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ナガレ
2020-11-21 21:46:08
12245文字
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揺れるゆりかご(ぶぜまつ) ※ソルサクパロ
ソウル・サクリファイスというゲームのストーリーの一つ「魔法使いの試験篇」を下敷きに、捏造や脚色しまくって書きたいところだけ書いたパロディ。わかりにくかったらすみません。話の都合上、殺し合って死に別れます。元ネタのゲームも死に別れてからが本編なので、ご理解ください。
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この世界には二つの民族がいる。一つは欲を嫌悪し秩序を重んじ、天に祈りを捧げる民族・ロムルス人。一つは欲を従え、地に教えを乞う民族・セルト人。かつてはセルト人が大陸を占有していたが、新興民族であるロムルス人との間で戦争が勃発、現在は大陸全土をロムルス人の子孫が占有し、セルト人はロムルスの社会に取り込まれ、日陰者の少数派となった。
そんな少数民族の末裔に宿るのが不思議な力、魔法。供物と呼ばれる万物から力を引き出し自在に操る力
――
魔法の才覚を持つ者は成人を迎えると試験を受けるのが習わし。それは彼、豊前も例外ではなかった。
魔法使いを親に持つ彼は当然のように魔法の才覚を持っていた。幼少の頃から供物を自然に扱い、魔法使いの片鱗を見せていた豊前。一人前の魔法使いとしての活動を認められるべく試験に挑む事に対し、彼は何の疑問も抱かなかった。そして何も知らなかった。
魔法使いは「真の覚悟」を持たなければならないと。
遠くない未来にその覚悟を問われる「選択」が待っていると。
まだ、この時の豊前は知らない。
*****
魔法使いの多くはペンドラゴン率いる秘密結社、アヴァロンに所属する。「必要悪」の下に、魔物は必ず殺害するという掟により魔物を生贄とすることを信条とする組織だ。アヴァロンへの加入が認められる事は、一人前の魔法使いであるという事。魔法使いを志す者なら必ずと言っていい程に通る道である。
少し前に成人した豊前はアヴァロンの門戸を叩いて加入試験の受験を志願し、認められた。試験では二人一組のペアを組み、いくつかの課題をこなしていく。課題をこなす最中にある事を行えば、その時点で合格だ。
「豊前だ。よろしくな」
「
……
うん。よろしく」
同時期に試験を志願した、束の間の相棒。彼は松井と名乗った。中性的でどこか秘密めいた静かな横顔は、今まで豊前の周りにはいなかったタイプだ。人の顔をまじまじと見るのは失礼に当たるが、豊前は生白い松井の顔色が気になった。
「?僕の顔に何かついてる?」
「あー、悪ぃ。何でもない」
「そう。
……
あ、見えてきた。アンドロメダ像だ」
二人は大陸西部にあるアンドロメダ湖畔に来ていた。アンドロメダ湖は、美しいまま死にたいと願った女が凍らせたといわれている大きな氷の湖だ。湖の真ん中には鎖で縛られた氷漬けの女の像が経っている。最初の課題は下級魔物の殲滅。標的は人間に敵対心を持ったネズミの魔物、ゴブリンだ。
「豊前はゴブリンを見たことある?」
「食料取られねーように必死だったな」
「それ普通のネズミでしょ。適当な事言わないでよ
……
」
湖畔に足を踏み入れる前に二人で供物を確認する。供物は魔法を使うために欠かせないものだ。豊前の供物は剣を作り出すための斧の破片が二つ、素早く動けるようになる隼の羽、追尾弾を放つ事ができる雪樹の根、体力を回復する癒しの種だ。威力よりも手数で攻めるラインナップで、下級魔物相手にはオーソドックスな持ち物だろう。
「松井は何持ってきた?」
「癒しの種をいくつかと鉄風車の翼片」
「武器は投擲だけ?」
「うん。僕、攻撃はこれだから」
そう言って松井は右手をひらひらと振ってみせた。松井は魔法使いの誰もが持っている供物
――
血液を元にする魔法、血魔法を使うらしい。血魔法は諸刃の剣。豊前の顔に翳ったのに気づいた松井は、心配しなくてもいいと言った。血の扱い方は心得ているから。
「豊前、行こう」
氷原をネズミの化け物達が闊歩している。氷原に降りると、松井の纏う雰囲気ががらりと変わった。
「
――
魔物はすべて殺す」
緑青色の双眸で鋭く前を睨みつけ、そっと右手を心臓に当てる松井。供物から力を引き出す呪文の詠唱を手早く行うと、彼の右手の手のひらが黒く染まった。豊前も斧の破片から力を引き出し、剣を作り出した。
「殺した魔物は全部生贄にしていいよね?」
「え
……
あぁ、そうだな」
松井に気圧される豊前。松井からは強い殺気が溢れていた。魔法使いとして、魔物を殺して生贄にするの事は何も間違っていない。だが、この殺気は少々強すぎる。こちらまで殺さんばかりの勢いだ。
……
この試験に関して言えば、その勢いでも決して間違いではないのだが。
「さぁ、大地を赤く染めようか!」
ローブを翻して松井が駈けていき、血飛沫が舞った。雪と氷に覆われた大地が、魔物と松井の血で染まる。豊前も慌ててその後を追った。
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十分すぎるぐらいの戦果だった。さすがに無傷で終えることはできなかったが、時間を掛けずに素早く終わらせた事が評価された。松井は多くの魔物を生贄にした事もプラスされていた。
「血魔法は体力を使うから、回復魔法の供物が欠かせない。でも、使い過ぎれば供物が壊れてしまう。壊れかけた供物を甦らせるためには生贄が一番だ。それに
……
」
松井が一度言葉を切る。
「僕は血を流しているぐらいで丁度いい」
そう言って少し寂しげに笑う松井の横顔に豊前は少しどきりとした。この横顔を豊前は一生忘れる事ができなくなる。
――
この時はまだ知らなかったけれど。
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