンを開けるだけなのにベッドから降りないといけないんだ。カーテンが閉められている窓はベッドのすぐ近くで別にベッドから降りて開けに行く必要などないはずなのに。
疑問を浮かべつつ、伸ばした手がカーテンの裾を掴み開け放った。
正直ベッドから降りた時点から薄々感じていた違和感がはっきりと目の前に映り込む。自分のものではない手の感覚を確かめるように握ったり開いたりをくり返す。
でかい。腕がいつもより長い、視線も全然高い。一歩の歩幅が違う。
何かの気配を感じて振り返る。大きな姿見に映る姿は自分のものではない。とても見慣れた姿であったが、あまり見ない顔付をした──デデデ大王がそこに居た。
「わー」
びっくりして姿見に近付く。手でむにむにと顔を触る。伝わるリアルな感触に夢の続きではないと寝ぼけた頭を冴えさせてくる。
「ぼくがデデデ大王になっているってことは、もしかして──」
あまりの出来事に呆然と窓の外、遠すぎて目視出来ないが自分のまんまるな家がある方向を眺めていた丁度その頃。
まんまるな家が浮かび上がるほどの絶叫と共に勢いよく丸い体をした春色が転がり出て来ていた。
「なんだこれ!? なんだこれ!? なんなんだこれはあああああ!!」
ババッとしきりに顔と体を触り伝わる感触と情報に体の持ち主の顔がどんどん青ざめていく。
「オレ様、カービィになっちまってる」
言葉にして更に血の気が引いていった。
「ど、どうすんだ。どうすればもとに戻るんだ
カービィ改めデデデ大王の精神が入ってしまったカービィがあわあわと焦るも、どんどん焦る気持ちが溶け消えていった。
「その内どうにかなるだろ」
体の持ち主に精神も引っ張られるのか普段であれば、もっと慌てふためくところをデデデ大王は根拠も何もないがどうにかなるだろう思考にシフトした。
そんなに悩んでいないデデデ大王対して、デデデ大王改めカービィの精神が入ってしまっているデデデ大王は頭が冴えていくのに比例して胸の中が不安で埋め尽くされているのでした。
どうやらこちらも体の持ち主に精神が引っ張られているらしく、あまり悩み不安がったことのなかったカービィの目に薄っすら涙が浮かぶ。カービィはその気持ちを上手く受け流す術を知らなかった。
滲んだ視界の先、気付いた頃には無我夢中で自分の自宅に向かって駆けだしていた。
わけが分からない。でも、涙目で疾走する見た目はデデデ大王中身はカービィなデデデ大王を見る家来ワドルディたちの方がもっとわけが分からなかっただろう。
ワドルディたちの気遣う声を置いてけぼりにして城から猛ダッシュで駆けていくその姿は後に城中で尾びれが付きまくり変な噂となり広がるのはまた別のお話。

「お、オレ様だ」
格段にのんびりした声。すごい形相で駆け寄り、そのままの勢いで抱きしめてくる自分の姿にデデデ大王の感情は凪状態を維持していた。
「あのなぁ、オレ様の姿でそんな顔すんじゃねえって。格好もなにもなくなるだろ」
滲み出る呆れた雰囲気の中に優しさが混ざった小さな手がぎゅうっと、自分が自分を抱きしめている現状をぼんやりと頭の隅で考えながらカービィは徐々に気持ちが落ち着いていくのが分かった。
どのくらい時間が経ったか。
絶えずデデデ大王が声を掛け続けていたのも輪をかけてカービィの気持ちは大分落ち着いた。だが、未だにカービィはデデデ大王を離さないでいる。
……デデデ大王の腕、いいね」
「なんだ藪から棒に」
「だって、こうさ。ぎゅっと出来るから」
自分の小さい手では、相手の体にしがみ付くのが精いっぱい。されど、今のデデデ大王の腕ならばすっぽりと相手を収められることにカービィの目が羨ましそうに眇められる。
そのあまりにもカービィが自分で普段しないかけ離れた表情をするのに胸が小さく跳ね上がる。そんな感覚から意識を逸らすようにデデデ大王は考えるのが苦手らしい頭で考えた。考えようとしたが結局考えが纏まる前に今起きている現実に身を委ねたのだった。
しばらくして、なんやかんやでもとに戻った後カービィがデデデ大王に抱きつくことが何故か増えたという。




ディスカバ版
エフィリンは目の前の光景に半ば困惑していた。
とてもニコニコな顔なデデデ大王と、逆に落ち着いた雰囲気で佇むカービィの二人を交互に見てはただひたすらに困惑していた。
「えーっと。カービィの中にデデデ大王が入ってて、デデデ大王の中にカービィが入っているんだよね」
「おう!」
デデデ大王の声だけどイントネーションが普段のカービィがする返事と酷似する。とても違和感。とっても元気。
そんな元気に返事を返しているデデデ大王の横に一先ず立っていたアンニュイカービィが。
「もういいか」
と、視線で訴えかけたかと思えば普段デデデ大王が寝っ転がっている場所に歩いていきそのままこてんと横になった。
すごい。いつものカービィと全然違う。
内心謎の納得感で埋め尽くされていたエフィリンが、隣にいるデデデ大王をふと見た時です。
いない。先程まで隣にいたはずのデデデ大王が忽然と消えていました。
「あれ? あれれー?」
周囲を見渡せば町の一角から賑やかな声が聞こえてきた。
ものすごい幸せな顔をしながらカフェのテラス席でハンバーガーやケーキを頬張っているデデデ大王を見付けたエフィリン。
ぴゅーっと飛んでいけば、またまた元気で明るい声と共にくるまほおばりケーキを渡す相手にそのままケーキを受け取った。
「あ、ありがとう」
すわ太陽かと見紛うばかりの眩しいデデデ大王の笑顔。エフィリンにケーキを渡した後、満腹を知らない胃袋を満たすが如くもの凄い勢いで食べ続けるエフィリンは次々に食べ物を運んでくるワドルディの列を見ながらお腹壊さないでねと声を掛けるしか出来なかった。

バンダナワドルディはその時のことをこう語ります。
「プププランドの時はあれが普通でしたよ。むしろ大分加減しているほうです」

やっと人心地ついたのか丸いお腹を満足げにデデデ大王が摩り、ぺろりと口元を舌で舐めます。
食べ物の列が無くなり、また穏やかな時間が流れ始めたカフェテラス。自分もくるまほおばりケーキを食べ終わったエフィリンがデデデ大王に声を掛けます。
「でも、どうしよう。どうやったらもとに戻るのかな」
エフィリンの心配そうな声を聞いたデデデ大王がまたまた元気に返事をします。
「戻る方法は分からないけど、たぶん大丈夫? なんとかなる? カービィはすごいなあ」
それはもう色々とエフィリンの溢れかえった感情が籠ったものだった。カービィがなんとかなるというなら何とかなりそうな気がする。

ただコロシアムの上にいるメタナイトは内心もとに戻ってもらわないと困るなどと独り言ちていたという。

普段とは違う朗らかな雰囲気を纏うデデデ大王。コロシアム横で寝っ転がっているカービィのもとに近付くなり、どすんと腰を下ろした。
じとりと、これまた普段見ない目つきのカービィがデデデ大王を見やれば見られたデデデ大王がにかりと笑います。
二人の体格差を見比べたエフィリンが感嘆の声を上げます。
「デデデ大王って大きいよね」
特に他意なぞないその言葉を聞いたデデデ大王は、そろりと何処かに行こうとしたカービィを掴むなりぎゅうっと抱きしめます。
そして、デデデ大王がびっくりした顔をします。まるで確かに大きいと言わんばかりのびっくり顔。
今更かと呆れるカービィがびっくりしたまま動かないデデデ大王の頬をぺちぺちと叩きます。
そして、そのままカービィを横におろし自身の大きなお腹をぽんっと叩きました。
何を言わんとしているか分かったカービィはデデデ大王の口から言葉が出る前に今度は頬を両手でむぎゅっと潰すのでした。