ナガレ
2020-11-21 21:46:08
12245文字
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揺れるゆりかご(ぶぜまつ) ※ソルサクパロ

ソウル・サクリファイスというゲームのストーリーの一つ「魔法使いの試験篇」を下敷きに、捏造や脚色しまくって書きたいところだけ書いたパロディ。わかりにくかったらすみません。話の都合上、殺し合って死に別れます。元ネタのゲームも死に別れてからが本編なので、ご理解ください。


「どうかひと思いに……

ひゅうひゅうと肺から息の漏れる音がする。腕の中の致命傷を負った松井は長く保たないだろう。かつて父親は、生贄は魔法使いの誇りだと言っていた。だが、このまま人として逝く方が幸せなのではないか。仲間の手によって誇りとともに目の前で死んでいった父親が豊前の脳裏を過ぎる。逡巡する豊前の指を、松井が握った。呼吸すらもままならない松井。それでも松井は最後の力を振り絞った。

「連れて行ってくれるんだろ?」

人として死ねなくてもいい。この身は消えてしまっても構わない。だから、どうか魂だけは君と共に。それが松井の願いだった。言葉を交わすことはできなくても、豊前と同じ景色が見たかった。同じものを感じたかった。

……そうだったな。どこだって連れていってやんよ」

豊前がそっと身を屈めると、二人の影が重なった。いつか今日の日を悔やむ時が来るかもしれない。それでも自分は魔法使いとして生きていく。魔物のいない、誰も悲しまない世界を作るために。顔を上げた豊前は選択した。――右手で掴み取ることを。

「っ、あ゛ぁぁぁぁ!」

肉体から魂を引き剥がされる松井の悲鳴。一度選択してしまえばそれを止める事はできない。右手は松井の魂を吸い上げようとしている。豊前の感情を置き去りにして。
魂に引きずられるかのように、肉が割れて松井の心臓が見えた。最期の時だ。断末魔が修道院中に響き渡り、血飛沫とともに松井の魂が豊前の右腕に宿った。空となった肉体は地面を赤く染めて消えた。――試験課題、達成。松井は生贄として捧げられた。

――ようこそアヴァロンへ。我々は貴公を歓迎する』

どこかで見ていた使者は豊前にそう告げると、一瞬で姿を消した。じきに豊前は名実ともに秘密結社アヴァロンの魔法使いとして認められるだろう。だが、それは同時に血塗られた道の始まりでもある。

「松井……

頬を伝う熱いものは、血か涙か。未だ動けぬ豊前を残し、回廊をつむじ風が通り過ぎていく。


松井の魂を宿した右腕がやけに熱い。――こんな感情、知りたくなかった。


End.


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