ナガレ
2020-11-21 21:46:08
12245文字
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揺れるゆりかご(ぶぜまつ) ※ソルサクパロ

ソウル・サクリファイスというゲームのストーリーの一つ「魔法使いの試験篇」を下敷きに、捏造や脚色しまくって書きたいところだけ書いたパロディ。わかりにくかったらすみません。話の都合上、殺し合って死に別れます。元ネタのゲームも死に別れてからが本編なので、ご理解ください。


魔法使いは魂の善悪を視る事ができる。排除すべき魔物とはいえ、たった今倒したそれは善良な魔物だった。人間と共存していたが、何かのきっかけで魔物になってしまった動物だ。生贄にするか救済するか、豊前は迷った。だから気づくのが遅れた。上空から襲ってくるカラスの下級魔物、グールに。
目の前の魂に対する選択を後回しにして慌てて魔法を発動させようとしたが、この距離では間に合わない。急降下で近づいてくる鋭い爪と嘴に、豊前は最悪を覚悟した。

「!」

しかし、覚悟した衝撃は来なかった。豊前の前に松井が飛び出したのだ。グールの鋭い嘴が松井の身を抉った。抉られた肉と真っ赤な鮮血が飛び散ったが、松井は悲鳴一つあげず、襲ってきたグールに手のひらを向け、血魔法の斬撃で撃退した。

「松井!」

血魔法と傷を負った事で血を流しすぎた松井の体がぐらりと傾く。その体を抱き止めると、豊前は松井を近くの木陰に寝かせた。回復魔法で一命は取り留めているが、しばらく動けないだろう。あとは自分一人で遂行しなくてはならない。起き上がろうとする松井を制すと、豊前は安心させるようににかっと笑った。

「心配すんな。たまにはいいとこ見せねーとな」

松井の殺意の高さに隠れていた事は否めないが、豊前もそれなりに実力がある。そうでなければここまで生き残っていない。グールの群れを一掃すると豊前は松井の元に戻った。あちらこちらを負傷したが、自分の手当ては後回しだ。松井は大丈夫だろうか。

「生きてっか?」
「うん、何とか……
「そっか。もうしゃべるな。手当てする」

松井の切り裂かれたローブを脱がし、傷薬を塗って包帯を巻いていく豊前。豊前の手当てを受けながら松井は危惧していた。――豊前は魔法使いになるには優しすぎる。たとえ元が何者であろうと魔物は絶対悪。それを殺し、生贄にするのが魔法使いの役割なのだ。先の課題で豊前は魔物を生贄にできなかった。今だってそうだ。魔法使いを志すのならこの試験に合格しなければならない。千載一遇のチャンスだったというのに。
いざという時、この優しさが足枷にならねばいいのだが……。松井は唇を噛んだ。

「悪ぃ。痛かったか?」
「大丈夫。面倒を掛けてしまってすまない」
「気にすんなって」

とりあえずこれでも羽織っておけと、松井は豊前の羽織っていた上衣をばさりと被せられた。豊前の見返りを求めない優しさが嬉しくて、松井はほんの少しだけ心が痛くなった。そして、詮無きことを考えてしまった。もしもの話をしたところで、何も変わらないのだから。


*****

いつしか、眠る前にお互いの昔話をするのが日課になっていた。松井は自分の過去を語りたがらない。聞いても気分が悪くなるだけの話だからと言う。その代わりに豊前の話を聞きたがった。豊前は幼い頃からキャラバンに属していた魔法使いの父親について大陸各地を旅してきた。そんな彼の話を聞くのが楽しいらしい。

「今まで行った所で一番すごかった場所か……。そうだな、ルナ荒野はすげー綺麗だった」
「ルナ荒野?星空の綺麗な所だよね」
「そう。常に夜で星がたくさん流れてる場所。足場は悪いけど、魔物が出なかったら最高の眺めだ」
「いつか行ってみたいな……
「一緒に行くか?」

豊前のあっけらかんとした台詞に、松井が静止した。そんな松井に気づかず、豊前が話を続けていく。

「見るだけなら水都アクエリアスも綺麗だし、名前はなくても大陸中には色んな景色の場所がある。松井と一緒ならどこに行っても楽しそうだし、色んな所に連れていきた……悪ぃ」

失言に気づいた豊前が口を閉ざした。この試験で生き残る者が半数以下である事を思い出したのだ。自分達は合格者が半数を超える事は決して無い、過酷な試験の真っ只中にいると。

「いいよ。連れて行ってほしい」
……あぁ。任せとけ」

行ける日を楽しみにしていると松井は薄く笑みを浮かべた。そして明日の事を思い、潤んだ緑青色を見られたくなくて顔を伏せた。

――決して叶うことの無い約束。松井は初めて自分の選んだ道を恨んだ。




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