鹿
2022-07-03 15:58:23
22526文字
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スペース土斎連作集

土斎WEBオンリー開催おめでとうございます。七夕番外編ということで、スペース土斎です。
不死の呪いを受けて宇宙をさすらい続けるスペーストシゾーと、彼に様々な形で出会うスペースハジメサイトーのいろいろなお話。捏造しまくりなのでセイバーウォーズの設定とは異なる点が多々あります。
ツイッターにあげたものにちょこちょこ新エピソードを足した感じです。



「仕事~? せっかくの外伝でそんなことするほどハジメちゃんは無粋じゃないって」
「そ、そうでしたか、よかった……じゃない。ええ、わたしもひとりの大人として、皆が楽しく競いあうこの場を、大事にしたいと思ってるんです。ですから、ここで私と会ったことは銀河警察の皆には内緒だよ♪ということで!」
 あのスペース・オデュッセウスがシーズンの隙間に闘争心を持て余した連中を銀河中から集め、競い合うという名物大会。さらに今回はその会場が不慮の事故で別宇宙と接続した上、その観客席に欠勤中の同僚を見つけたら、仕事でなくとも気になるに決まっている。面白そうだし。
「あ、まったく他意はないのですが、サイトーさんにこのカップ麵をプレゼントします。気にしないでください、私とあなたは銀河警察の麵トモですからね。決して口止めとかそういったことではありませんから、ええほんとに」
 根の所で人が良い同僚は、この遠く離れた別宇宙の組織、カルデアとやらで届も出さずに休暇を満喫していたことがよほど後ろ暗いようだった。しかし好物とはいえ、いい加減食べ飽きたカップ麺のことは丁重にお断りしておいた。
 自分たちのいる観客席、まさかのWギルガメスとなり誠にやかましいVIP席、まさに熱戦を繰り広げる闘技場、観客以上にワクワクしていそうな主催、と見渡して嘆息する。
「しかしさすがは宇宙連邦軍総司令閣下、いやここでは大宇宙冒険野郎さんか。銀河まで違うやつらも巻き込んで……有能すぎるハジメちゃんが、実はここに混ざってる賞金首たちをひっ捕らえてこいとか命じられてたとしても、これじゃ迂闊に手出しなんてできないって」
「え、ちょ、仕事じゃないんですよね? あまり不安にさせないでもらえませんか! 私の銀河流星剣が手近なヘラヘラセイバーの血を求めそうになるので!」
 言動に脅しが混じってきたため、お人よしさと強硬な実力行使を厭わぬ決断力を両立させる同僚をからかうのは止めにした。
 闘技場では今、キャプテン☆ニコラと瓜二つのカルデア所属サーヴァント、ニコラ・テスラが奮戦中である。こちらのユニヴァースのサーヴァントを連戦で相手取り、もはや息も絶え絶えといったところだ。あちらの宇宙のサーヴァントは自分たちの同輩の激戦を手に汗握って見守り、こちらの宇宙のサーヴァントはその健闘を讃えさらに奮い立つ。しかしあちらににもこちらにも、しばしば同じ顔が混じっているので、なかなか見ていて混乱する光景だ。
「こうも同じ顔があちこちいると妙なもんだ。宇宙は何が起こったって不思議じゃないとはよく言われるけど……そういやさっき若い感じのXXちゃん見たよ。どうなってんの?」
「ああ、二シーズンくらい前の私ですね。カルデアってたまに遭遇するといっつも人理の危機だとかなんとかで、時系列ごちゃごちゃに召喚されるとか結構あるみたいです」
「どこの宇宙もカオスだねえ、まったく」
 ため息を一つついたところで、観客席が一層大きな歓声をあげた。ニコラ・テスラはあわやというところでガッツスキルで立ち上がり、そのまま返しの宝具で見事に逆転勝利を収めたのだ。
「おお~やるねえ、むこうのサーヴァントも」
 こちらの宇宙は恒星間飛行すらままならぬと聞いていたが、なかなかどうして侮れないものだ。もっとも、その戦いに沸き立つ者たちの表情を見れば、そんなものは些細な違いでしかないことはわかる。宇宙がたどった進化の形さえ異なっても、人間の、サーヴァントの根っこのところは変わらないのかもしれない。
「もしかしたらそれが、魂ってやつかね」
 ぼそりとつぶやいてから、なんだろうな、自分らしくもないと頭を振った。幸い同僚はかつての希望に満ち溢れていた日々を思って涙にくれるのに忙しいのか、サイトーの妙に感傷的なひとり言には気が付いていないようだった。
『えー皆様、テスラ博士の熱戦の興奮も冷めやらぬ中ですが、次なる闘士の入場でーす。野郎どもー盛り上がれー』
 微妙にゆるいオデュッセウスの副官のアナウンスで、再び闘技場に視線が集まる。はてさて、今度はどんな面白い連中が飛び出してくるかのね。
 
『まずはカルデアより参戦~血で血を洗うバクマツニッポンでもっとも恐れられたとか恐れられなかったとか、とにかくやべー奴らが大会に殴り込み! え、ゴヨーアラタメ? って何? まあ何でもいいです、とにかくこいつらが新、選、組、だぁ~っ』
 羽織袴の男が二人と女が一人。全員が腰に刀を差したサムライスタイルの戦士たち。日本では少々名を知られた剣客集団、その副長と隊長ふたり……なのだが、続いて闘技場に現れた相手の姿を認めたとたん、全員の表情が強張った。
 
『続いて我らサーヴァントユニヴァースより、まさかの宇宙海賊タッグが爆誕⁉これもまた外伝ならではの楽しみですねぐっ様! 狙うは銀河の大秘宝、麗しの女海賊レディ・スカーレット! 銀河を駆ける烈風、全てを焼き尽くす男スペーストシゾー! あ、また同じ顔対決ですね』
 アナウンスがその名を呼んだ瞬間、観客よりも先に三人組の対戦相手が叫びだす。
「なんですかスペーストシゾーって! 宇宙海賊って――ー!! その姿故郷のお兄さん達や近藤さんに見せられるんですか⁉」
「うるせえ俺は知らん脛を蹴んな沖田コラ!!」
「はあ~~~……何を理由にコンビ組んだのか明白すぎる……あんたって人はこれだから……
「なんか文句あんのか斎藤ォ!!」
「文句と言いますかね、宇宙が変わってすら変わってないのかとね……
 わめく彼らを見て、一方の対戦相手は実に楽し気であった。
「何だいトシゾー、妙に楽しそうな顔じゃないか?」
「こんなもん笑うに決まってる! 別の宇宙に来てすら、この俺は相変わらず救いようのねえ阿呆で、しかも隣にはさらにどうしようもねえ馬鹿がいる! こんな愉快な話があるから、いつまで経っても俺は宙を旅してられんだ!」
「アッハッハ! そりゃあ結構! 向こうもこっちも選りすぐりの大馬鹿野郎ぞろいってわけだ! せっかくの外伝、祭りってのはこうじゃなきゃね!」
 そう言って笑う対戦相手を見て、カルデアの新選組はますます呆れた視線を副長に向ける。
「なに楽しそうにしてんです? そんなに豊満なタッグ相手が嬉しいですか」
「本当どうしようもないおっぱい星人ですね。宇宙だけに! 宇宙だけに!」
「うるせえっつってんだ手前ら! 文句があるなら向こうの俺に言え!」
『そうですよ~なんか内輪で盛り上がってないでそろそろ戦っちまってくださーい』
 
 笑いに包まれる会場の中、サイトーだけが啞然として闘技場を見つめている。そして出会う度なぜか自分を勧誘してくる賞金首が、そんなはずはないのに遠く観客席の自分に視線を送って微笑んだような気がして、なぜか頬が熱くなるのだった。