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鹿
2022-07-03 15:58:23
22526文字
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スペース土斎連作集
土斎WEBオンリー開催おめでとうございます。七夕番外編ということで、スペース土斎です。
不死の呪いを受けて宇宙をさすらい続けるスペーストシゾーと、彼に様々な形で出会うスペースハジメサイトーのいろいろなお話。捏造しまくりなのでセイバーウォーズの設定とは異なる点が多々あります。
ツイッターにあげたものにちょこちょこ新エピソードを足した感じです。
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6
『では次のニュー
………………
禁忌
……
域に
…………
新
……
流
…………
』
男はため息をひとつついてラジオの電源を落とす。元々ノイズばかり垂れ流す化石めいた代物であったが、最近は特にひどい。部品単位まで分解して埃ひとつ残らないよう磨き上げ、結局経年劣化以外はどこも問題がないことを再確認して組み直した。もっとも奇特なジャンク屋でもやってきて、奇跡的に部品を入手できたとしても、まともな情報を手に入れられるかは怪しいものである。そもそもラジオなんて旧式を通り越して絶滅危惧種だ。電波なんて下手をすれば年単位で受信にラグが起きるし、この惑星付近はエーテルが乱れていることもあってそれすらまともに届かないこともある。さっきのニュースだっていつ発信されたものであるのかも定かではない。それでもこの辺境惑星にリポップしてからこのラジオと、もう一つのガラクタを修理し続けることを男はやめることができなかった。理由は男自身にもわからない。
「さあて、お仕事お仕事」
ポンコツの携帯ラジオをコートの懐にしまい、男は住居ポッドのハッチを開け、乾いた風の吹き付けるひび割れた大地に降りる。この惑星は近くの恒星観測のためのわずかな人員しか存在していない。男──名をサイトー・ハジメという──は、その観測所の警備員であった。警備といってもこんな荒涼とした惑星にやってくる物好きな宇宙海賊がいるわけでなし、年中吹き付ける砂塵で観測所と住居区画が埋もれぬよう砂かきをするのがもっぱらの仕事であった。
「いやあ、今日も変わり映えしないねえ」
誰にともなくつぶやいて赫赫とした恒星を見上げる。アルトリウム、エリザ、ぐだぐだ、キュケオン、サクラ
……
様々な粒子と可能性が満ちたこの蒼輝銀河だが、一度の生で観測できるものがどれほどあるだろう。あの星もブラックホール化の可能性があるとかで観測対象になっているそうだが、少なくともここに転生して以来、見た目にもデータにも大した変化があった試しはない。観測をやめたところで、あの星は素知らぬ顔でこの先何千年も輝いているようにしかサイトーには思えなかった。
「なんで今日も明日もその先も、ずっとそうしていられるんだろうね。僕なんかここに生まれてせいぜい数十年で、とっくに仕事に飽きてるってのに」
星に向かって馬鹿馬鹿しい問いであることなど百も承知で、男は空を見上げる。見上げたところで何か変化があるわけでもないのだが、それでも毎日星を見ることをやめられないのはなぜだろうか。
「ああ、でも今日は少しエーテルも落ち着いてるかな。もう一回ラジオをつけてみても良いかもね」
さして期待していたわけでもないが、この惑星で他にすることなどない。砂塵が入り込まぬようコートで風除けを作ってスイッチを押す。
『では次の
………………
かねてより内戦の続いていた座標
………
の惑星
…………
ですが
………
』
幾分かマシに聞こえるようになったニュースに、息すら潜めて耳を澄ました。他に聞くものがないからというだけでなく、何か予感のようなものを感じていた。
『
……
宇宙海賊スペーストシゾーの介入によるものと
…………
』
その名を聞いた瞬間に、サイトーは走り出していた。居住区の片隅、うち捨てられたようなドックに向けて、転生して以来一度もなかったほどの必死さで駆けていく。そこには一隻の小型宇宙船があった。なぜそうするのかもわからないまま、転生以来ずっと修理と点検を欠かさなかった。どこへ行きたいのかもわからないまま、燃料を入れていつでも飛び立てるようにしていた。
さっきのニュースが何年前のものかもわからない。座標もノイズだらけで聞き取れなかった。けれど行かなくては。
星が輝き続けているのは、自分がどこにいても見つけられるようにするためだと、今この瞬間気づいたのだから。
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