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玲緒
2021-04-27 22:16:39
11393文字
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sansbyweek2021 まとめ
sansbyweek2021に投稿させていただいた小説をまとめています!
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5日目:君らしくない
暖かな日差しにつられて、少しずつ意識が浮上する。視界に広がる、店とは違う内装に驚いて、グリルビーは慌てて上体を起こした。
「ッ
……
」
突然動いたからか、目の前の景色がぐにゃりと揺らいだ。まるで頭部を思い切り殴られたかのような感覚に見舞われ、咄嗟に顔を押さえて蹲る。
久しぶりの感覚だった。おそらく、酒を覚えたばかりの頃に体験して以来だ。
いわゆる『二日酔い』と呼ばれる症状に悩まされながら、何故これほどまでに飲んでしまったのかと朧気な記憶を辿っていった。
昨夜は、店の客同士でトラブルがあった。仲裁に入ってくれたサンズと一緒に荒れた店を片付けて
……
彼に誘われて、閉店後の店で共に酒を飲んで
……
(その後、どうなったんだ
……
?)
思い出せないことに戸惑いを感じつつ、とにかく現状を把握しなければと顔を上げた。
ベッドの上に座る己の身体は、昨夜着ていたシャツとズボンを身につけたまま。ナイトテーブルに目をやれば、そこには眼鏡とカマーベストが畳んだ状態で置かれている。そっと手を伸ばして、眼鏡を手に取る。
眼鏡をかけてから周囲を見回すと、ここが自宅の寝室であることがわかった。とりあえず安全は確保されているようだとわかり、ほっと息をつく。
「
……
」
おそらく、サンズにここまで運んできてもらったのだろう。
記憶をなくすほどに飲むなんて、まったくらしくない事をしたなと思う。さぞかし、店の中も酒臭かったことだろうなという考えに行きあたって
……
急に彼のことが心配になった。
彼は、無事に帰れたのだろうか?
連絡を入れるべきか
……
と悩んでいると、不意に寝室の扉をノックする音が聞こえた。
「グリルビー、入るぞ?」
聞き慣れた声と共に、扉が開く音がする。
「お、起きたか。お前さんが食べられそうなもん用意したんだけど
……
食欲あるか?」
そう言って寝室に入ってきたのは、マグカップとホットドッグ、オリーブオイルの入った瓶に常備していた木炭チップスの入った袋が乗ったトレーを持つ、常連客の姿だった。
「
……
サンズ
……
」
帰ったのではなかったのか? と声をかけると、彼は些か困ったように肩をすくめた。
「わりぃ、帰ろうかなとは思ったんだけど
……
アンタのことが心配でさ。ソファで寝かせてもらったよ」
「そうか
……
」
ちゃんと眠れたのか? と改めて問うと、彼は「自分のベッドよりも快適だったぜ」と冗談っぽく笑ってくれた。
サンズと共に、少し遅めの朝食を摂る。
店の様子を尋ねてみたが「今は自分の身体のことだけ考えな」と突っぱねられてしまった。ちなみに、今日の営業は店主の体調不良を理由に中止にしたそうだ。
「お前さん、最近、根を詰めすぎだ」
「
……
」
マグカップに淹れたコーヒーを片手に、サンズは珍しく説教を始めた。普段はジョークを交えて周囲を笑いの渦に巻き込む彼が、真剣な面持ちで言葉を連ねる。内容は
……
どれも耳が痛いものばかりだった。
地上に出て、初めて知った『季節』や『気候』に関する言葉。ニンゲンという生き物との違いや、互いに相手種族に対して不安や恐怖を抱えていること。それでも歩み寄ろうとしてくれる者たちがいること。一人の力で全てをこなすことの難しさや、周囲を見れていない己の視野の狭さなど
……
様々なことを指摘された。
「もっとさ、頼れよ。オイラなら買い出しだって手伝ってやれるし、雨に降られたってすぐにアンタを連れて家に帰れる。客同士の喧嘩だって仲裁に入れるし、愚痴だって聞いてやれる。昨日みたいに一緒に酒飲んで憂さ晴らしだって
……
」
「
……
」
「ん
……
まあ、とにかくさ、アンタは一人で抱え込みすぎなんだよ
……
」
そう言いながら向けてくる顔は、普段の余裕のあるものとは程遠く、本当にこちらのことを心配してくれているのだということがわかるくらいに不安げだった。
すまない、と小さな声で呟いて俯く。
確かに、彼の言う通りだった。気づけば何もかも一人でこなそうと躍起になって、周りだって大変なのだからと助けを求めたい気持ちを抑え込んで、堪えて
……
空回りしていた部分も、もしかしたらあるのかもしれない。しかし
……
「おまえだって、大変だろう?」
「ん? あー、そうだな。オイラも仕事掛け持ちだしな」
「
……
」
そう。みな自分たちが生活する為に四苦八苦しているのだ。特に、サンズには養うべき弟もいる。そんな彼に助けを求めるのは
……
「けど、それとこれとは話が違うぜ?」
「
……
?」
まるで見透かされたような言葉に驚く。パチッと炎の爆ぜる音がして、それに気づいたらしいサンズがクスクスと笑った。
「ほら、オイラいつも店に顔出すだろ? そのついでに手伝うのさ」
たとえば客同士の喧嘩の仲裁とか、と言われて、それこそ普段と変わらないではないかと言い返す。
「そう、やってることはなーんも変わらない。ただ、手を貸してくれる奴がいるってわかっていれば、安心感が違うだろ?」
「
……
」
「買い出しは、オイラの手が空いてる時と、雨予報の出ている時に。もし雨に降られそうな時があれば連絡くれりゃ行くからさ」
それでどうだ? と見つめてくる彼を前に、困ったように炎を揺らす。
どうして、ただの常連客でしかない彼がここまでしようとしてくれるのか。この好意に甘えて良いのか、判断がつかない。そして、お前は客なのだからと彼の案を突っぱねる事ができない自分にも、驚いていた。
「
……
本当に、良いのか?」
自分の気持ちを確かめるように、相手に向かって言葉を発する。
「いいよ? オイラが、そうしたいんだ」
「
……
らしくない、発言だな
……
」
普段怠け骨だなんだと言われているくせに。そう指摘しながらも、内心ではとても嬉しく思っている自分に気がついて、グリルビーは小さく笑って炎を揺らした。
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