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玲緒
2021-04-27 22:16:39
11393文字
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sansbyweek2021 まとめ
sansbyweek2021に投稿させていただいた小説をまとめています!
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3日目:閉店後
夕立の騒動から数ヶ月。グリルビーは、慣れない環境の中で懸命に営業を続けていた。
店の売り上げこそ伸び悩んではいるものの、SNSやクチコミなどのおかげで少しずつ認知度も上がり、新しい顧客も増えてきた。新たなニンゲンの客は、昔からの常連であるモンスターたちとも仲が良く、このまま店も軌道に乗っていくだろうと、誰もがそう思っていた。そんな矢先の出来事だった。
「あー、なんだ
……
その、今日は災難だったな
……
」
床にまき散らかされたウィスキーをモップで拭きとりながら、サンズは少し離れた場所で黙々と掃除を続けるグリルビーに目をやった。
今夜の営業は本当に災難だった。ニンゲンの新規顧客がやってきたのだが
……
そいつが実に厄介だったのだ。簡単に言えば、絡み酒というやつで
……
結局、ニンゲンの態度に耐えかねたモンスター側との口論に発展し、酒をぶちまけられ、グラスやら食器やらを床に投げつけられて、店中大騒ぎ。サンズが仲裁に入ったおかげで誰も怪我をせずに済んだものの、店は様々な酒と食べ物がぶちまけられて悲惨な状態になってしまい、途中で営業を中断せざるをえなくなってしまったのだ。
「まあ、地上にはああいった輩は大勢いる。あまり気にすんな」
せめてもの慰めにと声をかけてはみるものの、テーブルを拭く彼の火加減はかなり弱気だ。
(こりゃ、そうとう凹んでるな
……
)
表情のわかりにくいグリルビーは、火力に感情が現れやすい。そう知ったのは、まだ地下で暮らしていた頃のことだった。
あの頃は、ほぼ毎日のように店を訪れてはカウンター席に陣取って、マスターの顔を誰よりも近くで観察していた。炎でできた身体は口元も目元も見えなくて、どうやって食事をするのか、どうやって見ているのかが気になっていたのだ。寡黙な性格らしく、喋ることもほとんどしないから、どうにか口元だけでも拝んでやろうと躍起になっていた時期もあった。まあ、結局どうなっているのかは未だわからずじまいなのだが。
「
……
なあ、グリルビー」
どうにか空気を変えたくて、再び声をかける。どうした? とでも言いたげに炎を揺らしてこちらに顔を向けたマスターに、サンズはわかりやすく、大きく口角を釣り上げて笑ってみせた。
「せっかくの機会だ。掃除が終わったら一杯飲もうぜ」
「
…………
」
「今日の営業は終わりだろ? だったら、誰も怒ったりしないさ」
そうだろ? と畳みかけるように言ってやると、マスターは頭の炎からぷすぷすと音を立てて不満げにしながらも、仕方がないと言った様子で頷いてくれた。
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